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仕事はリーダーが居ないと遭難しちゃうぞって話(経験談)

※ この記事は「リーダーシップの取り方!」というハウツー記事ではなく「リーダーが居ない組織はこんな風に機能を失っていくよ」というアンチパターンの紹介です。

【山登りと仕事って似てるなーの話】

先日、トムラウシ山遭難事故や八甲田雪中行軍遭難事件など、山岳遭難事故に関する動画をいくつか見ていました。
最近はこういった内容をゆっくり解説などで説明してくれるのでとても助かりますね。

僕自身はハイキングや日帰り登山程度の経験しか無いので、パーティを組んでの登山などは上記の動画での話しかわからないのですが、どちらもリーダーとなる人物がリーダーシップを発揮できない状態になってしまい、集団が機能を失っていました。
(個人が思い思いの行動をとってしまい統率が取れなくなる)

先述の通り登山の経験はまともにないのに「ああ、この状況似てるなー」と思ったことがあります。
それは昔の職場でチームをまとめるべき主任が人望を失い、個人個人が勝手に仕事を分担し始めタスク管理が不可能になった状況です。

せっかく経験したことなので、事例として紹介できればいいかなあと思います。
(どうしても主観に寄るので本来俯瞰的に捉えるべき情報の不足などもあるかも知れませんが、現場感としてはこうだったというものになります。)

【はじまり】

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当時の職場では「ジョブローテーション」を実験的に実施していました。
これはキレイな言い方ですが悪い言い方では”社長の思いつき”で急に実施していました。

そのため、当時チームをまとめていた前主任が別の部署に移り、急遽他の部署に居た人が新主任としてチームに入ってきました。
なおこの件は前主任も異動1周間前に急に告知されたようです。

前主任が居た時は、チームはそれなりにまとまっておりメンバーも前主任の提案などを前向きに聞いていた状態でした。
それは、重い作業や上からのこき下ろしを前主任がカバーしていたから、というのが一因にあると思います。
(前主任に頼り切ったチームではあったが、その分前主任の発言力が担保されている状態だった)

なお新主任は4ヶ月で退職します。

【当初はまあまあ大丈夫だった】

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前主任より一通りの仕事の説明を受けたとは言え十分な引き継ぎはできておらず、新主任はメンバーに教えてもらいつつ業務を進めていく状態となります。
時には前主任がヘルプに来たりもしますが、常につきっきりで居られるわけではありません。

とはいえ、当初はそこまで悲観的な状況ではありませんでした。
新主任は朗らかな人で明るくメンバーと接していたので、不安もありましたが「意外と上手くやっていけるかも?」という空気がありました。

しかし徐々にほつれが生じてきます。

【新主任への不満の噴出】

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新主任が来てから2ヶ月ごろ。
新主任は業務を教えてもらいながら進めていくのですが、徐々にメンバーに不満がたまってきます。

重い業務や責任の生じる業務などは前主任が率先して行っていたのですが、新主任はメンバーに分担を要求します。
これはもちろん必要な面もあったのですが、メンバーは前主任に頼り切っていた(甘えきっていた)ため不満が溜まってきます。

「なんでこんな責任の重い作業をやらせるの?」
「やりたくない作業を押し付けているんじゃない?」

といったネガティブな印象を、陰口でメンバーが(特に女性メンバーを中心に)広げていくような状態でした。
そもそもそういった状況を部署の上長は是正しようとせず、チームの空気は徐々にギスギスしていきます。

・新主任に対して前主任と比較した不満が生じ始めていた
・メンバーにネガティブスピーカーが複数人おり、不満を拡大しはじめた

【完全に人望を失う(リーダーシップの喪失)】

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不満が貯まった状況で、新主任を選任した上長はヘイトを新主任に集めるように立ち回っていました。
選任した自分の責任として扱いたくなかったように思います。

そのような状況なので、新主任に対してのメンバーの態度は非常に悪くなっていきます。
ミーティングで声を荒らげる、指示を行った際ににらむ、新主任が居ない状況で悪口を言うなど、非常に悪いムードが蔓延します。
(部屋が同じだった他のチームにこの悪いムードが伝播しないか気がかりだったのを覚えています)

また、このような歪んだ状態で働いているためか、一部のメンバーが中途で入ってきた方へ厳しい指導を行ったり不満をぶつけるようになります。

本来であればこのような状況を上長が是正するべきなのですが、前述のように責任逃れのためか上長は対応を放棄していました。

・新主任に対しての人望が失われ、メンバーが悪態をつき始める
・この時点で上長が適切に対応を行うなどしていれば改善も出来た可能性がある
・ただしメンバーの人間性にも一部問題があったように思われる

【チームの機能不全(遭難)】

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新主任が来てから3ヶ月ごろ。
非常に悪いムードの状態で、厳しく叱責を受けていた中途の方が体調不良で退職します。
また、その後すぐにその方を強く叱責していたメンバーも無断欠勤するようになり、退職します。

ただでさえ悪い雰囲気だったチームのリソースが減り、業務がまともに回せなくなります。
この時点で新主任は管理職としての業務以外にも現場業務も兼任するようになります(上長指示)。

しかし、慣れていない業務でミスを連発し、新主任は上長からも強く叱責され、ほとんどのメンバーから完全にお荷物として扱われます。
(この時点で新主任にまともな対応をしていたのは僕ともう1人のメンバーだけでした)

ここで、一部のメンバーが解消出来ていない業務を独断で分担するようになります。
平たく言えば”仲がいい人同士で助け合っている”のですが、この分担を新主任に報告もなにもしないためタスク管理が不可能となります。
(タスクの量や進行状況がわからないため、どこにどれだけの人や時間を割くべきか誰も判断出来なくなった)

退職者が相次いだことから人事部からも個人面談を各メンバーが受けるような状況でした。
(メンバーは新主任への不満を人事部にぶち撒けた模様)
当時僕はこの時点で完全に個人の努力では事態を解決できなくなっていることに気づきました。

・退職によるメンバー減で負担が増加
・独断が横行しチームとしての機能が無くなる
・この時点で早期に組織再編(チームの再構成)を行えばまだマシだったかも
・現場に居る個人での解決はほぼ不可能と思われる

【チームの崩壊(新主任退職)】

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完全にタスク管理も不可能になり、リソースも足りない状態となりました。
加えてコロナが流行り始めた時期で、さらに業務が圧迫されました。
間に合わない業務は休日出勤でなんとか進めていました。

新主任は管理職から降格され、隣接していたチームの主任がこちらのチームの管理職を一部兼任するような状況となっていました。
この頃にはメンバーから業務に関しての相談を、新主任ではなく兼任主任や僕にされるようになりました。

新主任は完全に居場所を失いました。

とある日、新主任が退職します。
直後、上長より管理職への打診を受けましたが、断りました。
こんな状況では押し付け以外の何物でもないですし、上長も信用できないためチームの運営は無理だと思いました。
(正直、「男だったら上目指さなきゃ(^^)」と上長に打診された時はゾッとしました)

結局は一部兼任してくださっていた隣接チームの主任が正式に兼任することとなりました。
これにより隣接チームの人員の一部を借りることができ、リソース不足を一時的に補うことが出来ました。

・新主任が退職
・隣接チームの主任が兼任主任となり、これにより一時的に業務が回る
・ただし、根本的にチームを再編したわけでもないので応急処置

【末路(全員退職)】

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兼任してくださった主任は元チームを別の方に預け、こちらのチームの再建に尽力してくださりました。
人望も厚くかなり実力のある方なので以前まで懸念となっていたコンプライアンス意識の是正やメンバーの業務への意識に関しても見直しを積極的に行ってくださいました。

が、ネガティブスピーカーのメンバーも含め2名が水面下で退職を決めていました。
それとは別に僕自身も退職を決めました。
(転職当初に希望していた業務と就いている業務が大きく離れてしまったため)

他部署から人員を借り、中途の方も受け入れ、なんとかチームとしての形は保っていましたが、最終的には元いたメンバーの全員が退職 or 異動となりました。
この間、僕がチームに入ってから約10ヶ月でした。

・元々のメンバーは全員が退職 or 異動
・ただし、兼任主任の手腕により業務やコンプライアンス意識の改善が行われた
・失われたチームとしての機能はかろうじて戻ったように感じられた

【その後と振り返り】

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チームに残った現場人員のうち、最も歴が長いのは中途採用で入った方(2ヶ月)となりました。
一部、取引の合った会社から常駐社員を派遣してもらったり、ベテランの方を中途採用するなどで業務は回せているようです。

ギリギリの状況の中、かろうじて事業が継続できていたのは最後に就いてくれた兼任主任の手腕によるところが大きいと思います。
上長は全く何もせずその時その時の主任に丸投げをしていたので、全く管理職・幹部社員の役目は果たしていなかったと思います。

途中からは個人の力では解決しようがない状態だったため、組織的に解決に向けて動いていればなんとかなっていた部分もあったように思います。
そのため、この件については新主任だけの責任ではなく、幹部・経営層の責任も多分にあると感じています。

チームのそもそもの下地もあまり良くなかったとは思います。
元々前主任の頃から顧客対応記録に「うざい」「話が長い」などネガティブワードの記載があるなど、意識に問題がある状態でした。
社内チャットでも一部のメンバーが悪口を平気でやりとりしていました。
(ちょっと調査されたら全部バレちゃうのによくやるなあとは思っていましたが)

こういったメンバーの意識に無頓着だったことも、幹部・経営層の責任であると思います。

余談ですが、退職時に人事部長との面談で「君は会社に染まらなくってよかったねえ」と言われました。
なかなか組織として傷んでいるなあと思います。

【リーダー・リーダーシップとは結局なんなんだ?】

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世間では「リーダーシップ研修」というのもあり、その内容は研修ごとに大きく異なっていますが
「”リーダーシップ”ってなんなの?そもそも”リーダー”ってなんのために必要なの?」
という疑問もあるかと思います。

上記の経験から言えるのは、
「リーダーは”遭難しないための先導・指示役”」
「リーダーシップは”チームをまとめる統制力(発言力)”」
なんだと思います。

チームがしんどくなった時にリーダーが倒れてしまっては、チームはそのままバラバラになり遭難してしまいます。
(チーム内に新たなリーダーが居れば大丈夫かと思いますが)

また、そもそもチームの人員がリーダーの指示を軽視・無視するようであれば、チームである意味が希薄になります。
その場合も行く末は遭難でしょう。

チームメンバーとしても、リーダーに多少の不満があるとしても
「この人が倒れると自分たちは遭難するんだな」
「この人は遭難しないように頑張って先導しているんだな」
と、リーダーへの理解を示すことが大事かと思います。

以上、あまり良い経験談ではありませんでしたが、上記のアンチパターンが”リーダーの重要性”の理解の助けになりましたら幸いです。

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