『感性で読む西洋美術』

NHK出版の「学びのきほん」シリーズ。

美術には疎い自分だが、『今を生きるための現代詩入門』などを読んだこともあり、少し表現の世界を解釈できる素地ができているかもしれない。そんなことをうっすら期待しつつ、また「感性で読む」ということも気になって読んでみた。

結果、大当たりだった。書籍の構成が抜群に良かったのだ。

書籍はまず、32ページにわたり絵画の写真が続く。それらにはナンバリングがされており、本文で順に解説がなされている。

「1番の絵画を観てください。何を感じましたか?これは…」

というように、本文の指示に従って、まずはこちらがじっくりと絵画を鑑賞してから解説を読める作りになっているのだ。

それも、一つ一つの絵を解釈するだけでなく、「②と③は構図は似ていますが、こちらは中世、こちらはルネサンス期の絵です。どういうところに違いがあるでしょう?」と比較の問いかけも重視されている。

そう、この本は良質な授業のように自分の頭を能動的に働かせながら、絵画に対して感性でふれながら読めるように書かれているのだ。

PC版kindleには本文を、スマホには該当の絵画を表示しながら読んでみた。自分ひとりで解釈したことをノートに書き、次に解説を読み、また絵画を読んで確認する。

重要なことを言い当てられていたら「自分は天才かもしれない」と調子に乗ってみたり、的外れなポイントに執着していたことが分かったら少し恥ずかしくなったり。気持ちを動かしながら、中世~現代アートまでの変遷をごくザックリと追うことができたのだった。

きっと、芸術を鑑賞するというのは「自分が感じる→作品の背景などを知る→もう一度鑑賞する」というような順番でこそ行うべきなのだろう。

感性を働かせることもできたし、知的好奇心も満たされた。贅沢な時間だった。こんなお膳立てがされているなら、また色々な鑑賞体験をしてみたいものだ。

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