ちょっと前に書いたコント台本 「来れたら来る」

スペースでもちらっと話したことがあると思うけど、普段は文字を書く系の仕事をしている。
細かく言うと身バレが怖いので、大雑把に一時創作的な文章を書いているとだけ。
そのご縁で先日とあるオムニパス形式の公演にてコント台本を書いてくれないかと言う依頼が来た。普段書く文章は真剣なものが多かったので少しだけ怖かったが、せっかくの機会と言うことで受けて見ることにした。
これ案の定難しく、かなり苦戦した
僕が好きなコントが東京03、さらば青春の光、空気階段と言った人(にん)や演技力が出るようなものだということも相まって、文章に起こしては「何が面白い? いや、こういう演技や言い立てをすればいいんだ」みたいな葛藤と共にうんうん唸っていた。
そんなこんなで丸々一週間くらいかかって書き上げたのが下記の台本「来れたら来るわ」だ。
一応著作権等の確認は取っているので、載せても大丈夫だと思う。
もしよければ感想等聞いてみたい。

今見返すとフリとボケの内容が噛み合ってないような気がするな。
あと無意識に福岡弁使っちゃってる。精進します。



・タイトル
来れたら来るわ
・登場人物
加藤
西田
三川
花田
田中
・尺
10分
・セット
具象(マイムではなく、可能な限り現物を使う)
・縦書(PDF)
https://drive.google.com/file/d/10OAdTrSyP5ZcXpi7-V76e3U0_yecLL9S/view?usp=drive_link

・本文

三人  カンパーイ

 三人、ビールを口に運ぶ

加藤  いやあ、久しぶりだね~。二年ぶり?
西田  ん~だいたいそれくらいじゃない?
三川  まあ、それぞれ別の大学進んじゃったし、合わなくなるよね。
加藤  SNSとかで近況知ってると余計になあ、わざわざ合わなくてもってなるよな
西田  そうそう、SNSとかで写真見てるから、「あんときと変わってる~」みたいなのもないしね
三川  あれ、そう言えば加藤って一瞬金髪じゃなかった?
加藤  ん? ああ、一年生の時に一か月くらいだけ
三川  あれ似合ってたよ。なんでやめたの?
加藤  色々あるんだよ。男には。
三川  なにそれ。
加藤  てかそんなこと言ったら三川だって、ギター始めたりとかしてたじゃん。一年の終わりくらい。
三川  え? ああそう言えばそっか。
加藤  そう言えば最近そう言う投稿少ないけど、もうやめたの?
三川  色々あるんだよ。男には
加藤  なんだよそれ
    西田だけだよ。ずっと高校の時のままなの
西田  いやいや、俺はあれだよ。大学デビューがダサいと思っただけ。
加藤  言い過ぎだろ。デビュー失敗した奴が目の前に二人いるんだぞ
西田  てかよかったの? 花田来てないのに。
加藤  ああ、もういいんだよ。どうせあいつ来ねえし。
西田  え、でも花田来るって言ってたよ。
加藤  違えよ。「来れたら来る」って言ってたんだよ
西田  いや、だから来るかもしれないじゃん
加藤  お前マジか。
西田  え、なに?
加藤  普通、「来れたら来る」って来ないじゃん
西田  いやいや、「来れたら来る」って言ってんだから、来れたら来るでしょ
加藤  マジかよ、お前今までこの言い回し聞いたことねえの?
西田  いや、あるよ。普通に使うでしょ。大学の友達とかもよく使ってるし。
三川  え、それ言ってた大学の友達は、来たの?
西田  来たよ
加藤  マジかよ
    大事にしろよそいつら。
    いや、でも基本的に「来れたら来る」は、来ないの
西田  え、なんで。普通に「来れない」って言えばいいじゃん
加藤  いや確かにそうなんだけど、それだとなんか角が立つじゃん
西田  ふうん、そう言うもんなんだ。え、じゃあ、「来れたら来る」ってもう絶対来ない   
    の?
加藤  いや、来るパターンもある。
西田  え、どういうこと?
加藤  基本的に来ないけど。たまに、本当に来れて来るときがある
西田  なんだよそれ、難しいな。
加藤  まあ、来れないと思ってた方が気が楽だよ
西田  (納得がいかなそうに)ふうん。まあ、わかった。
  でも、ちょっとだけ俺、花田のこと信じていい?
加藤  いや、だから来ねえって
西田  でも、俺まだ「来れたら来る」に裏切られたことないから、もうちょっと「来れたら来る」を信じたい。
加藤  そんな重いもんじゃねえよ。「来れたら来る」って
三川  加藤、西田のこと、信じてあげようよ。(真剣な目)
加藤  うっせえよ。
    いや、もういいけど。信じるなら信じるで。来ないよ? 花田
西田  でも、俺は信じるんだ
加藤  どっから来るんだよ。その自信
三川  加藤(説き伏せる様に)
加藤  うっせえよ。
西田  まあ、そう言うことだから。もう盛り上がっちゃお
    花田が来た時に、盛下がってたら、あいつも浮かばれないだろ?
加藤  あいつ死んだのかよ
    いや、もういいよ。でさ。どうよ二人は。大学は
西田  ん~、俺はまあまあかな。
三川  僕も
加藤  なんだよ。大学生なんだから、なんかこう、浮いた話とかいのかよ~
三川  そんなこと言ったら加藤だってないの。彼女とかそう言うの
加藤  ・・・色々あるんだよ。男には
西田  それもういいよ。

 花田、登場 

花田  ばばーん!!
三人  ・・・
花田  サプライズ!!
三人  ・・・
花田  おーいどうした、三人とも。花田だぞ!
    サプライズだぞ!
三人  ・・・
花田  なんだー、驚き過ぎて声も出ねえか
    もう一回言うぞばばーん——
加藤  花田
花田  おお、なんだ加藤。漸く理解が追いついてきたか?
    ばばーん!!
加藤  それやめろ!
    ・・・ちょっと、一回こっち来て座れ。

花田、空いてる位置に座る

花田  なんだよ。サプライズだぞ? もっと喜べよ。
三川  ・・・
花田  おい、三川。なんか言えよ~。二年ぶりだぞ! もっとさあ!
三川  ・・・

 三川、寄ってきた花田を押し返す

花田  なんだよ! お前ら! もっと喜べよ!!!
加藤  ・・・お前を、信じてた奴がいるんだよ
花田  は?

西田、加藤の方をまっすぐ向いてる。
西田、不機嫌そうに首を傾げる

花田  あれが信じてた奴の態度か?
加藤  お前が裏切ったんだよ!!
花田  裏切ったって・・・
三川  花田は全部、間違ったんだよ。
花田  なんだよそれ! 俺そんな悪いことした?
西田  お前にはがっかりだよ。
花田  ˝あ!?
三川  西田は、花田の「来れたら来る」を信じてたんだよ。
花田  は?
三川  西田は、花田が来るって本当に思ってたの
花田   普通「来れたら来る」っては来ないだろうがよ。
加藤  西田、「来れたら来る」に裏切られたことないんだって。
三川  花田は西田にとって、「来れたら来る」の裏切り者第一号なんだよ。
花田  なんだよ裏切り者第一号って
    おい、西田!
西田  (花田を睨んで吐き捨てる様に)裏切り者、第、一号
花田  なんだおら!!

 花田、西田に飛び掛かる
 加藤、花田を羽交い絞めにして止める

加藤  おい、やめろ!
花田  ていうか、「来れたら来る」で来てんじゃん! 俺! 裏切ってねえだろ!
西田  「来ない前提」だったんだろ?
花田  ˝あ?
西田  「来れたら来る」で来ないって言うのが、前提だったんだろ?
花田  そうだよ。
西田  じゃあ、「来れたら来る」を裏切ったのと同じだろ! この、裏切り者、第、一号
花田  なんだおら!

 花田、加藤の羽交い絞めを振りほどいて西田に飛び掛かろうとするも、また加藤に止められる

花田  ていうか、お前のせいじゃねえか。このドッキリが失敗したの
加藤  花田、花田・・・
花田  なんだよ。
加藤  そもそも〝「来れたら来る」で来る〟はドッキリにならねえんだよ!!
花田  は? なんでだよ。お前ら、加藤と三川は「来れたら来る」は来ないと思ってんだろ。
三川  思ってるよ。
花田  じゃあ、ドッキリになってんだろ。来ないと思ってたのが来るんだから、ドッキリとして成立してんだろ!
三川  字面では合ってんじゃん!!
花田  ・・・は?
三川  確かに「来れたら来る」は来ないよ? でも、字面上は来れたら、〝来る〟じゃん。
    ていうかそもそも、「来れたら来る」って、明確に来れないって言ったら角が立つから、「もしかしたら来れるかも」って可能性を匂わせることで、やんわり断るための言い回しじゃん。それでその可能性通りに実際に来られても、驚けないよ。あ、くるタイプなんだ。で終わりだよ
加藤  花田、わかったか? お前は、全部、間違ってたんだよ!
花田  何俺今怒られてんの
加藤  当たり前だろ。
花田  ええ~!
三川  謝って。
花田  なんだよ
三川  西田に、謝って
花田  なんだよ、何でおれが三川に謝らないといけないんだよ。
加藤  花田
花田  なんだよ
加藤  謝ろ?
花田  ふざけんな!
    なんだよお前ら。二年ぶりにあったって言うのに! こちとらせっかくドッキリ用意してきたのに。
三川  だからそれが成功してないんだって!
花田  じゃあ、もういいな。もう一個ドッキリ用意してきてたんだけど。それももういいな。
加藤  は? 何まだあんの?
花田  ほんとはしかるべきタイミングで言おうと思ってたけど、もう言っちゃいます
加藤  もういいよ~なんだよ~
花田  今日、ここに、彼女を連れてきました。
加藤  お前イカレてんのか!!
花田  おーい、ミカ~! もういいぞ~ 入って来てくれ~
西田  え、ちょ、まじ?
三川  それはないわ
加藤  お前ふざけんなよ~

 加藤の彼女、田中ミカが入ってくる

ミカ  どうもすみません。お邪魔しちゃって。

 花田以外の三人、田中ミカを見て絶句する。
 田中ミカも同様に、三人の顔を見て絶句する

花田  彼女の——
三人  田中(さん)?
花田  え?
田中  あ、ああ、加藤君に三川君に花田くんじゃん
花田  は、なに? 三人とも知り合いなの?
田中  ほら、あれだよ。ボランティアサークルの校外活動で。ほかの大学ともかかわったりするから
花田  ああ、そうなんだ。なんだよ、お前ら知り合いなら言っといてくれよ。
加藤  いや、俺も今初めて花田と田中さんが付き合ってるの知ったし。
三川  え、いや、あの、あれ? 花田ってさボランティアサークルだったっけ
花田  学園祭で知り合ったんだよ。おれのバンドの演奏見てくれたみたいで。そっから。なあ?
田中  ・・・うん。凄くかっこよくて
三川  そうな、んだ
西田  ま、まあとりあえず座ろっか

 全員、座る。

花田  あ、店員さーん。すみません。あ、ミカ生でいい?
田中  あ、うん
花田  生二つで。あ、はい。中ジョッキで。
    いやあ、しかし。久しぶりだなあ。SNSで近況は知ってたけど、やっぱあれだな。
    みんな変わってないな。

 間

 ビールが二人分届く

花田  ああ、ありがとうございます
    もう乾杯した?
加藤  あ、ああ。
花田  え、せっかくだしもう一回していい?
加藤  ああ、別にいいけど
花田  サンキュ。はいカンパーイ!

 花田以外の全員、テンション低く乾杯する
 花田、ビールを飲もうとしてそれに気づく

花田  なんだよー。ドッキリの件なら悪かったって。
    言われてみたら確かに、あんまりよくなかったわ。

 間

花田  あ、あと彼女連れてきたのも、あれか。
    いや、でもミカの紹介だけは直接したかったんだよ。親友のお前らに。
    この機会でもないと、次はいつになるかわかんないだろ?
    はははっ

 間

花田  ははは…

 花田の携帯が鳴る

花田  あ、ごめんちょっと。バンドメンバーから

 花田、電話をするために店から出ていく

加藤  あ、ちょっと。
 間

田中  加藤君

 三川と西田、加藤のほうを見る

田中  髪色。戻したんだね。
加藤  あ、うん。あの色のままにしておく理由もなくなっちゃったし
田中  そっか

 間

田中  三川君

 加藤と西田、三川のほうを見る

田中  ギター、まだ続けてる?
三川  いや、もう聞いてくれる人もいないし
田中  ・・・ごめんね

 間

田中  西田君

 三川と加藤、泣いている

田中  ごめんなさい。

 三川と加藤、西田のほうを見る

田中  私ヒロキ君と付き合ってるから、西田君とは付き合えない。

 西田、無言でうなずく

田中  どう伝えればいいか悩んでて、こんなに返事遅くなっちゃってごめんなさい。

 西田、べそをかきながら答える。

西田  だ、い、じょ、う、ぶ、だよ・・・

 加藤と三川、西田に抱き着く

二人  西田あああーー!!

田中  加藤君も三川くんも。そういうことだから。あきらめて。DM送ってこないで
二人  うわああああん

 花田が外から戻ってくる。

花田  ごめんごめん。今度のライブのことで——

 花田、様子がおかしいことに気付く

花田  おいおい、どうしたんだよ。

花田以外、無言
花田、加藤の肩を叩く
 加藤、その手をはねのける

加藤  うわああ!
花田  うわっ、ちょっ、なんだよ!!
加藤  俺はこれからお前のことを殴る!
花田  は? おいちょっ

 加藤、花田をビンタする

花田  なんなんだよ
三川  殴られた痛みなんて三日で消える! ただ、この胸の痛さは一生忘れられないんだ!
花田  ・・・知らねえよ!
西田  田中さんはお前にくれてやる! その代わり一度でいい! 奪っていく君を殴らせろ!!
花田  は?
西田  おらあ!!

 西田、花田をビンタする
 三人肩を抱き寄せ合って泣いている

花田  なんだよ! なんで殴られなくちゃいけないんだよ!
    ・・・あと、西田だけなんか違うぞ!

 田中、花田の肩に手を置き、黙って首を振る。

花田  は!?

 加藤、三川、西田、気を取りなおして、元の位置に座る。

西田  じゃ、改めて飲み直すか!
花田  いやいやいやいや

 田中、花田の肩に手を置き、黙って首を振る

花田  それ何だよ!
三川  まあまあ、花田も何か話したいこととかないの?

 花田、不服そうにしながらも話し始める。

花田  ・・・ああ、そう言えば。
    加藤、お前一瞬金髪だったことあるよな?
加藤  ん、まあ・・・

 花田、加藤の様子を見て三川に話しかける

花田  そういえば、三川ってさギターやってる時期あったよな。今度一緒になんかやろ うや。
三川  ああ、うん・・・

 花田、三川の様子を見て今度は西田に話しかける

花田  お前あれどうなった? 俺に恋愛相談してたじゃん。うまく行った?
西田  ・・・
花田  いやあ、お前必死だったもんな。急にメッセージが来て、「好きな人ができた! どうすればいい?」って。でな、俺が「変に自分を取り繕うな! いつもの自分でいろ!」って、アドバイスしたんだもんな。
西田  ・・・
花田  おい、どうした西田。あ、お前まさか振られちまった——
西田  うわああ!!

 西田、花田に襲い掛かる

 暗転

【終わり】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?