コント台本6 「バー」

スペースとかラジオとかで言ってたコント台本です。
今見返すと音響とかめちゃくちゃ大変そう


・タイトル
あちらのお客様からです
・尺
約15分
・人数
三人
・縦書き
https://drive.google.com/file/d/16DS1I6A7OrdLOmBZvv9RUllKhadC0hx2/view?usp=sharing


 とあるBar。
 渋めのマスターがグラスを拭いている。
 OL風の女が若干項垂れた様子で入ってくる。

マスター  ああ、○○(役者の名前)さん。
女  マスター久しぶり

 女、うなだれたままカウンターに座る

マスター  あら、何だか元気がありませんね。
男  いやあ、マスターちょっと聞いてよ。
マスター  どうしたんですか?
男  彼氏に振られちゃってさあ・・・
マスター  え、この前来た時に写真見せてくれたあの?
男  そうそう。
  「刺激が無い」なんてて言われちゃってさあ・・・
マスター  それは・・・ご愁傷様です。
男  マスター・・・、いつもの!!
マスター  かしこまりました。

 マスター、注文通りに作り男に渡す。
 女、それを勢いをつけて飲む。

女  ねえ、マスター。私ってそんなにつまんない男かなぁ
マスター  いや、そんなことないですよ。
私  じゃあなんで私は振られたんだよ~!
マスター  それは・・・
女  ほら、言い淀んでんじゃん
マスター  相手の男性に見る目が無かったんですよ。
     普通の、見る目がある男なら、そんなこと思いませんよ
女  ・・・

 女、話を聞いて項垂れる

マスター  じゃあ、こうしませんか。
     いつもこの時間にやって来る。男性がいるんです
女  何の話?
マスター  その男性もね、最近別れたと言っていたんです。
女  ・・・はあ(ちょっと興味があるみたいに)
マスター  どうでしょう。彼に声をかけて見たら。
女  いやー・・・、その人の顔も分からないし、もしタイプじゃなかったりし
   たらさ・・・
マスター  とってもきれいな方ですよ。その点は保証します。
女  芸人で言ったら誰に似てる?
マスター  えー、芸人で言うと、色々とやらかす前の東ブクロですかね
女  あんまそこ切っ掛けで変わってないと思うけどな
マスター  調べてみてくださいよ

 女、携帯で色々とやらかす前の東ブクロを調べる

女  ん~(なんとも言えないような顔)
マスター  どうですか?
女  まあ、内面が(よければ)・・・
   あ、でも声なんかかけて大丈夫なの? 常連なんでしょ?
マスター  ああ、大丈夫です。その人軽いので
女  ・・・マスター結構ハッキリ言うんだ

 男が入店してくる。
 マスターの「いらっしゃいませ」と言う声に会釈で返すと、女に気付く。
 女、男と目が合い嬉しそうにする。

マスター  カウンターへどうぞ。

 男、女から目線を切って、男の座っている席から一番と遠い体格の席に座 
 る。

女  ・・・・・・
男  マスター、いつものお願い
マスター  ああ、はい。かしこまりました。

 マスター、グラスにお酒を注ぎ男に出す。

マスター  どうぞ。
男  ありがとう

 マスター、女に目で「行け!」と合図する

女  あ、マスター
マスター  はい
女  ちょっと
マスター  どうしました
女  無理じゃない?
マスター  え?
女  めちゃくちゃ避けられたんだけど
マスター  そんなことないですよ
女  対角線に座られたんだけど
マスター  いやいや考えすぎですって。
女  ちょっと勇気出ないよ。
マスター  あー、じゃあ、男にお酒を奢ってそれを切っ掛けにとか、どうで
      すか?
女  ああ、ドラマとかでよく見るやつ?
マスター はい
女  あんま女側からやらなくない
マスター  こういうのはどっちからとかないですから
女  ・・・・・・まあ、物は試しか。マスター、お願い
マスター  かしこまりました

 マスター、お酒を注ぎバーカウンターの上を滑らせる

マスター  あちらのお客様からです。

男  ・・・・・・

 男、グラスを受け取らずスルーし、そのままカウンターの端から落ちる

女  え、え、え、え?
マスター  受け取ってもらえませんでしたね
女  いや、受け取ってもらえなかったどころか落ちて割れてたんだけど
マスター  ああ、でももしかしたら気付かなかったのかもしれないですよ
女  え、そんなことある?
マスター  もう一回試してみますか。
女  まあ、ちょっとなんか気分悪いし。もう一回
マスター  かしこまりました

 マスター、お酒を注ぎバーカウンターの上を滑らせる

マスター  あちらのお客様からです。

男  ・・・・・・

 男、グラスを受け取らず今度はあからさまにスルーし、そのままカウンタ 
 ーの端から落ち る

女  ・・・・・・
マスター  わざとですね
女  絶対わざとだ。
   え、なに? 私なんか嫌なこととかした?
マスター  いやあ、そんなことは・・・
女  だめだ、なんか腹立ってきた。マスター、もう一回いい?
マスター  ええ、あ、はい。
女  あ、その前に。言ってきてくんない?
マスター  え、なにを
女  グラススルーすんなって。
マスター  え、私がですか?
女  マスターだって店のグラスが割れるの嫌でしょ
マスター  まあ、そうですけど・・・
女  じゃあ行って
マスター  はい・・・

 マスター、男の傍に行く

マスター  あの、すみません。
      あまりグラスは割らないでいただけると・・・・・・
男  ・・・はい

 マスター、お酒を注ぎバーカウンターの上を滑らせる

マスター  あちらのお客様からです。

男  ・・・・・・

 男、グラスを受け取る
 女とマスター、喜ぶ
 男、グラスを滑らせて男のところに返す

女  えー・・・
マスター  ・・・どうします?
女  もう一回。
マスター  いや、もうさすがに無理なんじゃ・・・
女  もう、こうなりゃ意地だから。
マスター  まあ、そうおっしゃられるのであれば・・・
女  あ、マスターその前に。
マスター  あ、はい
女  言ってきてくんない?
マスター  えっと・・・、なにを?
女  グラス、返してくんなって
マスター  いやー、それは、どうでしょう?
女  なに?
マスター  なんというか、その、ダサくないですか?
女  いやもうそんなの考えてる段階じゃないから。
マスター  ・・・かしこまりました。

 マスター、女の傍に行く

マスター  あの、すみません。 
      あまりグラスを返さないでいただけると・・・・・・
男  え、なんでですか? 俺別に要らないんですけど
マスター  いや、その、お店の雰囲気とかがあんまり。
      あの、もう、返さないってだけでいいので・・・
男  ・・・はい

 マスター、お酒を注ぎバーカウンターの上を滑らせる

マスター  あちらのお客様からです。

 男、自分が今まで飲んでいたグラスを滑らせ、マスターが滑らせてきたグ 
 ラスにぶつける。 ちょうどカウンターの真ん中あたりで乾杯した時のよう
 な「ちんっ」という音が響く

女  ・・・
マスター  ・・・
女  マスター、もういっかい——
マスター  いや、もうさすが——
女  いいから
マスター  ・・・

 マスター、お酒を注ぎバーカウンターの上を滑らせる

マスター  あちらのお客様からです。

 さっきの二個が残っていたのでそこにぶつかって止まる

女  ・・・
マスター  そりゃこうなりますよ
女  ・・・
マスター  とりあえず、あの真ん中のやつ片づけますね。
女  いや、あのままでいい。
マスター  何でですか
女  負けた気がするから
マスター  なんですかそれ
      あー、じゃあもう。お酒を滑らすのは終わりでいいですね?
      私が直接持っていきますから
女  いや、まだやる。
マスター  いやでも、もう無理でしょ
女  真ん中にたまってるグラスに当てて、向こうに届かせる。
マスター  いや、そんなうまくいきませんって。
女  なんで?
マスター  なんでって、摩擦とかもありますし。
女  ・・・じゃあ、マスターが擦ってよ
マスター  は?
女  摩擦があるって言うなら、マスターが擦って、摩擦を消せばいいじゃん
マスター  いや、何で私が、そんなこと・・・
女  声かけて見たらって言ったの、マスターだから
マスター  解りました、解りましたよ、やればいいんでしょ・・・

 マスター、お酒を注ぎバーカウンターの上を滑らせる

マスター  あちらのお客様からです。

 マスターグラスが滑るであろう道を必死に擦る
 真ん中に溜まっているグラスにぶつかり、その対角にあるグラスが動く。
 しかし、そのグラスは少しだけしか動かない

女  いや、向こう側の方も擦らないと駄目でしょ
マスター  ・・・

 マスター、お酒を注ぎバーカウンターの上を滑らせる

マスター  あちらのお客様からです。

 マスターグラスが滑るであろう道を必死に擦る
 真ん中に溜まっているグラスにぶつかり、その対角にあるグラスが動く。
 そのグラスが通るであろう道を必死に擦る。
 マスターの必死な頑張りで、男の目の前に止まる。
 マスター、やってることの都合上、男の真正面に来てしまう

マスター  ・・・・・・あちらのお客様からです。

 男、今来たグラスを滑らせるそぶりをする

マスター  ちょちょちょちょちょ

 男、そのままグラスを女に向かって滑らせる
 マスター、さっきの流れでつい、カウンターを擦ってしまう
 真ん中に溜まっているグラスにぶつかり、その対角にあるグラスが動く。
 そのグラスが通るであろう道を必死に擦る。
 マスターの必死な頑張りで、女の目の前に止まる。
 マスター、やってることの都合上、女の真正面に来てしまう

マスター ・・・・・・あちらのお客様からです。
女  何してんの?
マスター  いや、もうなんか流れで。
女  真ん中で止めておけばいいでしょ。
  またこっちからやればいいんだし
マスター  いやそうしちゃうとバンバン真ん中で溜まって行っちゃうんで 
      す。
女  いいじゃんそれで、このカウンターがいっぱいになれば流石に受け取る  
   でしょ。
マスター  いや、ゲーセンのメダルゲームじゃないんで
      ああ、じゃあ、もう私が聞いてきますんで。なんで受け取らない
      のか。
     ちょっと待っててください
女  ・・・・・・はい

 マスター、男の傍に行って話しかける

マスター  あの、△△(役者の名前)さん?
男  なんですか?
マスター  あのー何で、お酒を受け取ってくれないんですか?
男  なんでって、気分じゃないからですよ。
マスター  いや、いつもなら気分とか関係なく女性からの誘いは断らないじ
     ゃないですか
     △△さんがお酒受け取らないせいで、カウンターをカーリングみ
     たいにされてるんです。

 女、グラスに勝手に酒を注いでカウンターを滑らせてる

マスター  勝手に触らないでください!
     ほら、もうこうしてるうちにもどんどんと。
男  ・・・・・・
マスター  もうね、この後あの人とどっか行ってくださいとかは言いませ
     ん。ただでお酒が 飲めると思って
男  ・・・・・・
マスター  何かあったんですか?
男  ・・・・・・実は僕、あの人、知ってるんですよ
マスター  え?
男  ・・・・・
マスター  それは、どういう?
男  僕の兄が、あの人と付き合ってたんですよ。
マスター  あー、それは・・・、はい。さっき彼女から別れたって聞きました    
     なるほど、お兄さんが振った相手だから気まずくて、いつもの感
     じで行けないって感じなんですね
男  あの女、そんなこと言ってたんですか?
マスター  え? あ、はい。
男  違いますよ。
  あの女ね、二股賭けてたんですよ。
マスター  あー・・・・・・
男  その上、何人もの人と体の関係をもって・・・・・・
マスター  いやあ、そんな無茶苦茶な人には・・・・・・

 マスター、女の方に目をやるとまた勝手に酒を注いでグラスを滑らせてい 
 る

マスター  ・・・・・・そう言う意味での無茶苦茶な人には見えませんけどね
男  マスター、そんなこと言ってあなたもあの女とそういうことしたことあ
   るんじゃないですか?
マスター  いや・・・、いや、ありますけど
     それは、あの人があなたのお兄さんと付き合う前の話なんで
     彼氏ができたらそう言うのやめる人だと
男  ああ、別にマスターを責めてるわけでもありません
マスター  はあ
男  かく言う僕も、彼女と一夜を共にしたことがありますし
マスター  は?
男  お互いのことを知らない時期に、偶然相席居酒屋で出会いましてね
  幸いあの女は酔っぱらっていて僕のことすら覚えてないようですが
マスター  いやいや、何してるんですか!
男  どうも、マスターいや、ブラザー
マスター  うるさいわ 
      いや、そういうことしちゃったんならあんたも人のこと言えない
      でしょ。
男  全然違う! あの女は僕の兄と——ああ、実兄と
マスター  やかましいわ。
男  彼氏彼女になった後に、確信犯的に、そう言うことをしていたんです。   
   こんなことしていた奴の酒なんて、ましてや仲良くなんて、無理です
   よ!!
マスター  ・・・・・・いや、まあ、おっしゃてることは分かりますが。
     こちらとしてはね、お二人の個人的なことで迷惑をこうむってる  
     わけなんですよ。

 女、話している間にもずっとグラスを滑らせている

マスター  いつまで滑らせてるんですか!!
      ああ、もうほら、真ん中にグラス溜まり過ぎて、ベンチャー企業
      に貸し切られた 時みたいになってる! 一杯目の乾杯の直前みた
      いになってる!
      ・・・・・・ああ、もうじゃあこうしましょう!?
      いったん、△△さんはあの人の誘いに乗って、どこか別のところ 
     で、文句なり説教なりしててくださいよ。ね?
男  なんで僕があの女の誘いなんかに
マスター  ここでずっとごちゃごちゃされると迷惑なんです!!
男    ・・・・・・分かりました。
マスター  じゃあ私がそう言う風に言ってきますんで。
男  ・・・・・・はい

 マスター、女の傍に行って話しかける

マスター  あ、すみません○○さん。
女  何て言ってた?
マスター  いやあ、あの実は、なんかちょっと照れ臭かったみたいで。     
      それで、あんないたずら?みたいなことをしちゃったらしいで
      す。
女  はあ
マスター  で、なんかよくよく話を聞いてみると、○○さんとこの後別の店 
      に行きたいみた いで
女  え? まじ?
マスター  まじですまじです。
女  ・・・・・・
マスター  どうします?
女  行く行く!

 女、帰り支度を始める
 マスター、その様子を見て男に目で合図を送る
 男、溜息を吐いて帰り支度を始める

女  先に、外で待ってますね?
男  ・・・・・・
マスター  返事!
男  ああ、はい

 女、返事に満足して店から出ていく

男  ・・・・・・

 男、マスターに不服そうに会釈をして出ていく
 マスター、二人が出て行ったのをみて、安心して溜息を吐く

マスター  何だったんだ

 マスター、いったん店の外を見て、二人が離れて行ったかを確認する
 遠くに行ったのを確認して、店内に戻ってくるとバーの上に溜まっている 
 グラスを見て 会計を済ませていないことに気付く

マスター  ああ会計・・・!

 マスター、慌ててもう一度店の外に見に行くも、間に合わない。
 店内に戻って来て、疲れ切ったように溜息を吐く

マスター  あーもう!

 店の電話が鳴る
 マスター、気だるそうに電話に出る

マスター  はい、BARナイトブラザーです   
      え? 今から13人数? 五分後?
      いや一人でやってるのでお酒を出すのが結構遅くなると思います
      よ? 
      いや、ベンチャーとか関係ないので

 マスター、話しながらグラスに目が行き、まさかと思って指をさして数え
 る

マスター  ・・・・・・いや、一杯目だけ、滅茶苦茶早くいけます。

【終わり】

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