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イノベーション・オブ・ライフを再読する⑦資源・プロセス・優先事項

クレイトン・クリステンセンさん「イノベーション・オブ・ライフ」を再読している。第7講「子どもたちをテセウスの船に乗せる」までを振り返る。

今回のテーマは子育てで、アウトソーシングの罠の理論と掛け合わせている。

題材になったのはインテル。ASUSがインテルのパソコン製造を少しずつアウトソーシングで引き受けていき、最終的に端末そのものを自社製造できるまでになって、いつの間にかインテルを超えるメーカーになってしまったという話だ。

教訓としては、アウトソーシングができると企業の「能力」の根幹を毀損してしまう。「能力」をかっこ書きにしたのは、クリステンセンさんが定義付ける能力が一般的な理解より一歩進んだものだからだ。

クリステンセンさんは能力を三つの要素に分解する。

その一、資源。これは分かりやすい。企業であれば資本や製造能力、人間であればお金や時間、スキルと考えれば良い。

その二、プロセス。これはやや分かりにくいが、事業を通じでなんらかの力が伸ばされる、そうしたプロセスを有しているかということ。ASUSはパソコン製造のプロセスを取り込むことで、メーカーとしての品質などが向上した。

その三、優先事項。これまた分かりにくいのだが、自分は「意思決定」と言い換えて理解した。すなわち、資源やプロセスを「どこに振り分けるか」を決める主体性。これがなければ、資源やプロセスがあっても全く使われず、つまり「能力を発揮できない」ことになる。

クリステンセンさんは、子育てにおいても資源、プロセス、優先事項が一体となってはじめて子どもの成長に寄与するのだと説く。家庭において子どもとともに時間や力を発揮し、何かを共有する体験の機会を持たなくては、子育てはどんどんすかすかになってしまう。

やや飛躍があり、理解するには力のいるパートだったが、家庭における外注が子育ての能力を低下させるというのは一定程度頷ける気がする。

何よりここでは、能力というのは単に資源ではなく、プロセスと優先事項が伴うべきだという理論を受け止めたい。お金、時間、スキルがあるだけでは足りない。そのことを知るだけでも、ずいぶん違った景色が見えそうだ。

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