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4限目:地方の大学生向けの講義(フォトリーディング、ソフトスキル向上、思考の読書、速読術)

前回の3限に続きます。桐島です♪
いよいよ「フォトリーディング」の手法を解説します。

フォトリーディングには5つのステップがあります。
Step1:準備(1分)=最初に「本を読む目的」を決める。
Step2:予習(2~3分)=目次をチェック、Step1の目的と本が合致しているのか?その本を読み進めるのか?と確認する。
Step3:フォトリーディング=本のページを一定のペースでめくる。
Step4:復習(8分)=本の中身を簡単に調査し、気になる言葉(トリガーワード)を抜き出す。そして、本に対して質問を数個作ります。ここで少し休憩を挟みます。
Step5:活性化(15分)=潜在意識に取り込まれた本の情報を、質問によって意識に引き上げる。


それでは、上記の各Stepを、ステップ・バイ・ステップで解説します。

Step1:準備(1分)

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Step1が最も重要です。流行の芥川賞受賞の本を読む場合は、世間の流行に取り残されないため、メディアで取り上げられてオススメだから、という理由で、本を読み始めると思います。

そういった、なんとなく本を読む姿勢を治すために、以下のような疑問を立てて、目的意識をハッキリすることが、Step1です。

「この本から得たいものは?」
「この本を読む必要性は?」
「この本はどう私に役立ってくれるのか?」

Step2:予習(2~3分)

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Step2はStep1の次に重要です。Step1を1分で終えたら、Step2に入りましょう。ここは2~3分としていますが、「はじめに」が長い場合は、もっと時間をかけても構いません。

Step2では「もくじ」、「帯にある言葉」、「表紙、裏にある言葉」、「著者のプロフィール」、「ページ数、字の細かさ」、「はじめに(冒頭)」をチェックしましょう。

「もくじ」では、本の構成が分かります。多くの本は最初に気合が入っていて、結論部分にも気合があるのですが、真ん中あたりで弛(たる)んでしまっています。また、「もくじ」を見ると、本がどういった展開をするのか、どういう論理構成になっているのか、分かります。
このような「もくじ」の読み方をすると、「もくじ」だけでは、ある程度本の中身の予想がつくようになって、「あっ、こういう内容で、こういう論理展開するのだろうな~!?」と思って、それを確認するだけでもワクワク、愉しくなります。

「帯にある言葉」、「表紙、裏にある言葉」では、本の魅力が凝縮されているので、これを読んで「読みたい!」、「ワクワクする!」という自分の気持ちを確かめます。自分に素直になって判定して下さい。

「著者のプロフィール」では、著者がどういったバックグラウンドがあって、何の専門家なのか、他に本を出しているのか、どういう問題意識で本を書いているのか、と言ったことが分かります。本は、著者の主張を把握する能動的で愉しい行為なので、相手のことを知ります。

「ページ数、字の細かさ」では、どのぐらい内容が凝縮しているのか、確認します。読書経験があまりない方であれば、最初からページ数が長く、細かい字の本を読むと挫折してしまうので、いまの自分にあった分量の本を選びましょう。

「はじめに(冒頭)」では、数ページで著者が、この本で何を伝えたいか、何を問題だと思っているのか、を一番熱量のこもった言葉で伝えてくれます。この箇所が長いと、数分時間がかかってしまいますが、この箇所は、何百ページの本を読んで欲しい際に、著者が読者を惹き付けるために、気合を入れて何時間、何十時間もかけて書いているので、さらっと読んで下さい。

Step2の時点で、ワクワクしなければ、その本は、いまのあなたには合いません。

速読術(フォトリーディング)では、どの本を読むのか、どの本を読まないのか、見極めることも重要です。ワクワク、心がときめく本は、世の中に山ほどあるので、目の前の本がワクワクしなければ、無理して読む必要はありません。本棚に返して下さい!

Step1とStep2のまとめ
以上、Step1とStep2は、速読術にもフォトリーディングにも共通するプロセスです。一番、重要なプロセスです。

私のオススメは、本屋さんで立ち読みしながら、このStep1とStep2を高速でおこなうことです。良い本があれば、身銭を切って購入するという前提ですので、集中力が高まります。なによりも、立ちながらなので、あまり長いこと立っていると疲れてしまうため、否が応でも高速になります。

補足:「積極的読書」

補足になりますが、
Step1、Step2は、前回紹介した「本を読む本」という、速読術のバイブルでは、「積極的読書」として紹介されています。

「積極的読書」では、Step1とStep2でこれらの質問とその回答を見極めることになります。当然、全ての質問に答えられる必要はないですが、意識することが必要です。
少し長くなりますが、バイブルですので、引用します。

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1.全体として何に関する本か。
読者はその本の主要テーマを発見し、それを読者がどのようにしてさらに小さい基礎的なテーマやトピックに細分し、順序よく発展させているかを見なくてはならない。

2.何がどのように詳しく述べられているか。
著者が伝えようとしている思考、主張、議論の要点を、読者は発見しようと努めなくてはならない。

3.その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か。
はじめの2つの質問に答えてからでないと、読者はこの質問に答えられない。何を言っているのかがまずわからなくては、それが真実かどうか決めることはできない。ある本を理解したときに、著者の精神を知るだけでなく、その本が果たして真実かどうかを判断するのは、まじめな読者の義務である。

4.それにはどんな意義があるのか。
その本が情報を与えてくれたら、その意義を問わなくてはならない。著者はなぜ、そういうことを知ることが大切だと思うのか。それを知ることは、読者にとって重要か、そしてまた、その本が情報を与えるだけでなく、読者を啓発してくれたのなら、その先でどんな示唆がされているかを問いかけて、さらに啓発されるよう努める必要がある。(「本を読む本」P53~55)


それでは、本日のStep1とStep2を実演してみたいと思います。

Step1、2の実演

Step1:準備(1分)=最初に「本を読む目的」を決める。
Step2:予習(2~3分)=目次をチェック、Step1の目的と本が合致しているのか?その本を読み進めるのか?と確認する。

今回、書店で手に取った本は、2020年に発売されたばかりの、『人新世の「資本論」』です。ひとしんせいの「資本論」を読みます。

Step1:準備(1分)
私は、いままでの経済活動・グローバリゼーションが行き過ぎた結果として、ウイルスが蔓延しているのではないか? 

ウイルス蔓延はグローバリゼーションの結果であって、これまでの延長線で経済活動・グローバリゼーションを続けると、例え人類がウイルスをワクチン接種で克服しても、また同じような危機が発生するのではないか?

現に、永久凍土が解けることで、過去の人類が克服したモリウイルスという狂暴なウイルスが近いうちに猛威を振るうことが予想されています。

Step2:予習(2~3分)
以上の問題意識を持って、この本を手に取ると、まず表紙に「気候変動、コロナ禍、文明崩壊の危機。唯一の解決策は潤沢な脱経済成長だ」とあります

しかも、坂本龍一、白井聡、松岡正剛、水野和夫という名だたる識者が絶賛!しています。これは、興味を搔き立てられます!

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次に、裏表紙を見ると、識者のコメントが掲載されています。出版前にこんなに多くのコメントを集めることが出来る本は、珍しいです。
音楽家の坂本龍一さんの「気候危機をとめ、生活を豊かにし、余暇を増やし、格差もなくなる、そんな社会が可能だとしたら」というコメントにますます興味をそそられます。

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表紙の折り返し部分を見てみると、気候変動を解決するのは資本主義を捨てる必要があり、そうすると文明が繁栄出来なくなる。こういったジレンマの中で、危機の解決策が晩年のマルクスの思想の中に眠っていた。それを掘り起こす内容が書かれています。著者は、マルクス研究家であることが分かります。いったい、この俊英はどういう経歴の持ち主なのでしょうか?

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そこで、裏表紙をめくって、経歴を見てみると、斎藤幸平さんは、1987年生まれ。なんと、若き俊英ですね。そして、いま現在は、大阪の大学で准教授をしている。なんと、博士号をドイツのベルリンで取得されていて、専門は経済思想、社会思想とのこと。ふむふむ(*´ω`)
更には、既に書著があり、なんとその著書は、5ケ国で出版されているということで、期待が持てます♪

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それでは、最初にはじめに、とあるので、はじめにの箇所を眺めていきたいと思います。一字一句真剣に読むというよりは、眺める形の方が良いです。

なんと、SDGsは「大衆のアヘン」である!、という文字が飛び込んできました、、、シェ~~~。あのSDGsって「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」のSDGsです。17の目標があって、最近、スーツの襟にカラフルなバッジを着ける経営者が増えている、SDGsがなんと「大衆のアヘン」だと。

気になりますね、、、

そして、SDGsに取組んでいるから、温暖化対策をもう十分しているよ!と勘違いしてしまうことで、大胆なアクションを起こさなくなってしまい、満足してしまうという事が記載されています。まあ、確かに、SDGsって分かりにくいし、どんな企業の行動も、SDGsに結びつきますからね、、、(笑)

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そして、本書のタイトルにある「人新世(ひとしんせい)」の意味の記載があります。「人類の経済活動が地球に与えた影響があまりに大きいため、ノーベル化学賞受賞者のパウル・クルッツェンは、地質学的に見て、地球は新たな年代に突入したと言い、それを「人新世」と名付けた」との記載があります。これで、タイトルの意味が分かりました。

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最後に、目次を見てみます。Wow、非常に細かいですね。第1章が9つの箇所に分かれていて、非常に精緻に記載がされていることが分かります。中身が濃密で、筆者が伝えたいことが沢山あり、論理構成もしっかりしていて、頭を使いそうな本であることが分かります。

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また、第4章に「人新世」のマルクスとあり、この本のタイトルと同じですので、筆者のメインメッセージがここに書かれていると、予測できます。

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最後は、第8章まであって、その後に「おわりに」もあります。
私は、「はじめに」の次に、「おわりに」を読んでしまう癖があります。

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以上が、Step1とStep2になります。
ここまで合計で、5分もあれば出来ます。

速読術でも、フォトリーディングでも、このStep1とStep2が一番重要なプロセスになります。

日本では、大学に授業でさえも、このような基本的な技法でさえも学びませんが、これは、大学生には絶対に必要なスキルですので、論文を書く時、授業の関連する書籍を選ぶ時、趣味で読書をする時にでも、幅広く使えますので、実践してみて下さい。

それでは、Step3,4,5は次回5限目で解説したいと思います。

See you soon.


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