忘れない

不意に現れた見知らぬその子の名前は知っていた。
見知らない、のは、眼前の今の容貌なだけで、その子自体は知っている。名前を知っているくらいだから。
たった3年、幼稚園児で言えば年少が年長になる、それだけの月日で見知らぬ姿になる、そんな時代がその子の今だった。
だから私はその子を今の今まで忘れていた、ことになる。
忘れないでいるということは、どういうことなのだろう?
あのときの姿を留めておくことが、忘れないということなのだろうか。
これから3年、今の姿は留めておけそうな気がしている。
それは忘れないでいることになるだろうか。

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