10月14日のアノミー

2020/10/14
アノミー(英: 仏: anomie)は、社会の規範が弛緩・崩壊することなどによる、無規範状態や無規則状態を示す言葉。 フランスの社会学者エミール・デュルケームが社会学的概念として最初に用いたことで知られる。

本当の愛など説くことはできない、と彼は考えていた。

馬鹿馬鹿しいものだと言いたいわけではなく、何ならその反対で、彼は愛というものをとても丁重に扱っていたように思う。
ラヴソング蔓延る世の中と、それを愛こそ全てと皮肉めいたように歌う彼。どちらが愛信仰を持っているかという問いに果たして君は答えられるだろうか。

愛は説くことができるほど難解なものではなく、手に取った瞬間に判別できるようなものであると彼は考えていたように思う。

人を愛しなさい、あなたが愛されるために?

だからこそ、それを説く神も、その歴史も道徳も、彼はガラクタに過ぎないと切り捨てた。

それらが切り捨てられた彼の世界=無規範状態=アノミーでは、人を愛する理由など最早存在せず、あるのはただ動く血と肉の塊である。

説くことができる愛など存在しなかったはずなのに、説くことができない世界に愛は存在し得ない。
普遍的で単純だったはずの愛は、自らの手によって複雑なものになってしまったのだった。

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