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20世紀録音芸術への愛--富田恵一『ナイトフライーー録音芸術の作法と鑑賞法』2014年

 珠玉の音楽本。録音芸術への愛があふれている。以下「はじめに」から引用。

 ドナルド・フェイゲンのアルバム《The Nightfly》は、“録音された音楽“である。

 “録音芸術”は――なんとも堅い表現と捉えられるかもしれないがーー第一には“耳で繰り返し鑑賞できる音楽作品”という意味である。

 録音は単なる記録から作品を制作する工程に変化した。これが録音芸術という概念を端的に表している。
 この録音芸術の成り立ち、鑑賞法を知るのに《The Nightfly》以上に適切な題材はない。
 
 音楽から何が聴こえてくるかを知るためには、とにかくひとつの作品を何度も聴くことだ。‥‥‥‥最初は聞こえてこなかった音が聴こえるようになり、隠れていたパターン、関係性を認識できるようになれば、そこに興奮してまた何度も聴く。そのうちに音楽からさまざまなことが見えてくる。
 
 本書は《The Nightfly》を素材に、20世紀の録音芸術がどのような技術と工夫のもとに作られたかを、誰にでもわかるように解説した。その豊かさを鑑賞するヒントになれば、これほど嬉しいことはない。

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