運転資金から見る「個人」と「法人」の違い

昨日の続きを。

日経平均は2万円を超え、今日で16連騰。記号業績拡大に期待感がある。一応、今の日本の経済は「調子がいい」と見られている。

「調子がいい」は「利益が出ている」と略同義だ。また個人に置き換えてみる。「利益」は「給料」とする。給与が上がったのだから、何か贅沢をしても良いと普通は思う。六本木に住むことは出来なくても、今日の晩御飯くらいは松阪牛を食べても良いのでは。個人の感覚では正しい。しかし、法人の感覚では一概に正しいとは言えない。

理由は2つある。ひとつは、法人には基本的に「仕入」が発生するから。もうひとつは、掛取引があるからだ。

まず仕入について。椅子を作る製造業の場合。まず原料の木を仕入れないといけない。仕入れた木を加工し、1ヶ月かけて椅子にして、販売する。やっとここで売上が発生する。つまり、個人の場合は給料のように「収入」からスタートするが、法人は仕入れるために「支出」からスタートする。この概念を頭の片隅に置いたまま次に進んでほしい。

次に掛取引について。掛取引とはZOZOTOWNの「ツケ払い」のことだ。「1ヶ月後に払いますね」というのが掛取引。法人の取引ではこれが頻繁に行われる。むしろ即決済の方が圧倒的に少ない。つまり、材料を仕入れて椅子を作り、販売したのにも関わらず「代金は1ヶ月後ね」と言われるのが法人取引だ。代金は入っていないが、引き続き椅子を作り続けないといけない。また仕入が発生する。

頭のいい読者はピンと来たと思うが、法人は椅子が売れれば売れるほど、仕入による資金負担が重くなる。物が売れなければ材料を仕入れる必要性がないから、資金負担は軽い。既に作ってあった椅子を売るだけでいい。

銀行員は、1ヶ月後に代金1万円が入るとわかっているから、1万円を融資する。これが運転資金。運転資金のお陰で、代金が入るのが1ヶ月後でも2ヶ月後でも仕入を止めること無く椅子を作り続けることが出来る。

結論。業績が良ければ良いほど法人は資金の余裕がない。松阪牛をカゴに入れてる場合じゃないのだ。ここに個人と法人とのズレがある。

バブル崩壊後、日本経済は大打撃を受けた。しかし、倒産件数は少なかった。なぜなら運転資金が発生しないので資金繰りはプラスになるからだ。逆に、経済が上向きかけた時に倒産は多くなった。運転資金が発生して資金繰りでマイナスになることが多くなるからだ。いわゆる黒字倒産。この辺のファイナンスリテラシーをつけておくと、今の日本が違う姿に映る。

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