見出し画像

Ironman Malaysia too much detailed report Vol.5 詳しすぎるアイアンマンマレーシアレポートその5

バイクスタート

ややこしいけど、これをだいたい二周する

今回のバイクパートで事前に気になっていたのは、初のIronmanレースということで、ドラフティングの適用を厳格になされるのではないか、ということだった。ルールはもちろん分かっているし、そもそも違反するつもりはないが、日本の大会だとどうしても選手が密集してドラフティングやブロッキングをとられても仕方がないようなことがよくあるからだ。

スタート時点ではそこそこ周囲に選手がいて、乗車位置の直後でもたついてる選手と交錯しそうになったが落ち着いてクリア。その後モンキーゾーンへ左折するまでの数キロ、若干のアップダウン区間は前後にやや選手がいてちょいちょい抜いて行く感じだが、密集には程遠い。

体調とこないだの佐渡のNPを鑑みて180Wを目処に踏んでいく。しかしそれでもキツい感じがする。佐渡の前半はもっとガシガシ行ってたことを思うと、やっぱり横浜マラソンの10キロTTがだいぶ効いているようだ…バカなことをした…でも脚は戻ってこないから今を頑張るだけだ。

この辺りから小雨が降り出した。まあ身体を冷やせるからいいか、と言う程度の降り方だし、どうせスコールだからすぐ止むだろう。と、その時は思っていた。モンキーゾーンへ向けて左折する。マクリ島のカッパ坂へ曲がる所が脳裏によぎる。もちろん似ても似つかないのだが。

老眼に厳しいコースポイント表

下見を少ししたとは言え、初めてのコースはどこにどんな道が待ち受けているのかわからない。佐渡の時はBotmanリーダーが用意してくれたコースポイント表をエアロボトルに貼って参照しながら進むことで大いに助けられた。今回もそれに倣って全てのコーナーとエイドを網羅したポイント表を作って来たのだが、いささか情報過多になってしまった。

モンキーゾーン

このあたりから雨足が少し強くなって来た。おいおい、止むどころかこれじゃ濡れっぱなしか?と思いながらも、まだこの頃は余裕があった。反対車線のB1エイドを右手に見て通り過ぎ、少しアップダウンをこなした辺りでBucciとすれ違った。「Tai!!」「オーッ」向こうが下りで瞬時に行ってしまったが、この位置ということはやはりスイムで相当離されていたようだ。

雨は酷くなるばかりで、時折本降りになってきた。お猿さんたちはどこかに篭ってしまったらしくまったく見当たらない。登りでなるべく踏み、下りで少し休み気味に行くというZwift個人TTの極意を実践しながら走る。このあたりになるともう前後はだいたい離れてしまっていて、ドラフティングを取られる心配はまずない、という感じになってきた。

たぶんこの辺りの写真だと思う。すでに表情が厳しい

13.5km地点でおり返し。若干誤差はあるが、コース表はそこそこ機能していた。しばらく戻って最初のエイドだが、こんな雨だとほとんど水を消費してないから完全スルーである。ボランティアの皆さんも「ほら水!コーラ!誰もとってくれないの?」という感じである。・・・また後半によろしく。

元来た道に戻り左折。しばらく先のラウンドアバウトまではだいたい平坦な田舎道が続き、道なりに走っていくだけ。たしかこの辺りでは一旦雨はマシになっていた気がする。時折両側の民家の間に露店かレストランか?があってエスニックな食い物の匂いが漂ってくるという、なかなか面白い状況。

ラウンドアバウト

35キロ地点、日本ではまだあまり見かけないラウンドアバウトをぐるっと半周して直進方向へ。以前のコースではここを左に少し行って折り返すようになっていたが、どこかで距離の埋め合わせをしてここは単純化したようだ。ほどなく第二エイドが見えて来た。

いままでもらったボトルの中で一番品質がいいかも。

大会ではそれぞれ特徴のあるデザインのボトルで補給をしてくれるので、毎回お土産(というか思い出)のために持ち帰ることにしている。第二エイドでもまだエアロボトルの水は減ってなかったが、せっかくだから水だけもらっておくことにした。「Thank you!!」「Your welcome! GoGoGo!!」サドル後ろのケージにセットしておく。

そのあたりが大体ランカウイ島の中央北端のあたりで、そこから14キロほどかけて東側をぐるっと回って南へ行く。雨は降り続いていたが、まだそれほど厳しくはなかった。ただ、一向に降り止まないのでやっぱり「聞いてたのと違う!」と思い続けていた。

激坂

約50キロ地点で右にマージする感じの地点(こういうのは大会要項から引っ張っている)。交通規制で車線の右側が区切られていて選手はそこを走るようになっていた。やや大きな住宅やマンションらしき建物が沢山立っている住宅街だ。そこを少し走ってから右折してすぐ、二段階の登りが待ち受けている。

コース図でも尖った針が二本そびえ立つような箇所だ。7〜10%程度あり、なかなか脚にくる。それでもまだ一周目はガシガシ踏んで、この区間だけでも何人か抜き去ることができた。二箇所の登りを過ぎてしばらく行ったところで第三エイド。ここもやっぱりスルーして数人かわす。

この辺りだったか、ガタイの良い欧米人の選手(確か同じエイジ)と抜きつ抜かれつになった。彼は明らかにパワー系で平地や緩斜面をガシガシ踏んで飛ばして行く。あっチクショー、見てろよ登りで血祭りに上げてやるぜ!実際その後の登りでブチ抜いてやったが、しばらくするとまた平地で抜き返される。ぐぬぬ…だいぶやり合ったけど最後の激坂でどうにか引き離せたようだ。

この一周目最後の坂はなかなか強烈だった。10%は軽く超えていたと思う。この辺りでは70.3の選手も混じっていたが、諦めて押していたり、蛇行している人も多い。自分も脚がフレッシュなら平気だと思うが、もうだいぶ削られているので正直キツかった。

島中央あたりを北上して先程直進したラウンドアバウトに戻って、今度は左折する。と言うのはあとで思い出すそうだっただけで、その時はコース案内にそって夢中で走っており、さっき通ったところだとはわかってなかった。そしてスタート地点近くまで来た道を戻って行くうちにようやく「これさっき来たとこやな」となってきた。

このあたりの区間で90キロ通過。2時間57分ぐらいとまだアベレージ30km/hはキープしていた。

二周目

スタート地点付近の折返しでちょうど100キロ。佐渡の時はまだまだ全然元気で踏みまくっていたのに、今回はそれよりだいぶ平均出力も低かったのに、既に脚に来ている。マズい、マズい・・・でもこれから二周目だからさっきに比べると勝手知ったることになり少し気分的には楽だ。

雨は全く止むことはなく、だんだん強くなる一方。最初のうちは「まあ晴れててもどうせ汗だくと被り水でドボドボだから」とか思ってたが、そう言うレベルではなく「Soaking wet!!」。もう笑うしかなかった。

一周目より明らかにヘタれた状態でモンキーゾーンの往復をクリアしたが、先行しているはずのBucciとはまったくすれ違うことはなかった。どうやらバイクでもかなり離されているようだ。自分のこのヘタレぶりからして当然だ。山Mさんや岩Tさんとはタイム的にすれ違っていたはずだが、雨がひどくて視界もわるく、お互いよくわからなかった。

豪雨

二周目のラウンドアバウトを過ぎて島の東側を南下しはじめたころだったか、雨は容赦なくたたきつけるような豪雨になった。ある参加者のレポートで「明日がもう無いかのように」と形容されるほど降っていて、道路もそこらじゅう冠水するところが出て来た。もう既に全身ズブズブだからもうどうにでもなーれという気分。

イジメか?!

まだ「冠水」と言ううちはよかったが、それどころではなく「洪水」「濁流」というレベルのところまで出て来た。おかしい・・・自分が出場しているのはアイアンマンであって、エクステラでは無いのだが・・・

自分もこれまでだいぶエクストリームな状況で走った経験はあった(大雨のなかを山中湖から246経由で帰宅とか、大雪の東京シクロクロスとか)が、ここまでひどいのは初めて。これはこれで語り草になりそうで面白いけど、渦中にあるとたまったもんじゃない。

一番ひどいところでは、ホイールの3分の1が沈んでドライブトレインが完全に水没するような水深のところを突っ切るハメになった。これにはさすがにビビってめっちゃ減速したり、果ては降車して担いで歩いてる人もいたが、自分はもうネジが外れていたのでそのままブワーッと突撃。案外どうにかなるものだ。その辺りでも何人も交わしたと思う。

どなたかが上げていた動画から切り抜き借用

2回目の東南端、約150キロの右折地点あたりになると雨は若干マシにはなっていたが、依然としてしとしとと降り続いていた。2回目の激坂区間に入る。この頃になるともう疲労はピーク、残り30キロとは言え豪雨と洪水で精神的にもだいぶやられていて本当に厳しい。

登り区間ではもう一周目のような出力はとても出せず、ほうほうのテイで上がっていくが、周りの選手たちも同様と見えて、追い縋って来た人も抜いていったものの離れていくでもなく、パックになって進む(さすがにこんなところで審判が来てなにか言う雰囲気でもない)。

コースポイント表をなんとかコンパクトにするためややこしい記載の仕方をしたこともあって、一周回目に悶絶した最後の坂が、二周回目の最後の分かれ道の前だったか後だったかわからなくなり、これはもう一度悶絶することも覚悟しておかねば・・・と思っていた。

コース表では右折になっているがコース上の表記はUターンになってるところに来たとき、コーナーに立っていた雨ガッパの3人組から突然声援が飛んできた。「頑張って〜!!」あっ嫁さんと岩Tさん奥さん、そして美保さんだ。こんな大雨だし、バイクコース上を応援にくるのは難しいから、てっきりランコースもしくはゴール地点で待ってると思い込んでたので「アーッ」としか言えなかったが、嬉しかった。わざわざカッパ着込んでこんなところまで来てくれたとは・・・その後の区間で少し元気が回復した。

バイクゴールへ

そこを過ぎて約172キロ地点で一周目は直進だが二周目は左折してゴール方面へ向かう。この辺りもポイント表を確認していた通りだった。いよいよ残りわずか。しかしこのあとフルを走らなければならない。五島の時は「ああもう終わってしまうのか〜」などと思ったこともあったが、今回ばかりは体調と豪雨のせいもあり、疲れ切っている。

左へ右へとややこしくコースを辿り、突然田園地帯みないなところに出た。偶然前後すこし離れて選手がいたからいいものの、一人だったら「ほんまにここ、コースか?」と迷ってしまいそうなところだ。このころになると雨もまだ降ってはいたものの、ようやく小降りに変わっていた。

もうしばらくコーナーを過ぎ、178キロ地点の最後のUターン。手前から見覚えのある陸橋が見えて来た。T2からT1に向かうときに通った橋だ。「あそこか!!」ようやく戻って来た。もうバイクゴールがすぐそこにあることがわかった。

陸橋をこなしてT2はもうすぐ

T2へどんなふうにたどりついたのかよく覚えていないが、ディスマウントでしっかり降りて腕のガーミンはラップを押してT2モードにし、バイクのエッジ530はきちんとストップさせる冷静さはあった。バイクラップは正式記録で6時間12分54秒と、佐渡よりずいぶんアベレージを落とし平均30km/hをキープできなかった。無念・・・

T2

五島でもそうだが、アイアンマンではバイクキャッチャーがいてT2の時にはバイクを自分でラックにかける必要はない。「OK, I'll take care of your bike! GoGo!!」と元気よく送り出してくれた。ありがたい!近くにいた選手は先にシューズを脱いで裸足で走っていたが、ロングでそこまでするか、と思う。自分のシューズはスピードプレイのクリートにKeep on Koverzをつけてるのでまぁまぁどうにかなる。

T2ギアバッグを取りに行く。やはり自分の周囲のバッグはまだほとんど残っていたのでちょっと勇気が出て来た。チェンジルームへ行って座ると、ちょうど後ろで岩Tさんが着替えを終わったところだった。「おお、お疲れッス!」「じゃ、またランで!」スイムの遅れを取り返すのにバイクいっぱい掛かったということだ。

ジェルをキュッと吸ってソックスを履き替える。T2では要らないかな、と思ったが念のため入れておいたタオルが役立った。キャップ被ってランシュー履いてゼッケンベルトまではつけたが、ボトルポーチを見て「さすがに今日はいらんやろ」と思ってつけないことにした。しかしこれはちょっとした判断ミスだった。実はボトルポーチのぽけっとに最後の気付け用のカフェイン錠と痛み止めを入れていたのだ。

ギアバッグを預けるところが見当たらず一瞬迷ったが、すぐ係のボランティアが「こっちこっち」と呼んでくれてことなきを得た。そしてトイレタイム。チェンジルームすぐ横の仮設トイレが5台くらいあったか、幸い空いてるのがあって即イン。朝からずーっと溜めていたのでだいぶ時間掛かったがこれでゴールまで大丈夫。

そんなこともあってT2は6分35秒と、やや時間が掛かっている。いよいよ残すはランのみ。雨はまだしとしとと降り続けていた。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?