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Ironman Malaysia too much detailed report Vol.4 詳しすぎるアイアンマンマレーシアレポートその4

レース当日・朝

3時。目覚ましを掛けてはいたが、遠足の日の朝の小学生よろしくバチーンと目覚めた。いよいよこの日が来てしまった。もう逃げられない(逃げるつもりもないが)。まずは部屋のポットでお湯を沸かしてコーヒーを淹れて飲み、買い置きしてあったフルーツジュースも飲んで、補給他当日の準備を整える。4時半の朝食配布までに万事終わらせないといけない。

まずはトライスーツに着替え、股間にはシャモアクリームをたっぷり塗って後ろポケットにバイク用の塩タブレットを大量に詰め込んでおく。次にナンバータトゥーの貼り付け。もうどこのレースでもお馴染みになってきたやつだ。昔はマジックで書いてもらうのがトライアスリートの一種の勲章のようなものだったが、このロゴ入りのタトゥーもまた良いものだ。

ナンバーは「上腕」につけろとあったが、JETTのトライスーツもそうだけど袖ありだと上腕ではダメなんだよね

そして世界戦でもそうだったが、ふくらはぎに年齢区分を示すアルファベットを貼り付ける。同じエイジクラスがすぐわかるから、これをレース中に確認して「あっこいつに先行を許すわけにはいかん」とかやるわけだ(そんな余裕ないと思うけど)。

たぶん女子の若いのからA、B、C、、、と来てM55がQということか

乾いた腕にしっかり貼り付けたあと、濡れタオルで十分に湿らせると転写することができる。要はプラモデルのデカールと一緒だ。ちゃんと貼れるとこれがなかなか落ちない。というかあえて落とさずにしばらく余韻に浸るのだが。

補給戦略

次に補給用品の準備。まずは数年前から実践しているジェルの大量ボトルブチ込み作戦。いつものピットインジェル(170kcal)を8本、計1,360kcalをポディウムでかボトルに入れて少し水で薄める。これでも結構ちゃんと飲めるし、今のところ最も効率が良い。

固形物も少し欲しくなるのでエネもち(くるみ味・145kcal)を2本と、さらに予備でピットインジェルを2本、トップチューブに貼り付ける。そのほかにもレース前にピットインジェル2本、T1/T2のギアバッグにもそれぞれ1本ずつ、トドメにランのゼッケンベルトにも2本付けてある。これで合計3,000kcalオーバーだから多分足りる筈。

あとは記録を残すために最も大切なタイミングチップを足首に巻くのだが、昨日聞いたとおりテーピングを巻いてからその上に巻きつけた。

後述するが、これはあんまり意味をなさなかった

そしてこれもまた恒例だが、BCAAの粉末をボトルに溶かしてスタートまでチビチビやるのと、アミノバイタルプロ(顆粒)をザザッと飲んでおく。その他もろもろ、頭のなかでシミュレーションをしながらストリートギアバッグの準備を済ませていよいよ出発だ。

出発

その前にロビーで朝食を受け取る。このようにレース当日の早朝に弁当を準備してくれるのは日本でもお馴染みでありがたいものだが、海外だとサンドイッチとフルーツになる。今回はたしかツナサンドで、もちろんおいしくいただいた。このようにトライアスリートには、栄養になるものならいつでもどこでも平気でガツガツ食べる無神経さ(笑)も求められる(?)。

スイム会場へはなぜか観光バスがチャーターされていた。同行の我々選手4名+応援の奥さん二人とツアコンの美保さん、現地ガイドのウォンさん。このたった8名のために巨大なバスが来たもんだから皆呆気にとられている。

他の人たちも乗るんですよね?えっウチらだけ?嘘でしょ?

前日の夜からだいぶ雨が降ったようでそこらじゅう水浸しだったが、さいわい雨はほとんど上がっていた。つい先ほどまで雨音のみならずカミナリまで響いていたのだが、これはこの日の天候を象徴する序章にすぎなかった。

五島では囚人護送バスのような気分で揺られていくのだが、今回のバスはラウンジのようでとてもゴージャス。後ろにもだれもいないから豪快にリクライニングしてゆったりと会場までのひとときを楽しむことができた。

T1でバイクの最終セットアップ

ここで重要なのが儀式「軽量化」。レース前の最大の難関でもある(いろんな意味で)。今回はT1が開く直前に現地に到着したので、まだ仮設トイレ前にさほどの列ができてない状態で並ぶことができ、無事完了。しかしヘッドライトを入れたストリートギアバッグを嫁さんに預けていたので割と暗闇で用を足すハメになった。洗浄ポンプをだいぶしつこく踏んだけど、どうもちゃんと流れてなかったような気がする・・・

バイクセットアップ

会場に入ってもまだまだ真っ暗。これは聞いていたとおりで、宮古島でもそうだったように、懐中電灯が必須である。タイヤ・ギア・ブレーキに問題ないかを再度確認し、トップチューブに「お弁当」を貼り付け、ガーミンを取り付けて電源を入れ、GPSを捕捉させておく。

最近のスーパーバイクには「お弁当箱」がついてるのが多くて羨ましいね

自分の準備は完了した。あとは持ち物をまとめてストリートギアバッグに入れて(だからここからは写真がない)スイムエリアに向かうだけだが、まだまだ時間はたっぷりあった。

うっかり懐中電灯を忘れてしまってセッティングに苦労していた山Mさんをみつけて手伝いをして、他の皆さんを探しながら一緒にスタートエリアへ行く。Bucciも居た。さすがの黄色キャップ(先頭カテゴリ。1時間15分以内)だ。目標タイムを聞いたら1時間2分とのこと・・・!!レベルが違いすぎる。

黄色キャップの人たちは一番スタートだし、Bucciは最後の軽量化に行くとのことでここでお別れ。スイムで20分くらいは差がつくし、バイクでもさらに差が広がることを考えると、ランで追いつくかどうか・・・(と、この時はその程度に思っていた)

ストリートギアバッグ

その後山Mさんと一緒にストリートギアバッグを無事預け、さてどこに待機したものかと思案していると、まだギアバッグを預けてない選手がいっぱいいるのに、積んだトラックがもう発進していこうとする。それを大声で追いかけてトラックにしがみつき、なんとかバッグを隙間から詰めようとする選手たち・・・なんだこの地獄絵図は・・・

トラックは少し行った先でようやく止まってどうにかなったらしいが、どこかのローカル大会じゃあるまいし、IMマークの大会でこんな酷いことが起きるとは、、、

その後岩Tさんとも合流できたが、黄色キャップのはずのH口さんはもう行ってしまったようで見当たらない。気を取り直して試泳時間に備える。しかし一向に「試泳開始」の案内が聞こえてこない。「どこでしょうね」と言いながら人の流れにそって浜のあたりに移動すると、もう試泳してる人たちがいる。

ウォームアップ

ところがなんか様子がおかしい。拡声器で「泳いでる選手の人たちはさっさと上がって」と言ってるように聞こえる。えっどういうこと?アップ禁止なの?しかしそんなのおかまいなくどんどん入っていく選手もいるし、状況が飲み込めない。山Mさんは瞬時に「どうもダメっぽいけど、今のうちに行っちゃおう!」と言い残して入っていった。

どうもモタモタしてるとこのままアップできずにスタートになってしまいそうなのでエエイママヨと飛び込んだ。たとえ少しでもスタート前に心拍を上げておいたほうがいいに決まっている。とは言え既に「上がれ上がれ」と言われてる状況なのでほんのちょっとザブザブやっただけ。

上がる時、ほんの少し浜の脇のほうにあがったら、思いの外尖った砂利やコンクリ面があって「イテテテ」となってしまった。無理に歩いたら足の裏を怪我しそうなくらい。こういう時に慌ててはいけない。落ち着いてゆっくり場所を移動してことなきを得た。レース直前に流血騒ぎとか絶対嫌だからね。

いよいよスタートエリアへの移動が始まった。スタート順にまずは黄色キャップから。同カテゴリ内では特に位置取りの指示は無いが、必然的に自信のある人が我先にと行く感じだろう。MCの煽りに合わせてみんなで「Woooo!!」と叫ぶ。なかなか国内レースではみられない陽気なノリだ。

スイムスタート

MCのトークとノリの良いBGMが一際大きくなり、ついに本スタートの時間が近づいた。いよいよこの時が来た。初アイアンマンとは言え、このスタートの気分散々あじわって来たからそんなに緊張はなかった。よし、今日一日楽しむぞ!

「ぷわぁぁぁぁぁ」

ホーンが鳴り響き、ついに2022アイアンマンマレーシア・ランカウイのスタート。5人1組、5秒間隔で次々と飛び込んでいく。1分60人だから結構サクサクと順番が進んでいき、ほどなく黄色は終わり我々紫(どうみてもピンクだが)キャップの順番となった。

MCのオッチャンが選手とハイタッチしながら捲し立てている。「今タッチした手を洗うの忘れないで!」「みんな!スマイルスマイル!スマイルできないやつは今すぐゴーホーム!」陽気だなぁ。五島名物の「誰か結婚して〜!」も好きなんだけどね。

ニヤニヤしてるうちにたちまち順番が回って来た。もう、なるようにしかならない。スイムの目標タイムは1時間20分。とにかく生きてスイムアップすることだけを考える。5・4・3・2・1、Go!! 無我夢中で浜を走って水際に飛び込んだ。

スイム3.8km

スイムコースは、まず沖の島を目指してまっすぐ400m進み、ブイを曲がって右へ700m、またブイを右へ曲がってスタート地点へ800mで一周1,900m、これを二周回ということだ。最初の区間が400mというのが良い。比較的早い段階で「刻める」。その後調子が上がって来てからブイ間の距離が伸びるので、耐えやすい。

あまりにひどい軌跡。まっすぐ泳げよ

前回佐渡の時は最初過呼吸気味になって死ぬかと思ったが、今回は幸いそんなことはなく、思いの外スムーズなスタート。しかもウェーブスタートのおかげでバトルらしいバトルも全くなく、たまに足にだれかちょっと触るぐらい。これは快適だ・・・そしてウェットを着てないから普段のプールの感覚にも近く、思ったよりずっと泳ぎやすい。

400の第一コーナーブイには割とすぐたどり着いたが、そこからが長かった。赤い小型のブイが二つあってから白い大きめのブイ、これを二回見てからレストゾーンがある。これは初めてみた。日本の大会ではそんなものはなくて単に疲れたらロープとかに掴まって休めということだが、ここではこうやって島のようなのがいくつか儲けられている。

この辺りからポツリポツリと黄色キャップの人に追いつき始める。自己申告だし、当日の体調もいろいろだからそういうこともあるだろう。ただ、割とこのあたりになるともう周りも泳力は(大したことないレベルで)似たり寄ったりだから、結構抜きつ抜かれつの展開になる。

さらに赤、赤、白、レストと見てからもう一度赤、赤と来てようやく第二コーナーの白二つが見えた。よくブイをターンするところには選手が密集してすごいことになりがちだが、そんなこともほとんどなく平和に通過。

さらにそこからスタート地点に戻る800は長い(当たり前)が、陸へ戻れる、戻れば後一周回で終わる、ということから精神的にはかなり楽になってくる。本当ならこんなこといろいろ考えられないぐらいに追い込まないといけないんだろうけど、それができない、すなわち不得意種目ということだ。

また同様に赤、赤、白、赤、赤、白、レスト、というセットを二回通過してようやくゴール付近の黄色ブイが見えて来た。よし、当社比割と快調に進んでいる。五島で絶好調(スイム練習量が過去最多だったころ)の時は38分で一周上がってた。今回はどうか?40分切れるか・・・?

やっと砂浜に到達して起き上がり、ガーミンを確認。「42分」ガクーッ!!ま、まぁ練習量の少なさを如実に反映しているだけだ、気にするな気にするな!二周回目も落ち着いていこう。スイムは生きて上がれればそれで良いのだ。水をいっぱいもらって二周目へGo!!

二周目はさらに慣れて来たから落ち着いて練習のポイントを思い出してしっかり進むことを意識して速くなる分と、既に1.9km泳いで疲れて来て腕の回りが悪くなって来たので相殺されてやっぱりさっきと同じ雰囲気。通過するブイを順番に数えながらじっくり進むしかない。

クラゲ

そう言えばさっきからときおり顔や手足が何度も「チクッ」「チクッ」と針で刺されるような痛みを感じる。話には聞いていたが、やっぱりクラゲが居るようだ。昨晩の雨のこともあって透明度がよくないからクラゲが居るかどうかは全然見えないが、この刺され感はクラゲで間違いないだろう。

痛いのは痛いがべつに泳げなくなるほどではない。でも微妙〜に不快。まぁこれもとやかく考えてもしょうがないから我慢するしか無い。あとでみんなに聞いたらやっぱり刺されていたという。ところがBucciだけは「気になりませんでした」えー・・・m/sで泳ぐぐらいになると刺されないのかなぁ。

スイムフィニッシュ

すでに表情に「ああ、しんど」と書いてある

二周回目も大禍なく同じようにブイを数え、ゴール地点に戻って来た。ガーミン「1時間25分」うーむ・・・二周目も変わらずか。まぁでも大丈夫だ。陸に上がれば半分はレースが終わったも同然!あとはバイクとランで思い切りブチかます!(と、このときは思っていた・・・)ラップボタンを忘れず押下してT1モードに移行。オフィシャルのスイムラップは1時間26分05秒と、低調に終わった。

T1

しかしもちろんスイムが終わったからと言って気を抜いてはいけない。トランジションを確実にこなしてスムーズにバイクスタートせねば。バイクギアラックへ向けてバタバタと走っていく。スイム上がってもヘタレずにスタコラ歩くのも普段の練習からやっているから、辛いけどどうにかいける。

ラックの自分の周りのギアバッグはまだほとんど掛かっていた。案外エイジの中ではこれでも速いほうなのか?チェンジエリアにはまぁまぁ選手がいたが、椅子はすぐに確保できた。足を拭いてソックス、シューズ、メット、サングラスを付けたらすぐ立ち上がり、スイムキャップ・ゴーグルはバッグに放り込んで係に預け、あとは走りながらグローブをつける。

バイクラックでも、自分の周囲のバイクはまだほとんど残っていた。落ち着いてバイクのガーミンをロードモードにしてスタート、と同時に腕のガーミンのラップを押してT1からバイクモードへ移行。T1は4分台だった。オフィシャルでは4分39秒と、これは悪くない数字。

この時雨は上がっていた

いよいよバイクへ。まさかこのあと、歴史に残るような悪天候が我々を襲うとは、だれも知る由はなかった。

つづく

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