見出し画像

Ironman Malaysia too much detailed report Vol.3 詳しすぎるアイアンマンマレーシアレポートその3

二日目(試合前日)

前日の朝はルーティンとして5キロランをすることに決めている。主にランコースの雰囲気を感じておくことと、体調を見極めるためである。この日も5時過ぎに起きて粛々と準備してホテル前に出た。地理と時差の関係でまだ真っ暗。

ガーミンがGPSを捕捉するまですこし時間がかかるので海辺を散策。昨日のスイム会場もそうだったが、ここのビーチも本当に綺麗。ゴミがほとんど落ちてないし、日本でよくみる海藻や流木、漂着物の類もまったくない。

チェナンビーチ(Pantai=マレー語の「ビーチ」)

調整ラン

ペランギ方面へスタート。街中はコーンで車道が区切られていて翌日ランコースにする準備がされているので車道を走れるが、路面が良くないのでうっかり足を取られることがないよう気をつけないといけない。

試合前の軽率な行動でうっかり怪我をして本戦を棒に振るという辛い思いを今まで何度もしてきたので、最近はそういった面で慎重にことを運ぶよう気をつけている。特に歩道は木の根っこが盛り上がっているところが多く、避けた方が無難だ。

ペランギの前あたりに来ると、遠くの方から読経の声が響いてきた。かなりの大音量で流している。マレーシアは基本的にはイスラム系で、寺院も多くあって皆敬虔な信者が多いという印象。レストランで酒を提供しないところがあるのもその一環らしい。

ジョグからゆるりとはいったが、脚の具合は良くなかった。当たり前だが日曜日に10キロタイムトライアルをやらかして完全Toastした脚はまだ回復しきっておらず、非常に重い。いつもならとっくにキロ5に上げられる距離になっても5分半のままといった状態。マズイ、マズイ・・・

朝なので気温自体はかなり下がっていたが、湿度がすごくて途中から汗がドッと吹き出してきた。朝でこの状態ということは、夕方近くになるとはいえ、ランパートは地獄ではないか・・・(と、この時はそう思っていた)

まぁこの期に及んでジタバタしても始まらない。あとは無理せず上げられるところに留めて。幸い後半には5分を切れるところまでは来た。お経の声を聞きながら、我ながら不思議な体験をしているな、、と思いながらホテルへ帰還。

この時はわかってなかったが、もう少しで空港エリアに近づく位置まで行っていた。

朝食

シャワーを済ませ、朝7時からというホテルの朝食へ。日本だったら7時オープンなら7時には確実に開くのだが、こういうところでは「ん?もう来たの?ちょっと待って」的な雰囲気。まぁ別にとやかく言うほどのことではない。

欧米のホテルによくあるバッフェ形式の朝食。実は私はこの手のホテルの朝食が大好物。ソーセージ、卵、豆、サラダ、フルーツ、トーストや菓子パン、さらにシリアルやヨーグルト、そして締めのコーヒーまで色々取ってきて食いまくる至福の時である。

食いながら当日の予定を皆さんと打ち合わせ。今日は何といってもバイク他の預託がメインイベントだが、預託がオープンするのは昼すぎなので、午前中はフリーで試泳・試走などで過ごして、それぞれ昼飯食って午後から行きましょうということになった。とりあえず朝飯を済ませて部屋に戻り、すこし片付けてから試泳に行くことにした。

試泳

以前珠洲の前日の試泳のときにうっかり波打ち際の穴にハマって足首を捻挫してDNSするという痛恨の経験をして以来、試泳にはトラウマがある。そして試泳したところで遅いものは遅いままなので正直どうでも良いのだが、少なくとも海がどんな感じなのか見ておくのは大切だ。

浜辺に行ってみると、すでにご同行の皆さんはザブザブと始めている。少し日が射してきていよいよ南国の海という感じがしてきた。岩Tさんは元水泳部だったそうで、胸キンのつき方が全く違う。沖の方までガシガシと行ったり来たりしている。お肉を分けて欲しい・・・

自分はと言えば海の感触さえわかればもう十分なので、ちょびっとチャプチャプと泳いだだけ。あとは皆さんと適当にわいわいとスイム話をして終了。ホテル前の犬の足洗い場みたいな水道で足を洗って部屋に帰る。次はバイクの試走なのでさっそくJETTジャージに着替える。

バイク試走

空港西側の長ーい直線路の途中まで

佐渡の190キロでも幸い全く問題のなかったキヤノンデールちゃんぽん号。今回ちょっとブレーキで手間取ったが、他は大体バラして組んだだけだから多分大丈夫という目算はあった。走り出しでちょっとだけディレイラーのズレが認められたのでちょちょいとアジャスターを調整。

路面は実際走ってみてもやはり良くない。たまにボコボコのところがあって、エアロポジで下手をするとハンドルをとられかねない程のところもあった。自分は幸い試合中に落車したことはないが、やはり集中力を切らしてはいけない、と改めて思った。

他は駆動系・ブレーキ・ホイールともに特に問題はなかった。特に前輪は佐渡のときにバルブの固定を忘れていてずーっと「コン、コン、コン」とバルブが鳴り続けるという情けない状態だったのを思い出して、今回はちゃんとテープで止めてある。

コース上ではすでにエイドの設営が始まっていた。ここがランコースか・・・と改めて思いながら空港沿いの道を5キロ過ぎまで行って折り返してさっさとホテルへ戻る。昼飯を少し早めに食いに行こうと嫁さんとの約束なのだ。

昼飯

昨日皆さんが近所のカレー屋でカレー食ったら安くて美味くて大満足だったと聞いたので、そこへ行ってみることにした。炭水化物も摂れるし。ホテルから徒歩1分のいかにも東南アジアのレストランという風情。

ストリートビューから

メニューが店の表にタテカンになってて一応いろいろ書いてあるが、当然何がなにやら。一人だったら絶対入らない(笑)。とりあえずチキンかフィッシュっつって適当に頼めばどうにかなるだろう。残念ながら魚は無かったが、他のものもなんかいろいろ入ってて十分そうだったので「それでええわ」と注文。

いかもに本場のインドカレーという感じで口から火が出そうだったが、確かに美味かった。量もたっぷりでわずか10リンギット(300円くらい)。味にはうるさい嫁さんが美味い美味いと言ってたので間違いない。よかったよかった。ではホテルへ戻って預託の最終確認をせねば。

前日チェックインツアー

トライアスロン特有の準備としてバイクそのものやトランジション用の各種用品を前日(レースによっては当日)に準備しておく、ということがある。アイアンマンでもそれは同じだが、きちんとブリーフィングを参照して正しく対応しないと当日出走できないことになりかねない。

T1にはバイクを預託し、バイクギアバッグ(赤)を預ける。入れるのはバイクシューズ・ヘルメット・サングラス・ソックス・グローブ・ジェル、そしてスイムアップ後の足の裏を拭くためのタオル(これ重要)。エッジ530は一晩雨ざらしにしたくないので当日の朝に取り付ける。今回バイクパートではゼッケン不要とのことで、ゼッケンベルトは入れなくて良い。

T2にはランギアバッグ(青)を預ける。入れるのはランシューズ・ランソックス・ゼッケンベルト・ボトルポーチ・キャップ、ジェル、そして念のためのタオル。ゼッケンベルトにもジェル2本装備し、ボトルポーチにはカフェイン錠と万一の時のための痛み止めも入っている(これが後に仇となる)。

8時に皆さんホテル前にバイクで集合。8時過ぎに出発。まず先にT2でランギアを預けてからT1に向かうことになった。適当にトレインを組んでゆるゆる走っていく。ランカウイ経験豊富なH口さんが先導してくれるのでついていくだけ。下見で走ってきた道をたどる。

ランギアチェックイン

左の山Mさんが持っているのが受付でもらったバッグ。2022の主張が強い

T2にはほどなく到着。まだあまり人はきていないのでガラガラだ。バイクラックの自分の位置を確認し、ギアバッグラックのあるテントへ向かう。こちらも自分のバッグ位置をよく確認してトランジションの時に迷わないようにしないといけない。

かなり大きなテントに人数分のギアバッグラック。

バイクで戻ってくるときはバイクキャッチャーが受け取ってくれるらしいので、そのままランギアを取りに行き、裏のチェンジエリアで着替えてランコースに出ていく。よく動線を確認しておく。男女別の着替えエリアを間違えないようにしないといけない(笑)。

バイクチェックイン

それが済むとまたバイクに乗ってみんなでT1バイク預託へ向かう。T2を過ぎてすぐ、陸橋を越えるとアップダウンが始まる。5%くらいの登りがいくつかある感じで厳しくはないが、それなりにちゃんと踏まないと登らない。

バイクを先ほど確認したときは平坦をゆるゆる走っただけだったが、登りでガッと踏んだらフロントのシフターの締めが緩かったようでディレイラーの羽が微妙に動いてインナーに落ちてしまった。急にガシャン!となったので道の脇にいた猿がびっくりしていた。

これ自体はよくあることで、あーT1に着いたら環付きボルトを締めないといかんな、と思って楽観していた。その場はシフトレバーに指を添えてやり過ごすしかない。それ以外は登りで踏んでも、下りでガッとブレーキをかけても特に問題はなかった。

T1に到着したのはチェックイン開始の少し前で、すでにゲートにわらわらとアスリートが待ち構えていたが、ほどなくしてオープンした。まずは入口すぐの黒いテントで車検だが「ブレーキかけて。はいOK」という実にゆるいものだった。ヘルメットのストラップの確認もないし、このあたりは「怪我と弁当は自分もち」という感じだ。

単管みたいなパイプで組んであるお馴染みの光景

自分の番号のラックにバイクを掛けにいく。ラックの間隔は十分とられており、隣と無用の交錯は避けられそう。ゼッケン番号の最大値つまり出場者数は思ったより多くはなく(コロナの影響か)、バイクラックエリアの広さは日本のレースとさほど変わらない印象だ。

間違いなくバイクをセット。エアロボトルのフタのところにはコースのポイント表を貼ってある

バイクラックへのバイクの掛け方は、バイクを手前に向けてサドルの鼻先を掛けるものと思っていたが、向こうに向けてブレーキレバーを掛けている人が多くて面食らった。それをみて「あっこう向きに掛けないといけないのか」と思ってそうする人も多かった。係員から指示があるわけでもないので自分はいつも通りにかけておいたが、特に直されることもなかった。

バイクのエアロボトルのところには、佐渡のときと同じく、JETTの朝Iさんに皆生でもらった「鯛のお守り」を付けてある。佐渡のバイクを快走できた縁起物だ。自分は別に神仏に頼ったり迷信に縋ったりすることはないのだが、こういうものは心理的な支えになると思っている。

お守りが暴れないようにゴムバンドに挟んでおいた

ここでバイクの状態を最終確認。そして先ほどややゆるいことが発覚したフロントシフターのネジを締めておく。環付きボルトなので細いアーレンキーを挿してキュッと回す。キュッ・・・「バチン」あっ・・・!!

あろうことか「環」が吹っ飛んでしまった。こうなると今持ってる工具ではどうにもならない。仕方がない、レース中インナーに落ちやすい状態だが、指を添えてどうにか頑張るしかない。不調と故障も自分もちだ。

気を取り直してバイクギアバッグを所定のテントのラックに掛けにいく。ラックはランギアのところと同じく上下2段でびっしりと掛かるようになっており、もうすでにたくさんの青バッグがかかっている。同様にその奥が男女別の着替えエリアで、割とたくさんのプラ椅子が並んでいる。

バイクとはここでお別れなので、バイクシューズ・ヘルメット・サングラスもここでギアバッグに入れてしまい、持ってきたサンダルに履きかえた。

70.3も含め上下、表裏の8列くらいあって1列に50人分並んでいる

バイクラックの位置、ギアバッグの位置、スイムアップからトランジションの動線をみんなでよく確認しておく。そんなにややこしいことはなさそうだ。もう一つ、絶対に忘れてはならないタイミングチップの受け取りへ。これがまた目立たない配布の仕方で「あ?ここだったの?言ってよ」という感じだった。

無事受け取り完了

国内レースのタイミングチップは、大抵ネオプレンのバンドで巻くようになっていて肌あたりが良いものだが、ここのは割とイガイガした普通のマジックテープになっている。H口さんによるとこれがランのときに擦れてしまって痛くて困ったので、テーピングをしたほうが良いとのこと。確かにそうだ。良いことを聞いた。

これで基本的にチェックイン絡みの準備はすべて完了。あとはバスに乗ってペランギへ戻るだけ。その際、ゴールエリアの確認をしておくことにした。これもまた自分にとっては結構重要な儀式で、2014年の珠洲で不遇の捻挫DNSをやらかして以来、必ず前日にゴール地点をよく見て「絶対ここに帰ってくる」と強く念じることにしており、幸いDNFになったことは無い。

これぞアイアンマンのゴールゲートだ!(カーペットのIMマークはなんでこの向きなんだ?)

昨日は受付の建物に入っただけだったが、その奥のリゾートエリアに入ってみると、クラブメッドのようないかにもリゾートホテルという感じのエリアやプールにビーチが広がっていた。ツアコンの美保さんはここに宿泊を手配したかったらしいが、大人気ですぐに埋まってしまうため、叶わなかったとのこと。さもありなん。

建物内のホールのようなところの横にとても綺麗なレストランがあるのを見つけた。嫁さんが「旅先で一度はちゃんとしたところで食べたい」と言っていたのを思い出した。でも今回は皆さんと行動を合わせたり、レース直前なので豪勢な食事をしてる場合じゃないとかで半分諦めていたのだ。

皆さんに断って、ホテルに帰って今晩は嫁さんと二人でここに食いに来てはどうかと提案してみることにした。聞いてみるともちろんOKだったが、そんな良いレストラン予約せずに入れるのか?と。慌ててネットで調べると、同じリゾート内にレストランが他にもいろいろあってどれがどれかよくわからない。結局早めにいくからどうにかなるだろうと踏んで出かけることに。

このレストランは正解だった。アルコールが無かったのは(嫁さんにとっては)誤算だったが(昼間に岩Tさんの奥さんと一緒にだいぶ楽しんでたらしいので)許容範囲、料理はどれも美味しく、雰囲気も高級でしかもリーズナブルなお値段。自分もカルボナーラを始め十分に炭水化物を摂れたので言うことなしだった。

さてトイレ寄ってから帰るか・・・と、嫁さんが「ちょっと!あの人!」と指差している。見るとJETTジャージの男性が仲間の人たちとソファに座って歓談しているではないか!Bucciだ!!

実はリアルでは初対面

JETTのライドでいつもとてもお世話になっているBucci。これまでチームTTの時などにDiscord上では顔を合わせていたが、リアルで会うのは今回が初めてなので、会えるのを楽しみにしていたのだ。お互い同行者と一緒で別行動しているので、当日朝まで会えないのではないかと思っていた。

彼は自分では「ランが遅いので・・・」と謙遜しているが、スイム・バイクはめちゃくちゃ強い。セントレアなどこれまでの戦績を見るとバイクパートでトップに迫るようなタイムをたたき出していたりするし、Zwift上でも水曜レースなどでいつもすごく追い込んでいる。今回は特にCoreを導入してあえてエアコンを封印して暑熱馴化にも努めているので、明日は相当気合いが入っているようだ。

ご同行の皆さんもガチでコナを目指しているか、既に出たような人ばかりらしく、これは本気で狙ってきているな、という気概を感じる。こういう周りの環境も大事なのだな、という気がする。お互い明日の健闘を誓って固く握手をして帰途についた。やっぱり仲間っていいな・・・

ホテルに帰ってもまだ7時ごろ。明日朝に向けて補給の準備と、スイム関連の準備をしてストリートギアバッグにまとめ、シャワー浴びて脚剃って(これ重要)、もう一度翌朝の行動予定を反芻して「ヨシ!」あとは寝るだけ。この前日夜の押し詰まった感覚は毎度のことながらなんとも言えない。明日は3時起きである。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?