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古畑任三郎で好きな回

先月16日、俳優の田村正和さんが亡くなっていたことが分かった。77歳、心不全だった。

古畑任三郎を初めて見たのは小学生の頃。
主人公のモノローグと妙に不気味なメインテーマから始まり、いきなり殺人シーンという電光石火の展開に子供ながらにドキドキが止まらなく、中盤のコメディパートで心を掴まれ、切ない解決編へと締めていく鮮やかな構成に唸った。
振り返れば奴がいたり、101回くらいプロポーズしていた塩原少年にとって、それまでに出会ったことのないエキサイティングなTVドラマ体験だった。

三谷幸喜に憧れて喜劇をやっている自分にとって、田村正和さんが引退してからも古畑復活は期待して止まず、演劇仲間とは架空の古畑任三郎の新作について話す、妄想古畑遊びは定期的に行われていた。

そんな中で、僕の好きな古畑の新作はこの二つ(言うまでもありませんが妄言です)

一つは4thシーズン第9話「泣き寝入りは御免」の回。
この回のゲスト殺人犯はHIP HOPグループBAD HOPT-Pablow氏。

冒頭からブンヤに強請られている先輩ラッパー役のZeebra氏の演技が見もの。
T-Pablowの怒りが爆発するシーンでは、先輩に対する熱い想いの発露からか、犯してしまった罪の重さに反して勧善懲悪のような爽快感さえあった。
ラップに関して全く無知な古畑をくさす今泉くんに
「あー、あれ、今泉くん、君、出来るの?そんなに言うんならさぁ」
と言われて意外なほど見事なライムとフロウを披露する、西村雅彦さんの器用さが光る。
解決編で捕まらなければ幕が上がっていたあのライブは、どんなライブになっていたのだろうか。想像するだけで涙が出てくる。


二つ目は4thシーズン第22話「つよいものいじめ」の回。
この回のゲスト殺人犯は若手論客の荻上チキさん。

いじめ問題に対して精力的に活動しているチキさんが、大人社会の中で遭遇した凄惨ないじめ現場を目撃したことを発端に、たった一回のしかし大きな過ちを犯してしまう回。
Session生放送中で犯行は不可能だという偽のアリバイを、ラジオショッピングの試食のカニをつまみ食いしている今泉くんの姿をヒントに、解決編へと繋げていく推理がなんとも鮮やか。
手錠を掛けられたチキさんが「ただ黙って見ていることが、僕には出来ませんでした」と漏らすラスト、それを聞いた古畑が何も言えず窮す表情に、思わず泣いた。
フリーアナウンサーの南部広美さんも本人役で登場。


この2話は4thシーズンの中でも特に好きだ。
円盤には収録されていないので、フジテレビには是非、是非とも全話再放送をお願いしたいところだ。

注)何度も言いますが妄言です


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