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処方箋

「こころ」について学んでいくたびに思う。

こころに処方箋はないのだと。

言葉や薬さえも処方箋にはならない。
ただ祈りであるだけ。

パン生地を練って作り、発酵させてから型にはめる瞬間。型にはめる前の生地は伸びやかでどこまでも純粋だ。
でも、1度でも姿を歪め、型にはめてしまえばたちまち乾燥して動かなくなる。ゆっくりと引き伸ばせば動くようになるが、2度とあの純粋には戻れなくなる。

泣いてつめたくなった頬にふれるあたたかな手は、処方箋ではない。
抱きしめ、愛してるという言葉を口に出す行為は、処方箋ではない。

ただ、あなたが泣いていることを知っていて、それでも変わらぬ目線をやりつづけるのだという決意。
そして、ささやかな祈りである。