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笑顔の地図(3)

もしよかったらKindle版で読んでいただけると嬉しいです。2022年2月22日にリリースできました☟

理由1,共著者の平林ちずさんのご協力により売上を『海護り募金』および『100万人を笑顔にする会』の活動に募Kindleされます

理由2,リアルタイムで書いているときは、もうこれでバッチリ!と思っていたものも時間を空けると、ダメなところが見えてくる。キリはないのでしょうが大幅加筆修正も加え、読みやすさも格段に上がったと思います。なによりもKindleアプリが、それぞれの端末で読みやすくレイアウトしてくれます

理由3,Kindle Unlimitedをご契約の方は、無料の範囲に含まれ、しかも読んでいただいたページ数分が支援になりますので奮ってご協力…ご購読いただけましたらば!

海護り募金だけ切り抜き

脱炭素から「活炭素」へ

海に森をつくる
二酸化炭素を活かす

海の森は「藻(も)り」

海の草木は「藻」なんです
ワカメとか昆布とかアマモとか海藻(かいそう)たち

藻たちにとって二酸化炭素は
人間にとっての酸素です

藻たちにとって二酸化炭素はエサ

そんな藻たちが世界的に減ってしまっているんです

どうして減ってしまったのか?
そして、どうしたら増やせる?

なんと今貝…もとい今回リリースされた
「笑顔の地図」を読んでいただくだけで

アマモが増えちゃいます!

ちずさんのご協力により、収益を海にモリをつくる「海護(アマモ)り活動」に寄付させていただくことになったからです

特にKindle Unlimitedをご契約の方は、無料で読んでいただいたページ数分が支援になりますので奮ってご協力…ご購読いただけたらうれしいです☟

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本文☟

喉元すぎればなんとやら

喉元すぎれば熱さを忘れる、という言葉がある

熱かったり、冷たがつたり
うまかったり、まずかったり
甘かったり、苦かったり

たが、それでは人は生きてはいけない、サバイバルしていけないのだ

舌を通して、不味かったり、苦かったりしたことは、ちゃんと記憶するようにできている

嫌だった味、ダメだったことの記憶

毒を喰らってしまっては、元も子もないから

その草が、その葉が、その実が、食べられるものなのかどうか

生存本能と呼ばれるものだ

すべては生き延びるために

だから、幸せだった記憶よりも、不幸だった記憶の方が鮮明に残りやすい、とされている

当然、なにかしらうまくいったことの記憶も残る

でも、それも、生き延びるのに最低限必要なことに限られるとされる

あそこに水場があった、だとか、火の起こし方だとか

必要に迫られ、取得した技能

あの料理がまた食べたいから頑張ろう

それよりも、生き延びるために食糧を探さねばならないときの方が、本気になるということ

そこで考えてみてほしいことがある

止むに止まれぬ事情で、すべてを失い、無一文となり、もはや自ら命の火を消そうとしている、そんな初老の男性がいたとする

その男性に生きてほしいと、逃げてほしいと渡した50万円が、返ってくる確率についてだ

そのときは、涙ながらに感謝するかもしれない

ましてや、夜逃げ同然

用意周到な計画倒産でも無い限り、そのあとの日々が苦々しいものであることは想像に容易(やす)い

喉元すぎればなんとやら

感謝の気持ちは、いつまで持つのだろうか

忘れはしないだろう、でも、思うように立ち直れないなかで、一年がすぎ、二年がすぎ

その感謝の気持ち、必ず返そうということが、逆に重荷になっていく

50万円、いや、それ以上を準備できないと、その恩義に報いることができない、恩人に顔合わせできない

なんとか生き延びる中での50万円は重い

最初は、恩義に報いようと、返そうと千円、二千円と、わずかながらも残していたかもしれない

少しずつでも、返していけば?

夜逃げ同然だから、銀行口座はままならないかもしれない

恩人の郵便ポストに投函するには、リスクが高すぎる

まだ追手がいるかもしれない地元エリアに足を踏み入れることのリスク

どこまで夜逃げするのかは別にして、そこまでだとりつく交通費の方が高くつく

郵便で送る?

その切手代で買えるキャベツ

それが生き延びるために必要な、貴重な糧となっているような日々

ある日、ちずは、まさに命をたとうとしている初老の男に、50万円を渡した

生き延びてほしいと、身のまわりにある、すべてのお金をカキ集めて渡した

手元にある小銭まで有り金すべてを

ちずにとって、ただの50万円ではなかった

なによりも、ちず自身が結婚詐欺に遭い。そこからなんとか這い上がらんとする、爪に火を灯すような日々のなかで

昼に夜にバイトしながら必死に貯めた

ちずが再起するための50万円

恋仲だったのか?……否(いな)

それだけの恩義があったのか?……否

弱みでも握られていたのか?……否

男とは、ただただ、行きつけの喫茶店で、世間話をするだけの間柄だった

その男、仮にKとしよう、との出会いは、本当に偶然だった

Kは建設会社を経営しており、それなりに羽振りは良さそうにみえた

Kは、喫茶店にいるときは、たいていインベーダーゲームをしている

昔は、テーブル自体が巨大なゲーム機になっていて、それを置いているのが、喫茶店の定番のようなものだった

どこにでもあるような、町の喫茶店

名古屋をはじめ、地方によっては、誰しもが行きつけの喫茶店があり「モーニング」と呼ばれる朝食を食べたり、気軽に喫茶店に行く文化がある

自然と常連客たちと会話も生まれる

Kも常連客のひとり

互いのスケジュールの相性がよかったのだろう、たまたま鉢合わせすることが多く

ついつい愚痴をこぼす相手となっていた

なにせ、Kはいつもインベーダゲームに夢中で、上の空、聴いているのか聞いていないのか

詐欺に遭い、祖母が、顔つきまで変わったと心配するほとにダークサイドに落ちていた ちずにとって

それが、その距離感が、たまらなくありがたかったのだ

いつしか気晴らしに、カラオケや呑みにも行くような間柄になっていた

あるとき、いつものように、ちずの他愛のない愚痴を聞いていたKが、珍しく相槌以外のまともなことを言いだした

「おいおい、ちずちゃん、騙された方がアホウなんだよ。頭が悪いから騙されるんだ」

ちずはその言葉に、ハッとなった

いつまでも被害者ヅラして、相手のせいにして、グダグダと生きてしまっていた

Kはそんな気付きを与えるために、意を決して、言い放ったわけではなかろう

が、なにか煮え切らない日々を無為に過ごしているなかで、抜け出せそうで抜け出せない、なんともいえない徒労の日々のなかで

その一言は、あまりに晴天の霹靂であり、曇天打ち破る雷(いかづち)となった

あまりに当たり前のことで、だが、そんな当たり前のことに気付けなくなっていた自分がそこにいた

「騙される自分が悪い」

Kにいわれたその瞬間、心からそう思えた

その一言で、ちずは、得体の知れない鬱屈したナニカから、一瞬のうちに解放されたのだ

それからの ちずは、一切の愚痴を言わなくなった

誰かのせいにして生きる日々ではなく、自らのチカラで歩む日々に変わった

Kの経営する会社が破綻する

「もうあとがない」と喫茶店で聞かされたのは、それからまもなくのことだった

「アホウだの、なんだの言ってたのに、自分がその立場になっちゃったの。ホントびっくり」

破綻すること、倒産することを、Kの従業員は知らない

法律上、話してはならない
誰にも、悟られてはならない

仕事とは、なんの繋がりもない、そんな ちず相手だからこそだろう、思わず、吐露してしまった

この男は間違いなく、死のうとしている

自らも苦しき日々を送っている最中であり、また、こういうときの ちずの予感は、なぜだか当たる

Kと別れ、家に帰った ちずは、もう落ち着いてはいられなかった、居てもたってもいられなくなっていた

そこまでする間柄ではないことは、重々わかっている、ちずもバカではない

でも、その予感は、ちずを放っておいてはくれなかった

仮に理由を、というのであれば、再起の転機となる一言だけで、ちずには十分だった

いま自分ができることはなんだろうか

助ける?
経営が破綻してしまった建設会社など、ちずにはどうすることもできない

私はどうしたいのだろうか?

でてきた答えは単純なものだった

私はKに、生きていて欲しい
とにかくなんでもいいから、生き延びて欲しい

私にできることはなんだろう

逃す、逃げてもらう、逃げて!

結婚詐欺に遭い、関係者はまだ良いとしても、知人、友人、なにより親戚一同の針のむしろの上

死のうとまで思った ちずが、選ばなかった選択肢、選べなかった、いや結果として選ばなかった選択肢

いま思えば、一番効果的であったろう選択肢

逃げて!

ちずが逃げられなかった主な理由は、いくあてがないこともさることながら、なによりも「金」だった

詐欺にあったのだ。逃亡資金などあるわけがなかった

経営破綻と結婚詐欺では、その後に追ってくるものが違う

たとえわずかな資金でも「逃げる」ことを選んでくれるのではないか

ひと時とはいえダークサイドに落ちていた ちずは、光明を見いだそうとしていたときに読んだ詩を思いだしていた

そういうとき、相田みつをは必読書なのだろうか

相田みつをは「だってにんげんだもの」で広く知られる詩人だ

当たり前の言葉が立ち並ぶ詩なのに、なぜだか、心に訴えかけるものがある

それが、Kのあの「アホウ」の一言と被ったのかもしれない

なにかできることはないだろうか

ひとつよ詩が、ちずの頭をよぎっていた

百円玉一つ
ぽんと投げて
手を合わす
おねがいごとの
多いこと

Kの命の対価は?
いったいいくら払えば、願いを叶えてくれるのか、祈りは届くのか

ちずの答えは、全財産だった

部屋にあるお金を、小銭までカキ集めた

銀行に走り、全額、おろした

総額、50万円とちょっと
封筒に詰め込む

もう日も暮れていて、夜になっていた

どこにいるのだろう?
まだ間に合うだろうか

ちずは、Kの会社へと走った
比喩ではなく、本当に走ったらしい

Kはそこにいた
広い事務所に、たったひとり

ちずは、封筒を強引に、渡す

「お願いだから、逃げて。なんでもいいから生き延びて。お願いだから」

「なんでこんな小娘に、助けられないといけないんだ。この俺が……」

泣いていた
ボロボロと泣いていた

大の大人が、しかも大の大人の男が、こんな風に泣くのを、ちずははじめてみた

このまま手伝うのはなんだか邪魔な気がした

それに50万円は「お賽銭」だ、返ってきてほしいどころか、渡せて……投げれて、自分の中も外も、なぜだかとんでもなくスッキリとしていた

たしかに、スッキリサッパリよね
もう一円もないんだもの

ちずは、それ以上なにも言わず、なにも聞かず、すうっと立ち去った

もうどうやってだったかも、誰だったかも、まったく憶えてはいないが、Kが無事?夜逃げしたことを知った

ちずには、もうどうでもいいことだった

生き延びてくれた、それだけで

「社長、変な人が来ています」

「変な人、じゃ、なんにもわからないじゃない。名前は?用件は?」

「それが……いまいち要領をえなくて。とにかく社長に会いたいと、名前はKさんだそうです」

すぐには思いだせなかった

あれから8年の月日が経ち、ちずは、念願だった温浴施設を、しかも3つも立ち上げ、運営し経営する多忙な日々を送っていた

K……K……あっ!

生きていた、生きてくれていた

会議の途中だったが、ちずは、飛びだした

ロビーにKが、いた

見た目はえらく老けていた、大変だったのかしら……

いいじゃない、そんなこと
生きているんだもの
生きていてくれたんだもの

よかった、よかった

不思議なほど純粋に、それだけ

強引に封筒を渡される

中には “ たくさんのお札 ” が入っていた

50万円分のお札

たくさん、そう、たくさん

一万円札だけではなかったからだ

ごわごわで、ふぞろいの千円札を、無理矢理に詰め込んだ封筒

恩義せガマしくないですか?
苦労しました、大変でした、ってありありじゃないですか
どうせ返すなら、ちゃんと銀行でピン札に換えて、こうすうっと、すんなりと……

ツッコミどころ満載、こんなツッコミを入れていると、思いだしながら話す ちずは泣いていた

「いいの、いいの、私、それで。ちゃんとぐっと来ちゃったんだから。ボロボロの札束を思いだすだけで、もう……」

8年、ほぼ10年に及ぶ歳月

その千円が必要な日もあったろう

耐えて、耐えて
貯めて、貯めて
そして現れた

脳科学、心理学、行動科学、人の本能、特性、過去の事例

その確率がいかほどかについて、考えてしまった

返ってくる確率について

いつのまにか、ちずは泣き止んでいたのか、いつもどおりの少しキーの高い明るい声で、こう続けた

「いつもね、何倍にもなって返ってきちゃうのよね。見返りを期待して人助けしてるわけじゃないの、そこは誤解しないで」

少し間をあけて、もう一度いう

「ホント、なんでだろう、必ず返ってくるのよね」

今週のインタビューも内容が豊富で、とりあえず、こちらのエピソードから。もうひとつくらい来週のインタビューまでにアップできるかもしれません

村長交換の件(くだり)から、いきなり、3つの温浴施設が完成していたり

肝心の、九死に一生を得た交通事故の話も、村長交換からどうやって温浴施設を実現させたのか

なにより笑顔についての活動のエピソードも、ほとんど聴きだせずに終わってしまってますがね

バックダンサーのバックダンサーオーディションの顛末については、すでに聞いているので、別途、認(したた)めさせてください

さてさて、来週はどんな話が聴けるのでしょうか

笑顔の地図は、まだその輪郭すら描けていない

(4)へとつづく☟

(1)です☟

この記事の元となるインタビューの模様はこちらから聴くことができます☟

※StandFM版はいま準備中です

こちらの記事は、ちずさんのご協力のもと、ゆくゆくは「募Kindle」としてKindle本になる予定です

募Kindleとは、電子書籍を読んでいただくだけで「海護(アマモ)り募金」となり ” 海に森をつくる ” 支援ができる仕組みです

特にKindleUnlimitedをご契約の方は無料で、読んでいただけたページ数分が支援になりますので奮ってご協力いただければうれしいです。詳しくは☟


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