33歳人妻が16歳の少年に恋した話 34 また来年

走って夫の元へ戻り、試合が始まった。

正直なところ彼を好きになってから、応援しているチームに対する関心が薄れていくのを感じていた。

いつからか試合会場は彼に会える場所という認識に変わっていき、試合よりも彼と同じ場所にいられることが楽しみになっていた。

見た目にもやたらと気合いを入れるようになっていた。

そんな最終節。
もう試合なんてほぼどうでも良くなっていた。

夫の目を盗んでは、フラッグを掲げたり、手拍子したり、跳んだりして応援する彼の姿を見ていた。

その度に、こんな姿もしばらく見られなくなるのだな、と思った。
一つの季節が終わる感じがした。

試合はまさかのボロ負け。
最終節にこれか、ってびっくりするぐらい。

試合が終わってから、夫が
「もう来年まで会えないだろうしフラッグ君に挨拶したい」
と言ってきた。

一瞬躊躇ったが、ここで嫌がるのも変だと思ったし、何せ私も会いたかったので了承した。
私たちはフラッグ君のいるコアファン向けの席の方へ歩いて行った。

さすがコアファン向けのエリア。
選手に向かってみんながブーイングしていた。
ちょっと怖い空気だった。

フラッグ君の後ろ姿を見つけた。
フラッグ君も全力でブーイングしていた。
彼もブーイングとかするんだ、と思ってちょっと驚いた。

後ろからトントン、と肩を叩くと彼は振り向いた。

私の顔を見て一瞬ときめくように目を見開いたが、私の隣に夫がいることに気付いて瞬時に目の輝きを失っていた。
がっかり、と言わんばかりに。

夫が
「一緒に応援できて楽しかったです、ありがとう」
と彼に言った。

彼は
「ああ、はい、こちらこそ。僕も楽しかったです」
とちょっと素っ気なく、でもちょっと笑って言った。

私も続けて、
「楽しい夏をありがとうございました」
と言った。

彼と目が合った。

彼はニコッと笑って
「僕の方こそありがとうございました。このフラッグ作ってよかったです」
と言って、例のフラッグを開いて見せてくれた。

間近で見るフラッグは相変わらず大きかった。

彼がこれを作らなかったら、出会うこともなかったし好きになることもなかったのだろうな、と思った。

ちょっと泣きそうになった。

フラッグ君は笑顔で
「また来年会いましょう」
と言った。

試合の帰り、夫が
「本当にフラッグ君って熱くていい子だよな。来年まであの姿見れなくなるの寂しいなあ」
と言った。

私は
「本当だよね。来年まで会えなくなるの寂しいよね。また会いたいな」
と返した。

夫はきっと、私の発言の本当の意味を知らないんだろうな。

ごめんなさい。

フラッグ君は来年会いましょう、と私たちに言った。

これから私と彼の関係は一体どうなるのだろうな、と思った。

もう来年まで会えないのかな。

こうしてオフシーズンへと突入した。

続く

関係ないけどクリスマスに買った4万のバッグ、みんなに仕立てがいいとかかわいいとか褒められて嬉しい。本当に正社員になってよかった。自分のお金でいいものが買えるのは楽しい。

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