8年間片思いされた話 1 震災中のこと

大学生の頃、家の近くのレンタルショップでバイトをしていた。

前の記事に書いた通り、私はバイト先の先輩と1年ほど付き合っていた。

別れた後は程なくして、常連のお客さんと付き合うことになった。(これまた思い出深い人なのでいつか記事にしたい)

春休みに東日本大震災が起きた。
私は当時仙台市民。海沿いの街に比べれば大したことはなかったが、それなりの被害を受けた。

バイト先も当然大きな被害を受けた。

震災中はどこにも行けないし電気もガスも止まっていたしとにかくやることがなかったので、連日集まれるスタッフたちで集まりバイト先の復旧作業を行った。

復旧作業をしている最中、たまにお客さんが来ることがあった。

震災の前に借りていた商品を返しに来るお客さん、お店を早く開けてほしいとお願いしに来るお客さん、などなど。

そんな中、私を指名してきたお客さんがいた。

その時はお店の奥の方で、バラバラになったCDを集めてケースやCDを拭いていた。

お店の入り口付近で作業をしていたバイトの後輩が

「あのこさん宛にお客さんが来てます。男性の方」

と声をかけに来た。

誰だろう?と思い後輩と共にお店の入り口へ行くと、見覚えのある男性が笑顔で立っていた。
お店の常連さんだった気がするな…ぐらいの人。

清潔感と品はあるけどそんなにかっこよくはない。その上ちょっとだけ太っている、黒縁メガネの男性。

男性は突然

「アドレス渡したらメールくれますか」

と聞いてきた。

突然そんなことを言われて動揺したが、

「彼氏がいるのでごめんなさい」

と断った。

彼は

「そうですか。ごめんなさい。ありがとうございます」

と笑顔で言って帰って行った。

何がありがとうなのかと思った。
ちょっと奇妙だった。

翌日、相変わらずバイト先で復旧作業をしている中また私宛にお客さんが来た。

私は後輩に呼ばれ、お店の入り口へと向かった。

昨日の彼がまた笑顔で立っていた。

「彼氏いるって言ってましたけどお友達になってくれませんか」

私は何と答えればいいのかわからず、黙ってしまった。

「また明日来ますね」

と言って彼は帰って行った。

そして翌日、また彼はやってきた。

その日は入り口付近で作業していたため、直で私の元に来た。

流石に3日連続で来られるとスタッフ間でも話題になっており、みんな好奇の目で私と彼を見ているのがわかった。

彼は私に小さい封筒を渡してきた。

「よかったらお友達になってください」

と笑顔で言って帰って行った。

帰ってから開封すると、手紙が入っていた。

「いつもかわいい笑顔で接客ありがとうございます!よかったらお友達になってください!」

下にはメールアドレスが書かれていた。

迷う以前に、電気が復旧していなかったため携帯電話の充電ができず連絡できない状況だった。

電気が復旧するまでに、どうするか考えようと思った。

続く

関係ないけど夫が買ってきてくれた茨城の芋スイーツ全部美味しい。芋ってやっぱ最高。

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