33歳人妻が16歳の少年に恋した話 72 終わりの始まり
2023年、1月中旬。
スポーツチームのイベント当日。
初日以降も案の定仕事は忙しくて、連日20時過ぎまで残業した。クタクタだった。
新しい環境と残業に疲れ果てており、フラッグ君のことを忘れる時間も長くなった。
とりあえず今日は気持ちを切り替えてイベントを楽しもう。
1人で行って、彼がお母さんと離れられる時間があれば会おうと思っていたのだが。
夫も来ると言い出した。
離婚を切り出したことを彼に話したばかりだし、夫と一緒にいるところを見られたら怒らせてしまうかもしれない。
そのため、夫と共に行動することは避けたかった。
ていうか単純に一緒にいたくないし。
「別々に行きたい」
と言ったが、承諾してもらえなかった。
しばらく揉めた。
言い争っている間にも時間は過ぎて行くので、夫を無視して家を出て1人で会場へと向かった。
会場に着いてすぐ、彼とお母様を見つけた。
相変わらず仲が良さそうだ。
彼に連絡してみた。
「フラッグ君見つけた(笑)」
「え!どこにいるの」
「教えない(笑)後でタイミング見て声かけに行くよ」
「はーい(笑)」
間も無くイベントが始まるため、会場に設置されていた椅子に座った。
すると、突然隣の席に夫が座ってきた。
「ふー、間に合った。ひどいよ本当、置いていかないでよ」
「え?!なんで隣来るの?!やめて」
この状況、絶対にフラッグ君に見られたくない。
席を移動しようとしたが、イベントが始まる直前のためもう他の場所には移動できない空気になっていた。
程なくして選手も入場してきた。会場は拍手に包まれた。もうこれは動けない。
しかし、さっき連絡した時点で彼は私がどこにいるのか気付いていなかったし、イベント中は流石に私のことを探したりはしないだろうし、この時点で見つかることはないかなと思った。
ひとまずこのイベント中は我慢して夫が隣にいる状態で過ごすことにした。イベントが終わったらすぐ夫から逃げれば良い。
何よりまずはイベントを楽しまなくては。
しかし。
イベント中、選手への質問コーナーの時間が設けられた。
結構な数のサポーターが手を挙げる中、夫も手を挙げた。
ここで夫が当てられたら注目を浴び、彼の目には私と夫が映ることになるかもしれないと瞬時に察した。
夫が当てられることは何が何でも避けたかった。
当てないでくれ当てないでくれ当てないでくれ
ひたすらそう願っていた。
しかしそんな願いも虚しく、進行の方が
「じゃあそこの、黒い服のメガネのお兄さん」
と言って、夫を指名した。
夫は張り切って立ち上がり、選手に向かって質問した。
嫌な予感がして客席を見渡すと、彼を見つけた。
瞬きもせず、ものすごく冷ややかな目でまっすぐこちらを見ていた。
あんな冷たい目をする彼、初めて見た。
絶対に怒っている。
進行の方が
「お隣にいらっしゃるのは奥様ですか?」
と夫に聞いた。
やめてくれ。
夫はにこやかに
「そうです」
と言い、進行の方が
「奥様と一緒に来るなんて、仲良しでいいですねえ〜」
と言うと、会場から拍手が起こった。
空気を読んでとりあえず苦笑して一礼したが、チラッと彼の方を見ると案の定拍手はせず、変わらずに冷ややかな目でじっとこちらを見ていた。
イベントが終わった後
「ちょっと会える?」
と連絡すると
「嫌です」
と言われた。
「どうして」
と聞くと、
「離婚する予定の人と一緒にこんなとこ来るんですね笑」
と返信があった。
「違う」
と返したが、
「今から派閥の集まりがあるのでさよなら(笑)」
と言われて連絡が途絶えた。
その日以降、彼から連絡が来ることはなかった。
続く
関係ないけど、今日は昼休みも仕事帰りも、卒業式を終えたであろう高校生がたくさん歩いていた。みんなかわいかった。若いっていいなと思った。
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