2022年立川市議会議員選挙レポート
6月12日、立川市議会議員選挙が告示された。定数28に36人が立候補。候補者は4年前の43人を下回ったが、6月19日の投票に向けて激しい選挙戦が繰り広げられていた。
この「栄光なきドン・キホーテ」の初めての記事は2018年の立川市議会議員選挙のものだ。つまり、それから4年の歳月が経ったということでもある。果たして立川市はこの4年でどのように変わったのだろうか。
◆立川市議選立候補者
立川市議選に立候補したのは次の通り。
内訳は現職23、元職2、新人11。現職のうち自民党の佐藤寿宏市議、須崎八朗市議、松本万紀市議、共産党の永元須摩子市議の4人が引退・不出馬。NHKから国民を守る党の久保田学市議も参院選出馬のため市議選に不出馬で、6月17日に辞職している。
政党別では自民党7、公明党7、立憲民主党5、共産党5、維新の会1、国民民主党1、社民党1、都民ファーストの会1、立川・生活者ネットワーク1、諸派のバリアフリー党1、無所属6となっている。
自民党は推薦の頭山太郎市議(旧姓・安東太郎)を含め、現有8議席と同じ8人が立候補。公明党が7人、共産党5人とやはり現有議席と同数の候補者を立てている。
立憲民主党は前回、稲橋由美子市議1人を擁立しトップ当選させたが、今回は5人を擁立。前回は長島昭久代議士が結成した「未来日本」から2人が当選したが、代表の長島代議士が自民党に移籍したことに伴い解散。所属議員の渡辺忠司市議も今回は立憲民主党からの出馬となった(残る松本万紀市議は自民党に移籍後、今回引退)。
国民民主党も前回は2議席獲得したが、引き続き国民民主党から立候補するのは大石富巳夫市議のみで、伊藤大輔市議は無所属での出馬。
前回候補者2人が共倒れに終わった生活者ネットワークは阿部美砂候補に1本化した。生活者ネットは8年前は2議席を確保しているのだが、その際の現職である稲橋市議が立憲民主党に移籍して再選した一方で、無所属となった谷山恭子元市議は落選している。その谷山元市議は今回は社民党に移籍しての立候補となった。
都民ファーストの会が今回初めて候補者を擁立。フリーアナウンサーで都議選にも出馬した石飛香織候補を立てている。
また、日本維新の会は佐藤由紀候補を擁立。4年前は維新の会公認候補が惨敗しているが、このところの維新の勢いでどこまで票を伸ばすことが出来るだろうか。
諸派で立候補しているのはバリアフリー党公認の奥沢優耶候補のみ。
今回ポスター掲示板には36人中34人のポスターが貼られていた。貼られていないのは無所属の遠山怜央候補と、伊豆善正元市議の2人。遠山候補はTwitterで自身の予定としてギターやチェスのレッスンを挙げており、どうみても本気には思えない。
伊豆善正元市議は当選実績はあるものの、最後に出馬した2006年市議選では最下位当選が1316票の中、わずか204票に終わっている。選挙公報を見ると、最重要の公約として「議員は常勤化、6年1期限りとし、旧態依然を一層」を挙げている。これは市議会だけで出来ることではなく、伊豆元市議もどこまで本気なのかがわからない。
◆立川市議選ウォッチ
立川市議選をウォッチするために選挙公示前を含めて何度となく立川駅に足を運んだ。4年前の市議選の時にもそうだったが、立川駅前で活動する候補者には与党(自民党・公明党)の候補者は少なく、もっぱら野党系の候補者ばかりを見かける。4年前は菅直人元首相や長島昭久代議士など大物国会議員の姿をしばしば見かけたのだが、新型コロナの影響もあるからだろうか、今回はほとんど見かけることはなかった。唯一、立憲民主党の渡辺忠司市議の応援で地元選出の大河原雅子代議士を見かけたぐらいである。
その渡辺市議は4年前もJR立川駅北口でよく姿を見かけていたのだが、今回もしばしば駅前に立っている姿を見かけた。
渡辺市議を含め、立憲民主党の候補者の姿を見かけることが多かった。前回1人だったのが、今回は5人もの候補者を立てている。いくら立川市内で立憲民主党の支持が高いとはいえ、全国的には立憲民主党の支持が低迷している。その危機感の表れだろうか。
新人の須崎秀信候補は元自衛官で大河原雅子代議士の公設秘書。引退する自民党の須崎八朗市議とはまったく血縁関係はないそうだ。
原由希候補は、元小学校教師で1児の母。長妻昭代議士の元秘書だという。
権藤良嗣候補は酒井大史都議の元秘書。
国民民主党の大石富巳夫市議は5期目を目指す。自身のイラストをあしらった看板が印象的だった。
無所属の山本洋輔市議は31歳の最年少候補。緑の党にも所属しており、前回引退した大川豊元市議の後任として当選した。積極的に活動しているようで、日野市など他の自治体の選挙でも応援演説をしているのを見かけたことがある。
都知事選に3度出馬した宇都宮健児・元日弁連会長も山本市議を推薦しており、街宣でも一度姿を見かけた。
バリアフリー党公認の奥沢優耶候補も比較的よく活動する様子を見かけた。自身も視覚障碍者で障碍当事者議員の議会進出を訴えている。
ただ障碍者候補としては、多発性神経根炎で車椅子に乗る箱石強候補(無所属)もいる。過去市議選に6回出馬し、4回次点。前回も次々点と、毎回のようにあと1歩及ばない。果たして今回悲願の初当選なるだろうか。
立川・生活者ネットワークの阿部美砂候補。ネットは前回候補者が共倒れした反省から、今回は阿部候補に一本化している。しかしながら、立憲民主党の稲橋裕美子市議、社民党の谷山恭子・元市議といった生活者ネット出身の候補者が乱立。立憲民主党を支援する大河原雅子代議士も生活者ネット出身。票をまとめることができるだろうか。
生活者ネットを離党した谷山恭子・元市議は今回は社民党からの立候補となった。谷山候補にネット離党の経緯を少し伺ったのだが、ネットには「いろいろと問題がある」そうである。
日本維新の会の佐藤由紀候補。4年前維新の会は直前の葛飾区議選、日野市議選で候補者を1人に絞り、手堅く上位当選しており選挙巧者といった印象があった。ところが、柳沢貴雄候補は最下位当選者より500票も下回る惨敗。極右の田母神俊雄・元航空幕僚長が支援する乙幡直樹氏も下位に低迷するなど、立川市は右寄りの候補者を受け入れない土壌があるのではないかと思っていた。しかしこのところ維新は支持が急上昇しており、昨年の総選挙でも都内で健闘している。
佐藤候補は自転車で立川市内を回っていたようだ。
都民ファーストの会の石飛香織候補は、昨年の都議選にも立川選挙区で立候補し落選している。元フリーアナウンサーである。
共産党の中町聡市議は今回3期目の当選を目指す。
◆2018年市議選開票結果
前回、2018年の市議選の開票結果は次の通りであった。
自民党の安東太郎市議は当選後に名字を「頭山」に変更している。
各党の獲得議席数は次の通り。
◆立川市議選開票結果
6月19日、立川市議会議員選挙が投開票された。投票率は42.13%。43人もの候補が乱立した2018年市議選の43.54%を下回った。
開票結果は次の通りだった。
4年前の最下位当選は1,143票。今回は候補者数が減ったものの、1,113票となり、若干下回った。
党派別の当選者数は次の通り。
自民党は推薦1名を含む8名のうち1名が落選したため、現有を1議席下回った。前回次点(後に繰り上げ当選)の松本章寛市議が最下位で滑り込み、逆に最下位当選だった対馬史尭市議が次点で落選と、結果が入れ替わっている。
自民党の中山ひと美市議は選挙直前に不倫スキャンダルを報道されたものの、得票は微減に留まり、あまり影響は無かったようだ。
現有2議席の立憲民主党は5人を立てたものの2名が落選、1増にとどまった。前回トップ当選の稲橋裕美子市議は前回の3,831票から大きく票を減らしているが、前回は公認候補1名だったのだから仕方がないことである。
また、国民民主党は公認の大石富巳夫市議と、無所属となった伊藤大輔市議が共に当選している。旧民主党勢全体で見ると、前回は立憲民主党1、国民民主党2、それに長島昭久代議士率いる未来日本2の計5名だったのが、今回は立憲民主党3、国民民主党1、無所属1(伊藤市議)となり、勢力を維持することとなった。
共産党(現有7)と公明党(現有5)は公認候補全員が当選。自民党が1減となったことで、公明党が自民党と並んで最多勢力となった。
都民ファーストの会と日本維新の会が共に初めて立川で議席を得ている。特に維新の会の佐藤由紀候補は4年前の658票から3倍に票を増やしている。
前回2候補が共倒れだった生活者ネットは、阿部美砂候補に一本化し議席を奪還。前回離党した稲橋裕美子市議も議席を守っている。しかし、やはり前回離党した谷山恭子・元市議は返り咲きならなかった。社民党としてみると前回の推薦候補の510票から大きく票は伸ばしているのだが、谷山候補は前回の858票よりも票を減らしている。
無所属で緑の党所属の山本洋輔市議も当選。前回より得票数を800票以上増やし上位で当選。4年間の実績が認められたのだろう。
前回次々点の箱石強候補は、前回より300票以上減らして下位に沈んでいる。同じ障碍者としてバリアフリー党の奥沢優耶候補との間で票が割れたのかもしれない。
今回最下位とブービーとなったのは共にポスターを張り出していない伊豆善正・元市議と、遠山怜央候補であった。とりわけ遠山候補は70票で100票に満たなかった。もっとも4年前は63票と60票という候補もいたのだが。やはり本気だとは思われなかったのだろう。
立川市議選はこれで終わり。次の4年間に期待しよう。また、すぐに参議院議員選挙も待っている。まだまだ終わりではない。次の始まりなのだ。
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