2023年立川市長選挙レポート
8月27日告示、9月3日投票で立川市長選挙が行なわれた4期務めた清水庄平市長が引退を表明。新人5人による選挙戦となった。
◆立川市長選挙立候補者
立候補したのは次の5人。
清水市長から後継指名を受けたのは清水孝治・自民党都議。自民党が推薦している。清水市長と同姓だが、血縁関係はないらしい。
また、4年前清水市長にわずか257票差で敗れた酒井大史・立憲民主党都議も立候補。「特定のイデオロギーの対決にしたくない」と政党に推薦は求めていないが、立憲民主党の市議や共産党が自主的に支援している。
東京都議会の立川市選挙区の議席は2。今回、議員が2人共辞職してしまうという異常事態となった。これに関しては10月6日告示15日投票の日程で補欠選挙が行なわれることになる。
市議を5期務めている伊藤大輔市議が3人目の候補者として立候補。もともと立憲民主党に所属しており、4年前は酒井候補を支援。現在は自民党会派に所属している。国民民主党と都民ファーストの会が推薦している。
さらに、“独自の戦い”の候補者も2名名乗りを上げている。
金村誠候補は、YouTuber「羽田ゆきまさ」として活動。統一地方選では大田区議選に立候補し最下位に終わっている。妻に娘2人を連れ去られ、共同親権を主張しているらしいのだが、選挙ポスターに「私は妻からのDV被害者です」と記載。「DV妻の虐待音声公開」とあるQRコードや、妻の顔写真を掲載していた。(ただし、私自身が見たポスターは別のものであった。)そのため名誉棄損に問われ、現在東京拘置所に拘束されている。つまり、獄中立候補ということになる。
野口園子候補は会社役員。経歴を見ると、在宅託児有償ボランティアグループ「マザーズネットワーク」や、「ココロ・カラダ・ゴハンと地球」をテーマにした「株式会社マザーズ」を設立。社会貢献事業を主軸にセミナー講師、心理カウンセラー、業務サポートに携わっているとのこと。
選挙公報を見ると、野口候補もまた、DV夫からシェルターに子供たちを連れて避難した経緯があるとのこと。
実質的には清水、酒井、伊藤の3候補による三つ巴の戦いとなっている。
先にも述べたように前回はわずか257票差で与党系の清水市長が当選している。もともと地元選出で人気のある長島昭久代議士が野党から与党に転じたことが勝敗を決めたとも思われるのだが、今回はどうなるだろうか。鍵を握るのは伊藤候補。与党、野党どちらにも近い人材として、今回の市長選でも台風の目となりそうな予感である。
◆立川市長選挙ウォッチ
立川市長選挙をウォッチした。
立川駅北口で、酒井大史候補の街宣が行なわれていた。泉房穂・前明石市長が応援に来ているとかで、かなりの人だかりであった。
関西弁でまくしたてる泉前市長。確かに話は上手いし、聞いていて納得がいく。酒井候補は前回257票差で落選したが、泉前市長も初当選の際は69票差の勝利だったそうだ。本当は酒井候補の話も聞きたかったのだが所用もあったので、取りあえず一旦その場を離れた。
20分後にその場に戻ると、相変わらず泉前市長が話していた。
ようやく酒井候補にマイクが渡ったかと思うと、すぐにまた泉前市長が話を引き取って話し続ける。
結局、酒井候補の話はほとんど聞けず、明石市の話ばかり聞かされる羽目になった。本当は立川市の話を聞きたかったのだが…。酒井候補もわざわざ来てくれた泉前市長への遠慮もあったのだろうが、これでは正直どっちが候補者だかわからない。応援どころか逆効果にすらなっているように感じた。
立川駅南口では自民党推薦の清水孝治候補の街宣を聞いた。こちらにも自民党の小田原潔代議士、平将明代議士が応援に来ていた。
さすがに泉前市長とは違い、マイクを握ったら離さないなんてことはなかった。
この酒井候補、清水候補の両名が熱戦を繰り広げており、どちらが勝つのかまったく予想がつかない。
そして、台風の目となるのではと私が予想している伊藤大輔候補。陣営の人たちがビラを配っているのは見かけたのだが、候補者自身はいなかった。聞いてみると、伊藤候補自身は自転車で付近を回っているのだという。
ただ幸いにも、伊藤候補には告示前に立川駅南口で会っている。48歳というのは当選すれば市政史上最年少の市長となるとのことだ。
他の2名の候補者にはまったく会うことが出来なかった。もっとも金村誠候補は東京拘置所からの獄中立候補であるので、会うことはそもそも無理なのかもしれないが、野口園子候補についても同様だった。これではさすがに当然は難しい。
◆2019年立川市長選挙結果
前回、2019年の市長選挙の結果はどうだったのか。投票率は34.74%だった。
このようにわずか257票差で現職の清水庄平市長が当選している。もともと立憲民主党所属だった長島昭久代議士が自民党に移籍し、かつての側近である酒井大史候補でなく清水市長を応援したのが大きかったのではないだろうか。
◆立川市長選挙開票結果
9月3日、立川市長選挙が投開票された。
結果は次の通り。
投票率は37.15%で、前回の34.74%を上回った。
実質的な三つ巴の戦いを制して、酒井大史・前都議が勝利。初の当選を決めた。酒井候補は4年前はわずか257票で破れていたが、見事雪辱を果たすことに成功した。
自民党推薦の清水孝治・前都議は、惜敗。自民党と公明党の関係が悪化。公明党が自主投票となった事の影響もあったのかもしれない。
また、第3の候補の伊藤大輔・前市議が健闘。伊藤候補は自民党系であったことが、清水候補への逆風となったのかもしれない。
独自の戦いの2候補は供託金没収の惨敗だった。特に獄中立候補の金村誠候補の惨敗ぶりは、例え市議選でも当選出来ない程だった。
市長選の開票速報はネットでチェックしていた。21:30に最初の発表があり、開票率7.92%の時点で、酒井、清水、伊藤の3候補が道標で並ぶ。
やはり接戦であった。
22:00発表では、開票率72.17%。酒井、清水両候補が抜け出した。
しかし、両者は相変わらず同数の激戦。
10時29分に確定した。伊藤候補はそこからほとんど票が伸びなかったようだ。
立川で非自民の市長が当選するのは1971年以来52年ぶりだという。こうした野党系首長は多摩市の阿部裕行市長(4期)、武蔵野市の松下玲子市長(2期)、小平市の小林洋子市長(1期)に次いで4人目となる。野党系首長の強みというのは、政府に阿ることなく思い切った政策を取ることが出来る点である。酒井新市長にも思い切ったかじ取りで立川を導いていくことを期待したい。
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