ダウンロード__11_

電通ハニカムモデルと「アタックZERO」

 商品やサービスの価値を可視化したフレームワーク「電通ハニカムモデル」を検索すると、意外にも情報量が少ない。適当なページを見出すのに苦労する。何せ検索結果の1位は電通ハニカムモデルを応用した「電通ファンドレイズ・ハニカムモデル」、2位は電通の佐藤剛介氏が寄稿したPDFだ......。この何故か闇に包まれたフレームワーク「電通ハニカムモデル」を、花王が10年の開発を費やしたと言われる大型商品「アタックZERO」を用いて勝手に検証してみたいとおもう。

↑佐藤剛介氏「強いブランドを作るコミュニケーション」より図を引用

「電通ハニカムモデル」は、上図にある通り7つの要素と階層がある。階層が成り立つ順番を私なりに解釈すると、下から「Ideal Customer Image 」がいわゆるペルソナで、商品やサービスを作る原点となる理想の消費者像があり、次にそのペルソナに提供すると喜ばれる商品やサービスの「Functional Benefit」機能的ベネフィットと、その機能的ベネフィットを享受することで得られる「Emotional Benefit」情緒的ベネフィットがあり、ペルソナとベネフィットをつなぐコンセプトが「Core Value」と定義付ける順番となる。「Core Value」「Functional Benefit」「Emotional Benefit」の3つの要素はまさにブランドの土台であり、土台が固まった後、その土台の養分を吸い上げて創られた「Symbol」となる商品やサービスがあり、土台の信頼できる根拠となる「Base of Authority」がある。これらが仕上がった段階で、最後は再び下に戻り商品やサービス自体の性格を示す「Personality」を決めて、いわゆるトンマナを固める。

「アタックZERO」にあてはめるとどうなるか?
「アタックZERO」は2019年4月発売なので、あくまでWeb サイトの情報のみで判断すると、「汚れ」「ニオイ」「洗剤残り」ゼロの「究極のきれい」を叶える開発10年を費やした商品だ。

「アタックZERO」のコミュニケーションターゲットは、基本的には洗濯に時間を割きたくない共働き世帯、一人暮らし、子育て世代、楽をしたいシニア世代と多岐にわたる。その中でも、戦略的に敢えてペルソナを決めるとすると、洗濯に時間も手間もかけたくない子育て世代の共働き世帯となるだろう。
次に、そのペルソナに提供すると喜ばれる「Functional Benefit」機能的ベネフィットは、「ワンハンドプッシュ」と謳う片手で簡単に計量して投入できる機能、それを実現するスタイリッシュで軽いボディ、ドラム式洗濯機にも対応した専用洗剤、花王史上最高と謳う吸湿速乾・保温・形状記憶などの新たな化学繊維にも対応した「汚れ」「ニオイ」「洗剤残り」をゼロにする洗浄技術だ。
その機能的ベネフィットをペルソナが享受することで得られる「Emotional Benefit」情緒的ベネフィットは、片手でプッシュするだけなので手を汚さずに時短できそう、スタイリッシュでなんとなく置きたくなる、洗浄技術がすごいから洗濯の失敗を一切心配しなくて済みそう、だろう。
そして、ペルソナとこの機能的・情緒的ベネフィットを持つ商品をつなぐ「Core Value」は「究極のきれい」「新時代のお洗濯」もしくは私流に表現するとベタであるが「片手間なお洗濯、ひと片付け」かもしれない。
この土台の上に「Symbol」となる「アタックZERO」が登場し、信頼できる根拠「Base of Authority」は「花王」そしてNo.1シェア「アタック」が持つ歴史と信頼であろう。
最後に下に戻りこの商品自体の性格を示す「Personality」を決めるとするならば、多様性(ダイバーシティ)にも容易に溶け込む新世代の柔軟性ではないだろうか。

 このように「アタックZERO」は明確な特徴をもった商品であり、「ワンハンドプッシュ」で簡単に計量して投入できる機能、それを実現するスタイリッシュな軽量ボディ、花王史上最高と謳う吸湿速乾・保温・形状記憶などの新たな化学繊維にも対応した「汚れ」「ニオイ」「洗剤残り」をゼロにする洗浄技術があり、その機能的ベネフィットの享受を通じて手を汚さずに時短できそう、スタイリッシュでなんとなく置きたくなる、洗濯の失敗を一切心配しなくて済みそう、という情緒的ベネフィットが得られる。このベネフィットとペルソナの関係を表現するコンセプトは「究極のきれい」(「新時代のお洗濯」「片手間なお洗濯、ひと片付け」)となる。これだけ整った特性をもつ商品が売れないはずがない、と門外漢である私は思う。

 以上、電通ハニカムモデルを「アタックZERO」をネタにして検証してみたが、なぜ「アタックZERO」なのか、おそらくPRの力に心躍らせれているからかもしれない。「アタックZERO」は4月に発売予定であるが、新元号に切り替わり気分も一新するタイミングでの堂々たる登場にどれだけのインパクトを持ってマーケティングが展開され売上が伸びるのか、そしてP&Gのブランドマネージャーはどんな手を打ち出すのか、マーケターとして注目せずにはいられない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?