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堀川・さくら夢譚8

清須の五条川にかかった木造の橋をそのまま移したもので、名称もそのまま“五条橋”としている。上流から五条橋、中橋、伝馬橋、納屋橋、日置橋、古渡橋、尾頭橋と橋が架けられ、これらは後に“堀川七橋”とよばれた。名桜は、故郷の橋が果たしてそのまま架けられたのか、その姿を目で見て、父・源右衛門に伝えたかったのだ。名桜は佐平次を伴い、橋板まで歩いてくると、橋の擬宝珠に目を向けた。五条橋の擬宝珠は、鋳物師・二代目水野太郎左衛門によるものといわれ、擬宝珠には“慶長七年”の銘が刻まれている。昭和十三年に架け替えられた現在の五条橋にはレプリカの擬宝珠がほどこされているが、このとき名桜の手はその感触をしっかりと確かめたことだろう。  さて、しばらく佇んでいた名桜が歩き出したかと思うと、ふと、橋のたもとでしゃがみこんだ。

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