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誰のためのデザイン?を読んで考えたこと(2) 第1章:毎日使う道具の精神病理学

第0回を書いてから随分時間が経ってしまって本当に情けないが、表題の連載の第1弾を書こうと思う。まだ自分のキャラをどのようにしていくか決まってないので、非常にニュートラルな文体でスタート。第9回とかでめちゃめちゃフランクになってるかもしれないがおつきあいいただきたく。

※このnoteは以下の本 の内容を要約、引用しながら自分のデザインに対する考え方を深めるためのものです。今気づいたんだけど2015年に増補版が出てた。。そっちを読むべきだったかも。

https://goo.gl/FchQSE

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第1章:毎日使う道具の精神病理学

この本は90年に初版が出版されている。この時代背景もあって、当書はデザイン=工業デザイン、リアルな製品をデザイン・開発するビジネスを前提にして作成されている。しかし、その哲学や考え方は、ソフトウェアのデザインについても十分に当てはまっている。

本章は、当書で使われる非常に重要な複数の概念を定義しているので、それをまとめる。


(1)自然なデザイン
筆者が「この本を通してこのアプローチを詳細に説明していきたいと思う。」(P6)と言及しており、当書の最も重要な概念。「自然なデザイン」を達成するために、(ⅰ)人間がどのように認識するのか、(ⅱ)この認識を前提として自然なデザインがどのような概念や要素で構成されるのか、(ⅲ)これを達成するためにはどのような原則を守る必要があるのか、を当書では説明していく。

自然なデザインとは、ある製品やサービスにおいて、以下の状態が達成されているように設計されていることである。その状態とは、ある製品やサービスを初めて使う主体(人や動物)が、目や耳、匂いなどの感覚器官を使って、製品/サービスのシグナルを読み取り、あるいは制約や対応づけを読み取り、その「予想」に沿って行動/操作をすれば、主体が達成したい状態に達している、というものである。

とてもややこしいが、要するに「(無意識下に)あーこうするんだろうな」「こうすれば良さそう」と思ってそのように行ったら、勝手に自分の達成したいことが起こってる、というようなデザインであろう。

なお、ここで言う製品/サービスは、(文中では明示されていないが)単なる一つのリアルな商品やサービス(例えばMacBook)だけを指しているのではなく、その製品/サービスに対して利用主体が持っているイメージや認識、広く言えばその製品/サービスのエコシステム全体(例えばMacBookは六本木のカフェで開いてそう、デザインがカッコイイ、エンジニア/デザイナーっぽい、みたいな認識)を包含していると思って読んだほうが良さそうだ。

(なお、当書の内容とは全く関係ないが、この文書を書きながら、「デザインとはコミュニケーションである。「ユーザーとの」という意味ではデザインとはマーケティングであるとも言えそう」という命題を思いついたので、いつか書いてみたい)

自然なデザインの例:コンビニ入口前の横断歩道
私の出身地である熊本の田舎のコンビニの入口前には、横断歩道のような模様が描かれてた。いつもなんでそこに横断歩道があるのか謎だった。

コンビニの立場では、店の入口に車を置いてほしくない。これを目的として自然にデザインすると、(1)人間の動線である、(2)(ということは)車はそこにはおいてはいけない(たとえ入り口に一番近くて便利だとしても)、(3)だから横断歩道のような模様(決して横断歩道ではない)を入口前に描いておけば、自然と駐車されないんじゃないか、となったのではないかと考える。

(2)概念モデル
製品/サービスの利用主体が、その目的に即して当製品/サービスを見たときに、どのように機能するのか、と「勝手に」考えた機能/システムのこと。当書内でも重要度最高ランクの概念だと思う。

この概念モデルを構築するために必要なのが、(3)以降で説明するアフォーダンス、及び制約と対応づけである。アフォーダンスは、デザインにより意図的/無意識的につけられた「こうすれば良さそう」というシグナル、制約は、物理的/常識的にここまでしか稼働しない(例えば画面以上の遷移は無理とか)という条件、対応づけは、したいこととできそうなことが紐付けられてること、である。

(3)アフォーダンス
デザインの世界では非常に有名な概念(らしい)だが、定義が結構難しい。要するにシグナル=こうできそう、ここを押せそう/引けそう、タップ/スワイプできそう、ということだと置き換えて差し支えなさそうだ。例えば、紙とペンが電話のそばにおいてあれば、その紙とペンはメモすることをアフォードする=シグナルを発している、ということだろう。

(4)対応づけ
ある操作と、結果(の予想)の紐付けのこと。例えば、ツマミを上に回すと音量が上がる、上にスワイプすると画面は下に遷移する、などが良い対応づけの例だろう(これが逆になってしまうと悪い対応づけとなるのは予想のとおり)。

(5)フィードバック
これもデザインの世界では常識に近い概念だろうが、「どのような行為が実際に遂行され、どのような結果が得られたかに関する情報をユーザに送り返すこと」(P41)である。要は、そもそも自分の行為は有効であったのかなかったのか、自分がやりたかったことが合ってたのか合ってなかったのか、合ってない場合は正しい行為がわかるのか否か、で構成されていると考える。

以上、当書を読み進める上で重要な概念を整理してきた。この上で、筆者は、「よい概念モデルを提供すること。よい概念モデルがあると、私たちは自分の行為の結果を予測できるようになる。」(P21)という。またそれを「目に見えるようにすること」(P26)は、利用者が概念モデルをうまく形成するために重要である、と述べている。

目に見えるようにすること=可視性については当然重要だが、特に当書では(高性能)電話機等、ディスプレイはないがリダイヤル等ができるような製品が出ている時代背景があることも考慮する必要があると思う。(後の章では出てくるが)当然可視性だけではなく、その他の感覚を使うことも、よい概念モデルを提供すること、に対して寄与できる。

「よいデザインをすることは容易なことではない」(P43)と筆者は言う。だから、「本当によいものを作るには普通、五回か六回試みる必要があります」(P45)という。インターネットのサービスでよく言われるプロトタイプを作ってユーザーに使ってもらってその意見を拾って改善する、というやり方がとても有効であるのだろう。

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思った以上に内容文体ともに硬いが、新入社員がびしっと決まったスーツで入社式を迎えて、どんどん自分なりの服のスタイルを作り出していくような感じで、暖かく見守っていただければ嬉しい限りである。

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