見出し画像

長いOODAと短いOODA、そして捨てる勇気


はじめに

こんにちは、IkuOODAnakaです。今回はスクラムチームにおいてどのようにOODAを実践しているか書いていきます。

OODA

ご存知の方が多いかと思いますが、OODAの基本についておさえておきます。迅速な意思決定のためのフレームワークで、軍事戦術をルーツに持ちながら今日ではビジネスの領域でも活用されています。

  1. Observe(観察)

  2. Orient(方向づけ)

  3. Decide(決定)

  4. Act(行動)

OODA「ループ」って言われてるけど単純なループではない

LayerX @sh_komineさんのスライドでは「Observeが最重要」とされていますが、判断する上で収集した情報の質・量は重要な役割を果たすので、私も同意見です。

スクラムとOODA

スクラムマスターにとって重要な職務の一つが観察。まさにOODAの起点です。スクラムでは透明性、検査、適応を三本柱として経験から学び変化に適応していきます。観察して状況判断して意思決定して行動するOODAと似ている部分があるなぁ、と個人的には感じています。

長いOODA

Observe対象をスプリント全体としてOODAを活用するケースを、ここでは「長いOODA」と呼ぶことにします。

Observe対象をスプリント全体とする長いOODA

スプリント中にチームに発生していること、チームの周辺で起こっていること、起こっている変化を観察します。

私はスプリント中の観察状況を踏まえ、毎スプリント異なるふりかえり手法を採用しています。(下記資料でも言及しています)

スプリントというそれなりの長い期間を観察対象とし、そのスプリントのふりかえりでどのような手法を用いると効果的か状況判断し、意思決定し実行しています。

短いOODA

観察対象を今この瞬間にこの場で起きている事象に限定するケースを、ここでは「短いOODA」と呼びます。プランニング、デイリースタンダップ、日々の開発、他のチームとのミーティング、レビュー、そしてふりかえり。そのイベントの中で観察し、判断していきます。

このとき、実は日頃行っている「長いOODA」の情報も貴重な情報源となってきます。
その場で起こっている事象に対して、大きな流れの中で気にするべきことか一時的なものとして受け流すか判断する。
これまでのコンテクストを考慮して、その場の学びを最大化するようアレンジする。

長い時間軸のOODAでの蓄積が、短いOODAにおける瞬時の判断の精度を高めてくれると実感しています。

短いOODAを機能させるには捨てる勇気を持つ

そして、この短いOODAを機能させるためには、捨てる勇気を持つことが大切です。もともと想定していた前提から大きくズレてきたので用意しておいたAgendaを捨て、新しく仕切り直す。当初用意していたふりかえり手法がフィットしないので、別の方法でやりなおす。

最近、実際に私が体験したOODAによる準備の棄却を紹介します。

あるスプリントのふりかえり前日。チームの状態は非常に順調で、関係性も良好。ただ、お互いの間に少し遠慮があるように感じられました。
これは胸の内に秘めた課題を共有する「象、死んだ魚、嘔吐」で課題意識を吐き出してもらうのがよいだろう、と思い、このワークの準備を進めました。
ふりかえり当日の朝。「最近開発スピードが上がってきた。だからこれまで気にしていなかったビルド周りでいろいろ気になる事が出てきた」という話でチームが盛り上がっていました。私はFigjam上の「象、死んだ魚、嘔吐」をそっと下のほうへ追いやり、目指すところへ向かうためのアイデアを出すのに役立つ「熱気球」のワークの準備をしました。
ふりかえりの時間がやってきました。熱気球のワークの説明をして、みんなが気にしているビルド回りについて話してみませんか、と提案をしました。悪くなさそうなリアクションでしたが、他に話してみたいことがありそうだというのがMeetごしにも伝わってきました。
そこで、「もし、すでに試してみたいアイデアが具体的にあったり、みんなで話し合いたいテーマが明確にあるなら、熱気球はまたの機会にしてそちらを優先してもよいとおもうのですがどうでしょう。」と提案し、実際にそちらを話し合う時間に変更しました。
結果としてチームがやるべき具体的なアクションがいくつか出てきて、有意義な時間を過ごすことができました。

捨てる勇気をもつには武器を引き出しに潜ませておく

そう、短い時間の間に二回、準備していたことの破棄を実施したわけです。準備にしっかり時間をかけている場合、なかなかそれを破棄するのはためらわれるところです。けれども私は一切のためらいなく破棄する選択をしました。
なぜそれができたか?それは、ふりかえりの準備を「自分にとっては手間にならない」状態にしていたからです。
どういうシチュエーションでどういうふりかえりが有効なのか把握しておく。その方法でふりかえりを実施するために必要な準備を理解しておく。
このポイントをおさえておいたので、「これは違う手法にしたほうがいいな」と感じたときにさっと変更することができたのです。
そして、目の前のふりかえりだけでなくもう少し長い時間軸でチームを観察してきた記憶があるから、自信をもって目の前のふりかえりでの意思決定を行うことができたのです。

OODAを機能させるには、瞬間瞬間での意思決定が重要になってきます。そのためには自分の準備を捨てる勇気が必要となる場面もでてきます。そのときにためらわず準備を投げ捨て、観察から方向性を見出し行動していく。その経験を積み重ねることで、あなたはOODAな意思決定を自分の強力な武器とすることができるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?