悪魔の羽根 2
「だ、誰だ、お前・・・どうやって中に・・・」
年齢は僕と変わらないか、少し上だろう。長い前髪が顔の半分を隠しており、どんな顔をしているのかはわからない。ただ、口元だけが見えていて、
不快な笑みを浮かべている。服装はいわゆる喪服なのだが、胸元の黒いカラスのような羽がこれまた嫌な黒光りをして目立っている。
明らかに知らないやつだ。
(警察に・・・)
こたつの上に置いたままのスマホを取り上げて外に逃げようとした。
『無駄だ。』
画面は真っ黒なまま、いくらタップしても反応しない。ボタンも同じだった。
(ならば外に行けば・・・)
玄関のドアにたどり着き、ノブに手をかける。
「あ、あれ?」
どんなにひねってもビクともしなかった。形だけの舞台のセットのように、ノブは固まって動かなかった。
振り返ると、やつは音もなくすぐ背後に忍び寄っていた。
『私の能力の一つだ。私の指定した範囲において、いかなる物もいかなる者も邪魔も進入することはできない。
中にいる者は、私が力を解除するまで外に出ることはできない。』
僕はただそいつの話を聞くことだけしかできなかった。
『お、ダウンロードが終わったようだな。』
そいつの視線は僕の左手にあった。スマホの画面を見てみると、いつもの待ち受け画面に戻っていた。
いや、一つ覚えのないアプリが増えていた。
『起動しろ。』
さっきも表示されていた黒い羽がアイコンだった。言われるがままにタップした。
ボンッ
何かが破裂したような音と、アニメキャラが消えるときに出る、わかりやすいモクモクした白い煙がやつのいた場所でわき上がる。その煙でそいつの姿は完全に見えなくなった。煙が消えて視界が良好になったとき、そいつの姿は消えていた。
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