ポーカーチェイス序中盤のオールインに対する対応

ポーカーチェイスでは、トーナメント形式のポーカーでプライズではなくレーティングを奪い合います。最下位より5位のほうがよく、5位より4位のほうがいいです。さらに、3位以上であればレーティングが必ずプラスになるという仕様から、順位をあげることによるレーティングの増加はほぼ線形だと考えられます。つまり、6位から5位になる価値と2位から1位になる価値が同じはずです。

今回は、ポーカーチェイスでのオールインを迫られるスポットをとりあげ、どのようなハンドでならコールできるかをICMから判断したいと思います。

2021/9/27追記
luck0さんのコメントでのご指摘どおり、スポット②以降の計算を間違えていました。大変申し訳ありません。noteでは打ち消し線ができないみたいなので、
スポット②以降の記事の内容そのまま修正してしまっています。
修正前の記事:https://archive.fo/ZOcPN

ICMとは

ICMとはIndependent Chip Modelのことです。トーナメントポーカーの入賞間近で、相手のオールインにオッズ的にはコールできるハンドだけど、このままフォールドし続けて他の人に飛んでもらいたい、という状況のときに役に立つ概念です。

詳しい計算方法はPoker道さんがおすすめです。
https://www.pokerdou.com/tournament/icm/

ICMの計算にはこちらのサイトを使います
https://www.icmpoker.com/icmcalculator/

ポーカーチェイスでは入賞がないので、常にこのままフォールドし続けて他の人に飛んでもらいたいという状況になります。

前提

冒頭でポーカーチェイスのレーティングは順位に線形に増加するという仮定を置きました。今回計算するにあたり次のようにします。

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さらに、レーティングは相対的なものなので、6位の-20ptを基準に、0ptから+40ptまでの8pt刻みとします。

スポット① 最序盤のオールイン

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ポーカーチェイス最序盤のブラインド100/200/50を$1/$2/$0.5で表現しています。UTGが3BBでオープンレイズし、BTNからスリーベットしたらフォーベットすっとばしてオールインが返ってきたとします。どのようなハンドならコールできるでしょうか。

フォールドした場合こちらは$85.5残し続投します。
https://www.icmpoker.com/icmcalculator/#TaAk

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コールして勝った場合、 スタックは$205となります続投します。
https://www.icmpoker.com/icmcalculator/#znfS

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フォールドしたときの変動R期待値は+18.19で、コールして勝ったときの変動R期待値は+29.60です。当然ですが、コールして負けた場合、その時点で最下位が決まり、変動Rは6位基準で+0です。

つまり、コールが正当化されるためにはハンドの勝率が 

コールしたときのR期待値 > フォールドしたときのR期待値
勝ったときのR期待値 × ハンドの勝率 + 負けたときのR期待値 x ( 1 - ハンドの勝率) > フォールドしたときのR期待値
29.60 × X + 0 × (1 - X) > 18.29 
X > 0.618

61.8%必要です。では、どのようなハンドが61.8%以上の勝率(ここでは簡単にエクイティとします)を持つでしょうか。それは相手がオールインするハンドによって決まります。

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すべてのポケットペアとAKでのみオールインする場合、AKsは46.3%しかなくコールは論外です。TTも59.6%で届いていません。JJで初めて63.7%を超えます。したがって、このレンジで相手がオールインしてくる場合、JJ+のビッグペアでのみコールすることが理に叶います。

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88+でのみオールインする場合、QQですら60.0%で必要勝率に届きません。KK+でしかコールできません。現実的なラインはここですかね。

スポット② ショートがいる中盤のオールイン

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中盤、一人シートアウトしてブラインド$5/$10/$5だとします。ティルトしているプレイヤーが頻繁にオールインしてきますが、今にも飛びそうな人も1人います。

フォールドした場合$85になり、変動R期待値は+22.86です。
https://www.icmpoker.com/icmcalculator/#hDRJ

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コールして勝った場合$210になり、変動R期待値は+31.90です。
https://www.icmpoker.com/icmcalculator/#pUwZ

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コールして負けた場合その時点で5位が決まり、変動Rは6位基準で+8です。

31.90 × X + 8 × (1 - X) > 22.86
X > 0.622

必要勝率は62.2%です。

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もし相手が3回に1回、上のレンジのようにオールインしているとすると、AKo,AQs+,TT+が必要勝率を満たすコールレンジになります。

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AQsが62.7%の勝率がありぎりぎりコールできます。99は61.1%でぎりぎり期待値がマイナスです。今にも飛びそうな人がいる状況下でのオールインコールは、相当強いハンドでないといけないことがわかります。

スポット③ ショートがいない中盤のオールイン

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スポット②の飛びそうだったSBが$100もつようにしました。コールできるハンドはどのように変化するでしょうか。

フォールドした場合$85になり、変動R期待値は+20.83です。
https://www.icmpoker.com/icmcalculator/#DvtN

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コールして勝った場合$210になり、変動R期待値は+30.88です。
https://www.icmpoker.com/icmcalculator/#fzAK

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コールして負けた場合その時点で5位が決まり、変動Rは6位基準で+8です。

30.88 × X + 8 × (1 - X) > 20.83
X > 0.561

先程より必要勝率は少し下がり56.1%になりました。これは、ショートがいないとき、オールインに対してある程度強いハンドでなら戦ってもいいことを意味します。それでもまだまだタイトです。相手のレンジが②と同じだとすると、コールレンジはATo+,ATs+,88+です。

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KQsは一見プレミアハンドに見えますが、Aハイ全てに負けているため、勝率は53.4%しかありません。実践で見誤らないようにしたいですね。

スポット④ 自分よりショートがいる中盤のオールイン

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スポット②で自分のスタックを少しショートにしました。

フォールドした場合$50になり、変動R期待値は+19.15です。
https://www.icmpoker.com/icmcalculator/#gBKe

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コールして勝った場合$150になり、変動R期待値は+28.50です。
https://www.icmpoker.com/icmcalculator/#pUxa

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コールして負けた場合その時点で5位が決まり、変動Rは6位基準で+8です。

28.50 × X + 8 × (1 - X) > 19.15
X > 0.544

必要勝率は54.4%とスポット②と比べて10%以上低くなりました。コールレンジはスポット③のものにA9sと77を加えたものです。

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これは逆に、自分がショートではないスポット②ではオールインコールのための必要勝率が10%あがり、いかにコールしづらいかを際立たせる例だと思います。

スポット⑤ 自分と同じくらいのショートがいる中盤のオールイン

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最後に、自分もショートの場合を考えてみましょう。どのレベルのハンドであれば勝負にいけるのか。

フォールドした場合$20になり、変動R期待値は+14.41です。
https://www.icmpoker.com/icmcalculator/#znfU

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コールして勝った場合$90になり、変動R期待値は+23.96です。
https://www.icmpoker.com/icmcalculator/#hDRL

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コールして負けた場合その時点で5位が決まり、変動Rは6位基準で+8です。

23.96 × X + 8 × (1 - X) > 14.41
X > 0.402

必要勝率は40.2%で、今までと比べるとかなり広いハンドでコールができます。しかしたった2BBしかスタックが残らない状況であっても、約3回に2回下位63.8%のハンドではコールができないのです。このことから、1つ順位をあげることの価値がポーカーチェイスでは比較的高いことが頷けます。

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まとめ

序中盤のオールインのスポット5つについてICMを用いてコールできるハンドレンジを計算しました。修正前のプレミアハンドでしかコールできないという結論を導いたときよりもずっと直感的なものになりました。それでも依然としてタイトめだと思います。

改めて修正前の記事読まれた方には申し訳ないです。今回の記事がポーカーチェイスでのオールインに対する対応の基準になれば幸いです。


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