調号をみれば調がわかる
調号をみれば、何の調なのかが簡単な方法で分かります。♯や♭がいくつあってもへっちゃらです。最小限のことだけ覚えればよく、丸暗記や語呂合わせは必要ありません。
その方法の説明には、階名を使います。階名というのは、調の主音を「ド」とする音の呼び方です。
(階名について詳しくは、このリンク中の『■2本目の柱 移動ドで感じて歌う』にありますが、とりあえずはこのまま以下をどんどん読んでください。)
■調号から調がわかる方法
調号の♯や♭は「その音が階名で何の音になるのか」を示しているので、そこからたどって調がわかります。覚えることは「シ」と「ファ」だけです。この後、例で示します。
シャープ系の場合 一番右の♯が階名の「シ」
フラット系の場合 一番右の♭が階名の「ファ」
調がわかるには
▼例1
♯が階名で「シ」、そこから半音上がると「ド」
→ Gの音が「ド」だからKey=G(ト長調)
絶対的な音の高さを表す名前(音名)は以下のとおりです。「ド」の音をこれらの音名で呼んで調の名前に使います。
▼例2
一番右の♯が階名で「シ」、そこから半音上がると「ド」
→ Dの音が「ド」だからKey=D(ニ長調)
▼例3
♭が階名で「ファ」、そこから「ファミレド」と下がると「ド」
→ Fの音が「ド」だからKey=F(へ長調)
▼例4
一番右の♭が階名で「ファ」、そこから「ファミレド」と下がると「ド」
→ B♭の音が「ド」だからKey=B♭(変ロ長調)
なお、日本の音名の黒鍵は「嬰(えい)」が♯、「変(へん)」が♭の意味です。明治以降に西洋音楽の言葉を日本語化するときに、雅楽などで同じような意味で使われている言葉を当てはめたようです。
ちょっと親しみにくいですが、「上下」とか「昇降」などより「嬰変」の方が風情があるような気がします。とりあえず「変」には慣れましょう。調として「嬰」よりも出番が多いです。
上記の「シ」と「ファ」で調を見分ける方法は、中学校の音楽の期末テストの勉強時に母から教わりました。目を三角にして取り組んだ音楽のテストは、結構辛かったものです。母は、さらに昔、自身が中学校の時に習ったのを覚えていたようで、理由はわからないままやり方だけを教えてくれました。
その後、私は理由がわからないままにこのやり方を便利に使い続けていましたが、大人になってピアノを再開して五度圏というものに出会ったとき、ひょいとその理由がわかりました。以下は、ちょっと長くなりますが、興味のある方はぜひご覧ください。
■五度圏と調号のしくみ
五度圏(ごどけん)は、音を5度おきに円状に並べたものです。「圏」がちょっと違和感ありますが、「丸」「輪」のような意味があるようです。この五度圏を使うと、調号がきれいに整理できます。
Key=Cから出発して、時計回りに進むごとに♯が増え、C→G→D→A … のように調が5度ずつ上がっていきます。逆に、反時計回りでは進むごとに♭が増え、C→F→B♭→E♭ … のように調が5度ずつ下がっていきます。
■五度圏を時計回りにまわる
調号が五度圏できれいに並ぶことを、実際に確認していきます。例として、五度圏を12時から1時にまわる「Key=Cを5度上げて、Key=Gを作る」をやりましょう。ぜひ、お手元の鍵盤で確認してください。
①Key=Cのメジャースケール
▼まず、Key=Cの「ドレミファソラシド」からスタートです。
▼間に黒鍵のあるところとないところがあります。黒鍵のあるところは全音(=半音2個分)、ないところは半音です。Cから始めて「全全半全全全半」と弾くと、次のCまで届きます。
②1〜4番目の音を後ろに持っていく
▼(Cから数えて)1〜4番目の音を、単純に後ろに持っていきます。Gからスタートで鍵盤で弾くと …
▼最後の音がヘンですね。
①Cスタートだと、最後が「全全半」
②Gスタートだと、最後が「全半全」
と違っているので、ここをなおしていきます。
③最後の音を半音上げる
▼最後(Gから数えて7番目)の音を半音上げて、「全全半」にします。
白鍵+黒鍵の全音は、ちょっと遠いので指を伸ばす感じです。
③で出来上がったのが、Key=Gの「ドレミファソラシド」です。7番目の音は、半音上がって、つまり、♯が付いて「シ」となりました。
この手順で「全全半全全全半」をさらにくり返して、順に5度上のメジャースケールをD…、A… と作ることができます。鍵盤が足りなくなったら、何オクターブか下がってそこから始めればよいです。
一番右の♯が階名の「シ」となる
上の手順では、C →G →D →A …と調が5度上がるたびに、前から後ろへもってきた「全半全」を「全全半」にするため、調号の一番右に♯を追加して「シ」にします。順番にこのようにしていくと、一番右の♯の音は必ず調の「シ」になります。
■五度圏を反時計回りにまわる
逆もやってみましょう。例として、五度圏を12時から11時にまわる「Key=Cを5度下げて、Key=Fを作る」をやりましょう。
①Key=Cのメジャースケール
▼Key=Cの「ドレミファソラシド」からスタートします。Cから始めて「全全半全全全半」と弾きます。
②4〜7番目の音を前に持っていく
▼(Cから数えて)4〜7番目の音を、単純に前に持っていきます。Fからスタートで鍵盤で弾くと …
▼(Fから数えて)4番目の音がヘンですね。
①Cスタートだと、最初が「全全半全」
②Fスタートだと、最初が「全全全半」
と違っているので、なおしていきます。
③4番目の音を半音下げる
▼(Fから数えて)4番目の音を半音下げて、「全全半全」にします。
③で出来上がったのが、Key=Fの「ドレミファソラシド」です。4番目の音は、半音下がって、つまり、♭が付いて「ファ」となりました。
この手順で「全全半全全全半」をさらにくり返して、順に5度下のメジャースケールをB♭…、E♭… と作ることができます。
一番右の♭が階名の「ファ」となる
上の手順では、C →F →B♭ →E♭ …と調が5度下がるたびに、後ろから前にもってきた「全全全半」を「全全半全」にするため、調号の一番右に♭を追加して「ファ」にします。順番にこのようにしていくと、一番右の♭の音は必ず調の「ファ」になります。
■時計回りと反時計回りは逆のこと
もうお気づきかもしれませんが、時計回りと反時計回りは逆のことをやっているだけです。試しに、Key=Gに対して、反時計回りの手順をおこなってみましょう。
これでKey=Cに戻ります。♯とか♭とか区別しなくても、同じ規則にまとめることができるわけです。シンプルになりましたね。
そして、どちら回りの手順でも「全全半全全全半」を12回くり返すと、一周まわって元に戻ってきます。
ただし譜面上は、♯や♭が増えると複雑になります。黒鍵は5個しかないので、次第にE♯、C♭、♯♯、♭♭なども加わってさらに複雑化します。そのため、実用上、♯はC〜F♯、♭はF〜G♭で使われることが多いようです。
以上が、五度圏と調号のしくみです。文末に、五度圏の全体図を添付します。
■短調のとき
ここまでの話は長調での話なので、短調ではちょっと読み替えが必要です。
同じ調号に対して、「ド」から短3度下(半音3個分下)の「ラ」からはじめて「ラシドレミファソラ」が短調となります。
例えば、“♯や♭のない調”は、長調ならKey=C(ハ長調)ですが、短調なら短3度下のAからはじめて、Key=Am(イ短調)です。※下記の図中は小文字で「a」と記載
長調か短調かは、「全体的に暗い感じ」とか「曲の最後がラで終わる」などから判断します。
【参考】五度圏と調号 全体図
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