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黒いマスク事件〜本編

泥棒猫です。

黒いマスク事件の本編を、書きそびれて今日まで来てしまった。

序奏~トリガー編~はもうお忘れのことと思う。

年末年始からお互いの誕生日を、とてもやな感じで終わらせて、それでも気を取り直す日もあれば、キーって血が逆流するような日もあった。まるでジェットコースター。乱気流に呑み込まれたかのよう。コントロールできなくて、気持ちの持って行き場もなくて、辛かった。

相変わらず彼からは連絡が間遠になり、「おはよう」と「おやすみ」を九官鳥のように繰り返すのみ。悲しくなるわ。ほんと。


そうして1週間の終わり、金曜日の夕方に事件は起きた。

「やっと髪を切りに」という短文メッセージが届き、ロック画面に表示された。

「髪を切ったよ」とか、文章にしろ!と、もうなんにでも毒づきたい気分。

が、写真も添付されてるね、どれどれ。

と開いた私は「うわっ!」て思わず声を荒げたわ。

だって彼が黒いマスク姿だったんだもん。


ここで説明しよう。私の彼は、ものごっつ普通のリーマンで、トラディショナルなノーブルな男。私からしたらとてもカッコいいと思うけど、カジュアルダウンしたら一気に男ぶりが下がる、典型的日本人の50代なのよ。

黒いマスク姿は、はっきり言ってギョッとした。

なにかすごく禍々しいものに思えたの。

それで思わず

「え、黒いマスク・・・」って返信してしまった。

いつもなら「サッパリしたね!」とか「かっこいい❤」とか送るのに。

当然彼もそれを期待(冗談で言い合ってるとしても)したはず。

「こっちでは、黒いマスク、まぁまぁ多いんだよ」って返ってきた。

だから「うんうん」って私も返したけど、内心「ないわーーー」って思ってた。

さらに彼が「ダメだった?」って聞いてきたから、「ううん、びっくりしただけ」って返したの。

そしたら、次の彼の返信。それが私を逆上させたのよ。

「ま、友達にもらったんだけどね」

そう送ってきた。

はぁーーーーーーー?ともだち?ともだちって?

私はブチンっと、もうヒューズが切れたわ。

「ともだち・・・」

「それ、傷つくわ」

「やめて。傷つけないで。友達って誰?私にもう全然教えてくれないんだね、本当にやめて。傷つけないで」

と続けざまに送る。半泣きで。

だってね、「友達」って、もう私の知らないひとってことだもの。

そしたら

「○○さんだよ」って。いつもよく飲みに行ってる同業他社の人の名前を出してきた。

「いいよ、嘘つかなくても。○○さんなら、そう書くじゃん、違うから『友達』なんでしょ?もうわかったから。もういいわ」

って、私も止まらなくなった。

「私、ずっと変だと思ってた。最近出かけることも言わなくなったし、誰とどこ行くのかも全然話さないし、おうちからFaceTimeで話すこともない。出先から、スキマ時間にまるですぐ切らんばかりにしか電話くれないし。」

「だから私のお誕生日は、ゆっくり時間取って話がしたいって、私言ったよね?お願いしたよね?それを誕生日プレゼントにしてって。それなのに、部下のお祝いの食事会をその日にわざわざ入れたり、あなたのお誕生日こそはと思ってたのに、時間を聞いたら返事は夜中で、しかも無理かもしれない、予定変更になるかもって。なにそれ?なんなの?」

って、わーーーーーって文字を打ちまくった。

「本当に違うんだけどな・・・」って、辛うじて合間に返信。

でもカブせまくる私の罵詈雑言に、返す言葉なしの彼。

「いったい誰とどこで何をしているの?そう思っちゃうよ、考えちゃうよ。不安だ!!!って何回も言ってるの。寂しい!!!って、何回も言ってるのよ。」

「詮索しないように、詰問しないようにって、ずっと寂しいの我慢してた。でもさっきの『友達』でぶっ飛んだわ。『友達』ってなに?今日だってこれから誰とどこに行くかも結局教えてくれないんじゃん。」

「ごめんね、ウザいでしょ。嫌われるのも分かってる。だけどお願いだから傷つけないで。」

と送って、もう頭がクラクラになったよ、私は。


結局、しばらくして

「寂しい思いをさせて本当にごめんね。」

「前にも言ってるけど、家のこと、仕事のことで色々あって本当に余裕がなくて。○○(私)に寂しい思いをさせているのも分かっている」

「もう少し頑張れるだけ頑張る。」

「○○への気持ちは本当に変わってないからね。焦らず自爆せず、待っていてほしいと本当に思っているよ。本当にごめんね。」

「○○に甘えすぎなのかもね。ごめんね。」

ってメッセージが届いた。

私の返事は

「うん😢」のみ。


あのね、怒ってるときにそんな冷静に返されても・・・。

だけどどうしたら私は治まったんだろう。

「ごめんね、ごめんね、俺が悪かったね、愛しているんだよ、ごめんね」

と返してくれたら満足なの?


本当に私は駄々っ子だ。大馬鹿だし、キショクワルイ。

大砲をぶっ放したら、その反動で自分が後ろにひっくり返っちゃったよ。


結局数日、ぎこちなさは残るものの、また「おはよう」「おやすみ」の九官鳥やり取りを続けて今に至る私たち。

彼のおうちでいろんな出来事があるのも事実。仕事も佳境を迎えてるのもわかる。前みたいに詳しくは話してはくれないけど。

それが遠距離ってことなんだよね。会えないってことなんだよね。

だから寂しいって言ってるの。

不安だって言ってるのよ。

バーーーーーーーカ。


それもこれも、黒いマスクなんかしてるからよ。

似合ってないわ。禍々しいわ。すごく不吉よ。

だけどどうせ今日だって、黒いマスクをして出かけているんでしょう。

それが今のあなたのスタンダードなんでしょう。


八つ当たりだけど、そう思う私なのであった。


呆れますね、ほんと。






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