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『FINAL FANTASY XVI』感想ー戦争と差別、挑戦と希望ー

「FINALFANTASY XVI」(以下FF16と記載)はあのFF14を開発したスクウェア・エニックスの第三開発事業本部が中心となって制作されたファイナルファンタジーシリーズの16作品目。
壮大なスケールで展開するストーリーとシリーズ初の本格アクションが特徴的な作品。
プレイ時間はメインストーリーを進めつつ合間に出てくるサブクエ(サイドクエスト)もほぼ全部クリアしてざっと50時間ほど。
およそ2ヶ月かけてクリアしたので感想を書いていきます。

※この記事ではFF16のストーリー等に関する致命的なネタバレはありませんが、一部クエストやキャラクターに関する記載及びスクリーンショットはあります。その点をご了承頂き呼んでもらえればと思います。

最先端のテクノロジーを使って描かれるテクノロジーの存在しない世界

FF16は昨今の大規模タイトルとしては珍しく発売時点での対応プラットフォームはPS5のみという仕様。
その分SIEからの全面バックアップを受け、PS5の様々な機能をフル活用したタイトルとなっている。

まずは高速ロード機能、FF16のマップは前作FF15で特徴的だったオープンワールドではなく「端っこまで行ったらワールドマップを開いて次のマップを選択して移動する」という旧来のリニアな形式になっている。
しかしながらひとつひとつのマップがそれなりの広さがあるうえ、ワールドマップから選択しての移動もどれだけ広いマップでもほんの数秒で自由に移動できるようになるためリニア形式にありがちな「移動できるマップが狭い」とか「ちょくちょくロードが入ってテンポが悪い、没入感が削がれる」といったことは全く無かった。
オープンワールドでは無いが開けた地形のマップでは、遠くに隣接したマップのランドマークなどを見ることができ十分に世界の広さを感じることができた


ストーリーの進行ではカットシーンと操作パートを交互に進んで行くのだが、このパート間でも高速ロード機能が遺憾なく発揮されボス戦なども間髪入れずに進んでいく。
事前のインタビューでは「やめ時のないジェットコースターのような展開を目指した」と語られていたが、本当にジェットコースターのような展開がほぼロードを挟まずに進んでいくので(後述する召喚獣バトルなどでは特にこれが顕著だった)グイグイと物語に引き込まれた。
最初にゲームを起動しタイトル画面が表示されてからエンディング後再びタイトルに戻ってくるまで、「NowLoading…」といった画面は全く表示されずこんな体験はFF16が初めてあり本当によく実現できたと思った。

次はデュアルセンスのハプティックスフィードバック(振動)機能。
パッケージにも「振動機能対応」と記載されているとおりFF16は様々な場面でハプティックスフィードバック機能が実装されている。
数多ある召喚獣アビリティで多種多様な攻撃に合わせてや召喚獣バトルのここぞという部分など戦闘システム周りでいい感じに振動してくれるのはもちろんのこと、カットーシーンも単なるムービーではなくリアルタイムで動いていて振動機能に対応しておりゲームへの没入感を大きく高めてくれていた。
カットシーンの一例を上げると、「とあるキャラ同士が杯を持ち片方がお互いの杯に飲み物を注いで乾杯をする」というシーンで手に持った杯に飲み物が注がれる感覚や乾杯の衝撃などが振動機能を通して実際にそうしているように感じることができる。
カットシーン中もほとんどコントローラーを手放せなかったタイトルは初めてだった。

最後にHDR機能。HDRとは「High Dynamic Range(ハイ・ダイナミック・レンジ)」の略で端的に説明すると、今までの映像と比較して暗い部分はちゃんと暗く明るい部分は眩し過ぎないように、より肉眼で直接見ているような表現ができる新しい映像技術のことである。
FF16はHDRを前提に画面全体の色味の調整がされており、特に夜間の城塞のシーンで揺らめく蝋燭の火や召喚獣バトルで双方が繰り出す技のエフェクトなどが映像としてとても映えていた
自分は体験版時点では「フルHD SDR(「Standard Dynamic Range」の略、HDRでない場合はこの形式が多い)」のモニター環境で遊び、正直それでも十分に美麗な世界だったのだが、発売直前生放送にて本作の吉田プロデューサーが自ら「画面が暗い」と言われてたことに対するフォローとして「FF16のライティングはHDRを前提に最適化している」「可能ならHDR環境でプレイや配信をしてほしい」とHDRとSDRの違いも含め分かりやすく視聴者に説明してくれていた。
元々4Kモニターが欲しいと思っていたこともあり(PS5もFF16のために買ったような物だったので)せっかくならと4K HDR対応モニターを購入し改めてプレイ、単純に解像度が上がったことで様々な部分がより高精細に見れるようになったというのもあるのだがそれ以上にHDRの効果がすさまじく暗い部分は自然に暗く明るいエフェクトはより綺羅びやかに見えHDR対応でここまで変わるのかと衝撃を受けた。

参考用にFF16のPVを流して比較してみた映像。右のSDRモニターはやや白っぽく左のHDRモニターはより鮮やかなのが伝わるだろうか。



さて、そんな数多の最新テクノロジーを駆使して表現されるのは飛行機や自動車、テレビや電話といったテクノロジーの代名詞として上がるような物は一切存在しない中世ヨーロッパを基調としたハイ・ファンタジーな世界
生活の基盤が魔法を前提として成り立っており、「井戸から水を汲む」「タバコに火をつける」といった日常生活でごくごく当たり前なこともクリスタルを介して行っている。
そういった世界観の設定がテキストだけで存在するのではなく、マップやカットシーンなど実際にゲーム内で見ることができる部分に表現されておりリアルに感じることができた。

ヴァリスゼアの世界には5つの国が存在していて、それぞれに「マザークリスタル」と呼ばれる巨大なクリスタルを保有しておりさらなるマザークリスタルの確保、あるいは奪われたマザークリスタルの奪還を求め各国が度重なる戦争をしているという状態。
また大きく分けて「人・ベアラー・ドミナント」という3種類の種族が存在しており、人は魔法を使う場合クリスタルを用いる必要があるのがベアラーはクリスタル無しで魔法を使うことができ、更にドミナントは魔法に加えて召喚獣の力を使うことができるといった具合。
一見すると人よりもベアラーの方が上位の存在に思えるが実際の扱いは「奴隷」であり、主人公クライブも訳あってベアラーになっているため多くの国で「このベアラー風情がっ!」という扱いを受けることになる。

プレイを開始してしばらく印象的だったのは「とにかく人が死ぬ」ということ。
「国同士の戦いで敵兵に斬られて死ぬ」「その戦いの中で出てきた召喚獣に踏み潰されて死ぬ」「更にその召喚獣同士の争いに巻き込まれて死ぬ」
「サイドクエストで依頼を受けて探しに行ったら魔物に襲われて死んでいた」「瀕死の状態で依頼を受けるだけ受けたら目の前で息絶えた」
「ベアラーで魔法を使いまくって石化して死んだ(ベアラーやドミナントはクリスタルを使わない分魔法を使い続けると体が石化していくという設定がある)」等々・・・。
とあるNPCのセリフで「人が死ぬなら、産めばよい」というのがあるくらい人の命が軽い世界。
ただ別にこれはお涙頂戴的な感じで殺しているわけではなく「戦争で敵兵に斬られたら死ぬし、召喚獣同士の争いに巻き込まれたり魔物に襲われても死ぬよね」という「この世界の当たり前」を表現しているに過ぎないのではないかと感じた。
本作のレーティングは「CERO:D」となっておりこれらの死亡シーンの多くは流血等のグロテスク表現を交えプレイヤーの目に見える形で表現されている。
とくにベアラー周りは多くの残虐な死を目にすることになり、これが後のクライブの「人が人として生き、死ねる世界を作る」という理想に繋がっていくのはよくできていた。

多種多様な召喚獣アビリティを自由に組み合わせられるバトルシステム

本作のバトルシステムは、剣を使った物理攻撃と魔法の基本的な攻撃に加えて各召喚獣の力を使うことができるフィート・アビリティ、その他いくつかの技から成り立っている。
フィートはフェニックスであれば「敵との距離を一気に詰める高速移動」、タイタンであれば「攻撃を防ぐ盾を展開する」といった感じに戦闘中いつでも使える物で、アビリティはクールタイムがある変わりに様々な強力な固有の技を出せるという物、単体攻撃の物もあれば全体攻撃、カウンターや設置型など様々な種類があり、更には操作の部分でも単純にボタンを押すだけでなく連打したり特定のタイミングで離すとより強力な攻撃になったりするなど手触り感も工夫されており触っていてとても気持ちのいいバトルシステムになっていた。

各召喚獣ごとにフィートが1つ、汎用的なアビリティが3つに必殺技レベルのアビリティが1つ用意されており、最大で3つの召喚獣の力をプリセットに保存してバトルで使うことができる。
最初はセットしているフィートと同じ召喚獣のアビリティしかセットできないが、強化してMasterまで行くとフィートとアビリティを自由に組み合わせることができるようになる。
最終的に全ての召喚獣アビリティ・フィートを自由に選べるようになるので火力特化の構成やカウンター重視の構成などプレイヤーによって全く違う構成ができあがる

本作のコンバットディレクターである鈴木氏は召喚獣アビリティに関して、「目指したのはエンディングを迎えた時にアクションカスタマイズがプレイヤーによって大きく異なる形」と話しており、まさにそれを体現する形になったのではないだろうか。

エネミー側はHPに加えボスなど一部の敵はウィルゲージを加えた2つのゲージを持っており、このウィルゲージを全て削るとテイクダウンとなり大ダメージを与えるチャンスが生まれる。
テイクダウン中はだんだんとウィルゲージが戻っていきMAXまで戻るとテイクダウンが終了しそれまでに与えたダメージが画面上部に表示される。

このダメージ表示が最初は1万とか2万だったのが、ゲームを進行するにするにつれ4万5万とどんどん上がっていき成長を実感することができた。

圧倒的なスケールで展開される召喚獣バトル

本作を語る上で外せないのはやはり召喚獣バトルだろう。
ストーリー進行の節目節目で入るこのバトルは人知を超えた存在である巨大な召喚獣同士の戦闘が圧倒的なスケールで展開される。
イフリートを操作して戦うのだが、特徴的なのは「適当になんか強そうな技を連打してればOK」というわけではなく、「ちゃんと敵の召喚獣の攻撃を避けて、空きができたら技を使って攻撃!」という具合に基本的には通常のバトルと変わらないということ。
もちろんQTEを含むカットシーンも多くあるが、合間合間にそういった「操作して戦うパート」があるからこそ「ちゃんとイフリートを操作して戦っている感」をすごい感じることができた。

召喚獣バトルは毎回毎回単純なプロレスバトルするというわけではなく、相手によってシューティングだったり飛んでくる岩塊を避けながら走っていくレース系だったりあるいは宇宙空間でレーザー打ち合いバトルをしたりと、とにかくバリエーションに富んでいる。
更にすごいのがこのクオリティのバトルが5分や10分で終わる筈もなく、短くても30分くらいで最長で40分以上も戦うこともある。
それだけ聞くと「え?長くね?」と思うかもしれないが、実際遊んでみると怒涛の演出の連続で倒した頃にはあっという間に時間が経っていたというのが正直な所である。

どの召喚獣バトルも遊びごと異なるレベルに作り込まれているため比較するのが難しいか、個人的に上げるとするとやはりバハムート戦だろう。
詳細はネタバレになるので伏せるがそこに至るまでのシナリオ、バトルの演出や全体のボリューム感等どれを取っても最高だった。
過去色んなゲームで多くのボスと戦ってきたが、FF16のバハムート戦を超える物は当分出てこないろうとそう思わされた。

バハムート戦は本当にいい意味でバカだと思った。

全くサブクエのレベルではないサブクエ

FF16にはメインストーリーの他にゲームの進行によって発生するサブクエ(ゲーム内の名称はサイドクエスト)がある。
サブクエといえば、「ゲーム内通貨や経験値を集めるためのもの」といういわゆるお使いクエストの印象が強いだろう。
実際内容的にはお使いなサブクエが多いは多いが、「ちょっとその辺の魔獣倒してきて」といった感じの"単なるサブクエ"は一つも存在しなかったように思う。(個人的主張を含む)

例えば「〇〇という魔獣を倒して△△(アイテム名)を入手してきてくれ」という内容のサブクエでも、「まずなぜそのアイテムが必要なのか」「どうしてその魔物がそのアイテムを持っているのか」「なぜその魔物はそこに居るのか」そういった補足情報をボイス付きでNPCが喋ってくれるという豪華仕様。
他にも例えば「保護したベアラーの姉妹にちゃんとした服を見繕ってあげたい」という内容のサブクエでは、布を集める過程からクエストをクリアしその姉妹が新しい服を着ている様子までしっかりと描写されている。

サブクエの内容は大きく分けて「世界観の補足」と「メインクエストで出てきたNPCの掘り下げ」の2つの種類。
「世界観の補足」はヴァリスゼアという世界の歴史や風土、伝承などを追っていくような内容でヴァリスゼアへの理解を深めることができ、「メインクエストで出てきたNPCの掘り下げ」は各種NPCのメインクエストでは語りきれなかった過去やクライブへの思い、夢などを知ることができよりNPCへの思い入れが強くなった。
どの内容でもほとんどのサブクエにしっかりと起承転結があり、物によってはなんでこれがサブクエ扱いになっているのかというレベルの物もある。
正直サブクエをやっているかやっていないかでメインストーリーや各種NPCに対する印象も大きく変わるだろう、これからFF16を遊ぶという人がいればぜひサブクエもプレイしてほしいと思う。

とにかく存在する要素は全部作り込みがすごい

発売後に吉田プロデューサーは主演した台湾の番組にて、「ファイナルファンタジーとは何か」という問いに関して以下のように回答している。
「最高の物語、最高のグラフィックス、最高のバトルシステム、最高の音楽そしてボリュームの大きなプレイフィールドでそこにチョコボとモーグリがいれば」「というのはメディア向けで僕個人としては「WOW!」って言ってもらえればもうそれでいいんじゃないかと、作品ごとにストーリーや遊び方が違っても「とにかくすげーなこれ、なんでこんなバカなことするんだって」思ってもらえれば、逆にそれがないとだめだと思う」と。

少年期から青年期、そして壮年期まで様々な出会いや別れ、葛藤や希望を持ち突き進んだクライブ・ロズフィールドの生涯を追った物語、

街や森、海など操作キャラクターがいなければ実写と見間違えるほどリアルなマップや甲冑のギズひとつひとつ服の皺ひとつひとつ、表情やモーションも作り込まれたキャラクター、そしてそれぞれに唯一無二の特徴があり巨大な存在感を示していた召喚獣を実現したグラフィックス、

シリーズ初の本格アクションに挑戦、多彩な召喚獣アビリティでプレイヤーごとに異なる遊びを目指したバトルシステム、そしてロックからクラシック、フルオーケストラまでその時々で多彩に変化しゲームへの没入感を高めてくれた音楽、これらの要素はまさに吉田氏がFFで目指したかった物を実現した結果なのでは無いだろうか。
(それぞれに「最高」がつくかどうかは実際に遊んだプレイヤー次第ではあるだろうが少なくとも自分は最高であったと記しておく。)

繰り返しにはなるが召喚獣バトルなんかはまさに「Wow!」と言いたくなるほど怒涛の展開でバカだと思ったし、サブクエも全然サブクエって内容じゃないし、マップも現実に本当にあってもおかしくないクオリティだしキャラモデルも服の皺とか繊維とか見えるし、アクションも触っててめっちゃ気持ちいいしストーリーも予想外の展開に進んだりしてめっちゃ面白いし過去作に比べるといろいろと要素を削っている分こだわりたい部分にものすごいこだわっていたというのが凄い伝わってきた。

まとめ-ファイナルファンタジーに完成は無い-

FF16は「ストーリー」と「アクション」の2軸にかなりの比重が置かれており、多少気になる点はありつつも実際この2点に関しては平均以上の出来になっていると言えるだろう。
一方で「フィールドの探索要素」「裏ボスや隠し召喚獣」「ミニゲーム」「パーティーメンバー操作」等の過去作ではおなじみだったいくつかの要素はかなり簡略化されているかほぼ存在しない。
またレーティングが「CERO:D」ということもあり、ゲーム全体を通しセクシャルやグロテスクな表現が多くあったのも強く印象に残った。

ファイナルファンタジーの生みの親である坂口氏はX(旧Twitter)にてFF16をクリア後にこうポストしている。

「ファイナルファンタジーは進化し続ける物であり、決して完成することはありません。」と。

ストーリーとアクションに全振りしたファイナルファンタジー、それがファイナルファンタジー16という作品なのだろう。
長く続いて来たシリーズ作品だからこそ、過去作の要素をバランスよく入れるのではなく、特化させたい要素を決め過去作との差別化をしより遊んだ人の心に残るような作品にするというアプローチは決して悪いことでは無かったと思う。

このゲームを最後までクリアして最初に抱いた感情は「純粋にゲームをクリアした」という達成感よりも、「分厚い歴史書を読み切った」という方が近かった
もちろんゲームではあるのだが、「クライブ・ロズフィールドという一人の人間の人生をゲームというメディアを使って追体験している」そんな感覚だった。
もしかしたら何百年も昔本当にクライブ・ロズフィールドという人間が存在していて、マザークリスタルを巡る戦いがあったのかもしれない」と、広大なフィールドやキャラクターの作り込み、セクシャル・グロテスクな表現もある意味ではそう感じさせるだけのリアリティがあった。

FF16を一概に神ゲーと評価することは難しい、だが「よくできたゲーム」あるいは単純に「良いゲーム」であったことは間違いないだろう。
そして紛れもなく「ファイナルファンタジー」であったということも。
ゲームというメディアは往々にして好き嫌いがはっきりと出るものだし、本当の意味で誰が遊んでも楽しいと思える作品は存在しない。
FF16に対する批判の多くは実際理解できるし、開発側もそれを理解した上で自分たちの表現したいことと取捨選択したのではないだろうか。
クライブ・ロズフィールドとなりヴァリスゼアの世界を駆け巡った2ヶ月間、出会った仲間たち戦った敵、クリスタルを巡る16番目の物語は自分の心に深く刻まれた。
この作品を生み出し世に届けてくれた吉田プロデューサーを始めとしたスクエニの開発陣、そして関係各社関わった全ての人に深い感謝を送りながらこの記事の締めとしたい。

以上ーー2023.08.30

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