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トレイラーseason2FL/危険取得のサンダーバード

プロローグ&一部

第二部

(採用)

 破壊ばかりにずっと明け暮れていた。
喧嘩が飽きて、試合。
試合に飽きて、競技。
そしてめでたく俺達は武器を手に入れた。

「やっと他団体から抜けられた。」

衣玖路 秋野湾いくみち しゅあるは土埃に塗れた俺を迎えにやってきた。

琴虎暴燈ことらあばくとの元へ帰還!なんてそれっぽいだろう?」

「秋野湾!知らない仲じゃないんだ。フルネームはやめてくれ。」

「あれ?なんか違和感があったか?悪かった。
なら、我が友の元へ帰還!ってな感じでどうだ?」

お互い03年生まれ。
高校卒業し、少し独特の場へ進学した。
そして秋野湾からなんらかの紙を渡された。

「あるサバイバルルポライターが俺達みたいなスタッフを探しているらしい。
本当はあと一人で良かったみたいだが、人数が多ければ作業も分担できるだなんて、人権削減の世の中で珍しい職場だよな。」

募集要項に俺達の名前が刻まれていて、採用のスタンプが押印されている。

「渡されたのは紙媒体だが、後はウェブでやっておいた。
ちゃんとデジタルもこなせる上に食費が支給されるらしい。

待遇が良いという事はそれだけ今時負荷がかかる仕事かも知れない。
少し勘繰ったら

「やる事は超常現象の解明だ。
最近よくある番組制作なんだろうけれど、早速依頼があった。
それがこれだ。」

『怪雷鳥の捕獲』

へえ。
UMAって奴か?
分からないが、そいつを捕獲する必要があるのなら俺達の出番ではある。
もう採用されて、番組の仕事を行えるのなら尚更だ。
戦える準備をし、その場所へ二人で向かう。

                         ✳︎

(怪雷鳥)

 スカイフィッシュが人間から逃走。
人間の研究をする為に、任務を達成した後にやたら喧嘩っ早い人間から鱗を剥がされたと言っていた。

PERIARUペリアル・サンダーバード。
それが俺の与えられた名前で、話をしてきたのはPERIARU・スカイフィッシュだ。
勿論これらの名前は渾名のような者で、大昔人間に揶揄された姿をスラングとして呼び合っている。
別に悪い気はしないけどな。

「この場所が人間にバレた。
サンダーバード。お前が暴れすぎたからだ。」

確かにそうかもな。
俺が放電する雷をコントロール出来るのも限度があって、偶々憎しみが溢れたかれ側の人間達を感電させたのだが。

「スカイフィッシュももっと人間を狙えばいいだろう?
任務の時だけ相手なんてしてたらこいつらにやられるだけだ。」

仕事人気質だからか、被害を最低限に抑える。
大っぴらな事はしたくないスカイフィッシュならではの考えだ。

「俺には俺のやり方があって、お前のように暴れる事が当て嵌まるわけじゃない。
俺が暴れてみろ?
小規模過ぎてすぐに徒党を組まれた人間にやられる。
だからお前の力が必要であって、もしお前がやられたらと思うと気が気でない。」

そうか。
内心では暴れたいんだな。

「なら、俺の任務が終わったらお前を手伝う。
お前の鱗を持てば、もっと雷を拡散出来るからな。」

PERIARUも笑いやその他の感情がある。
ただのUMAではないのさ。

「おっと。侵入者がやってきたか。
若手男性二人…ステゴロでここにやってくるとはな!」

さくっと始末して、スカイフィッシュと紅茶ケーキを食べながら破壊してやろう。
まずはあの二人を狙ってな!

俺の任務が始まった。

                          ✳︎

(火薬)

 細い身体と言われても、俺達はこの肉体に自信がある。
これで小さな出来事で言われるが二人でチャンピオンベルトを巻いたし、田舎で過ごす羽目になった時は廃墟で野宿をした者だ。
バイクを買う金が無くて、スマートフォンで知識だけ二人で語りながら自転車で日本一周もやってみた。
高校の担任に一年中驚かれたりもした。

「世界にはまだ行ってないけど、前に対戦した外人が現地の自然について態と英語で喋っていたのをチラッと聞いてさ。」

「この場所よりも未開拓なのに希少種が減った自然を楽しもうなんて、俺達Z世代の中で輝いてたりしてな。」

武器をお互い構え、磨きながら語り合う。
なんだかクライマックスシーンのようだが何も始まってない。

「リモートワークもフィールドワークもやりきってさっさと貯金して…誰にも邪魔されない空間でグループ作ろうぜ。」

「ああ。戦える歌手なんて中々いない。熱い歌声を子供達に届けようぜ!」

妙な臭いを嗅いだ俺達はその場を離れ、穿たれた雷痕を確認。

「ここまでテリトリーか。
生命体の割に、糞や尿の跡がないからおかしいと思っていたが。」

「秋野湾の言う通り完璧に隠されていたな。
知らず知らずの内に怪雷鳥のホームグラウンドに迷ったようだ。」

俺達も舐められたものだ。
今の一撃で殺せると思っていたのかも知れない。

体長はどれくらいだ?
他にもどんな攻撃を仕掛けてくる?

「暴橙!四時の方向!」

そちらを目指すと雷を回避出来た上に巨大な鳥、怪雷鳥へ飛びつくことに成功した。

「くっ!運の良い人間め!まさかこんな簡単に捕まるとは!」

喋る鳥か。
捕獲しろって話だが思ったよりも簡単そうだ。

「大事な仕事だ。
見下している人間に捕らえられる気分を味わいな。」

思ったよりも細かったので増量した甲斐がある。
全体重を乗せて怪雷鳥を地上へ落とそうとするが中々上手くいかない。

「へん。図に乗るなよ!」

すると俺の身体に電流が走った。
リアルな雷が全身の筋肉と血液を沸騰させようとする。

「ふん。ガキが。」

俺は来ていた服が電流で破け、はだける。

地上に落ちるところを秋野湾に抱えられた。

「はぁ…はぁ…はぁ…もしもの時に…泥を仕込んでいて…助かった…」

怪雷鳥は「なんだと!」と驚いていた。
ただの泥じゃないからな。

「身体、しっかり鍛えておいてよかったな。」

「あぁ…あの…兵器を…使ってくれ…」

俺は朦朧とする意識の中で秋野湾にバトンタッチした。

秋野湾は上半身裸となり、泥で覆った身体を怪雷鳥に見せ、『ランチャーNo.12』を構える。

「させるか!」

そう突進する怪雷鳥にさっき飛びかけた時に仕掛けたマーキングのスイッチを俺が押し、網を呼んで動きを封じる。

「こ、こんな準備を?」

撃て!

「おおおおらぁぁ!」

捕獲用に威力を抑えたとはいえ最高の武器であるランチャーNo.12の一発はまるで連射しているような錯覚と快楽を与える。

「う、ウワァァァァァァ!」

怪雷鳥の悲鳴が森に響き、俺は意識を失った。

                          ✳︎

(花火)

 亜薇あばら君としばらく仕事を繰り返すうちに、少しずつぶっきらぼうな彼から話をする機会も増えた。
喧嘩が好きなわけではなくて、ただただ現実のフラストレーションに彼が弱い事を語っていて生きづらさを実感した。

所長も懐が広い。
けれど、『PERIARU』という生命体について所長はルポライター時代から気になっていたらしく、いくら採用条件を満たしている亜薇君とはいえその一種と出会ったのは奇跡だった。

ここで手に入ったという鱗。
スカイフィッシュらしき物…

謎は深まるばかりだ。

すると花火が島のある方向で広がっていた。
いや、爆発?
なんなのかは俺と亜薇君でも分からなかった。

すると所長が「一気に二人採用決定。ちょっとイレギュラーだからもうあと一人採用する必要があるけれど、その子達も君達と同世代だから宜しくね。」

と言っていた。

花火なのにやたら余韻があって、一時間も残っていたからか一部SNSでは話題に上がっていた。

そういえばこの場所は海だ。
所長がここで何かあると言うから待機していたのを忘れていた。

すると小舟が大きな鳥を捕獲し、泥の塗れた二人の青年が肩を抱き合って歩いてきた。
凄いボロボロな上に巨鳥もそこそこ彼等とコミュニケーションは取れるが弱っている。

「やっと来た…って大丈夫?激戦してたみたいだけど?」

そういって所長は実を二個彼等に手渡し、齧らせる。

「食費は無しは本当か。感謝します!」

細い身体だが令和の筋骨隆々ボディと言ってもいいかもしれない。

さっきの花火ってもしかして…いや、考えなくていいか。

「任務達成しました。」

「お、お前ら!な…なに調子にのっ…てる…あんな武器…反則じゃない…か…捕獲も可能だなんて。」

とりあえず俺にも同僚が増えた。
亜薇君も何か二人と通じ合うのか俺といる時より喜んでいる。

所長が

「さっき実を食べたから食欲はそこまでないかもしれないけれど、焼肉行こう。」

と誘ってくれた。
揚げ物バイトの俺としては非常に新鮮だった。

けど、この巨鳥はどうしたらいいのだろう。
食べる気なんてここの誰も思っていない。
一応言っておく。

「あっ、そ、その鱗!お前らがスカイフィッシュの存在を知ったやつ…らか?」

思わぬ謎が解明されそうだ。
突っ込まないけど人語で日本語も話せるのは素晴らしい。

依頼は達成したんだ。
後は、生還した二人に焼肉店で聞くとしよう。

きっと、こんな一日を繰り返していくことになるのかもしらない。

次のメンバーが来るまでに、仕事を覚えようと皆が感じ取ったのだった。

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