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トレイラー

あらすじ


サバイバルルポライター・豫癒 典子よすが のりこ は心霊番組を製作した。
事務所はまだ片付いていないがここからスタッフを採用する予定だ。
物価が高くなり、サバイバルで培ってきた食糧確保も今では現実的ではない為、ある技術を使用し始めた。

プラントホメオスタシス

意思はなく、動きはするが人形のような植物。
人型で歩行も可能。
プラントホメオスタシスの細胞を齧ってタンパク質とビタミン等を摂取する。
絞れば果汁ジュースやスタンダードな水も飲める。

豫癒 典子は食費をカットし、低予算で心霊解明を急ぐ!

(アルバイト)

 豫癒 典子よすが のりこ
ルポライターと名乗っているが、同業者の報道に対する暴徒化に辟易している。
真実を伝えるといいながら精々芸能人の下らない私生活。
二十何年もそれを続けて誰が、プロだ素人だの。
時代遅れかつ老害もいいところだ。

私は

「どうせなら怖そうな世界をしっかりと伝える。」

そんなテーマを掲げて転職した。
フリーランスのような仕事でゼロからやり直さないといけない。
心霊現象よりも税とか保険とかが怖い。

心霊現象やそういった類を追求する前に私の命がそっちの世界へ逝ってしまいそうだ。

私はある部屋へ食糧を調達しにいく。

家族仲は最悪なのでこの技術を利用するのは嫌だったが背に腹は変えられなかった。

「プラントホメオスタシス」

人型の植物であらゆる味を網羅…まあ私が味を付け足したのだけど…したプラントホメオスタシスを齧る。
只の植物ではなくて太陽光と水、二酸化炭素や酸素だけで成長可能で人間のような筋肉まである。
植物性の栄養素が詰まっているが動物性のカロリーへの摂取も体内にプラントホメオスタシスを齧れば植物性栄養素と共に摂取できる。

つまり完全な植物だ。
たまに果実を実らせるがその果実はご馳走で、基本はプラントホメオスタシスの細胞を齧ることで生きていける。

かつては戦場カメラマンを目指して好きなサバイバルも極めた。
だがザリガニやウシガエル、猛毒生物を食ってばかりいるのも手間の割に可食部が少なくてリスクも高い。
勿論今でもそれは可能。
プラントホメオスタシスも持ち運びには色んな意味で慎重になるから外で仕事する時は気を遣う。

そんなプラントホメオスタシスは相棒なのだが喋ることはないので結局孤独に仕事へ打ち込む事になる。

食費が実質ただだから、浮いた金額をアルバイトへ費やしたいのだが待つのは性に合わない。
気が合いそうかつしっかりと廃墟にも潜入してくれそうな人はいないだろうか?

ここは都会。
まずは自分の足で探していきますか。

私は人材スカウトをしに街へ向かう。

(揚げ物)


挿絵

「チーズ唐揚げ定食です。」

俺はいつものようにバイトをする。
学生時代から働いていて、もうすぐ正社員になる。
だが本当なら働かず、大学も卒業したくなかった。
我ながら真面目だと思ってしまうのは、しっかり単位を取ってしまっていること。
この先正社員になったって身の安全の保障なんてないのに。

多用的だといいながら差別、不寛容、遅れた風習は残っていてバイト生活はオーナー達によくしてもらっているから、稼ぎが少なくてもこっちで精を出しながら大学生活をもっと楽しみたかった。

一緒に入ってきた人達も次々と別の道を辿った。
なんだかんだ今も連絡は取り合っていて、最初はバイトや仕事の悪口だったのにつまらないことに気がついたのかアニメやエロスについて語られる様になった。

既に家庭があって、子供が声真似の才能を発揮し、配信しようとしたのを止めようとしたりと凄い時代になったなんて思いながら今日も定食を運ぶ。

✳︎

 休憩中、タバコをふかしてスマートフォンをいじる。
いくら環境が良くても結局は金だ。
だが高い時給の場所なんていくら都会でも正社員になってまで勤めたいとは思わない。
副業もほぼ必須だなんて、黄金の国ジパングと言われた日本は衰退している。

「はあぁぁぁぁぁ…」

深くため息をついた。
好きは仕事にしたくないし、嫌いじゃ金にならない。

この先どうしようか考えていると…

「さっきはチーズ定食有難う御座います!
久しぶりの飲食店だったから元気出ちゃった。」

さっきチーズ唐揚げ定食を食べた女性が声をかけにきた。

「なんなんですか?」

強引だったのでつい警戒してしまった。
これは何かあるのか?

「見た感じ、随分長くアルバイトしてるみたいだったから気になって。

私、こういう者です。」

こういう者ですと言う人を信用はしないがこれはわざとそう言ってる。

渡されたのも名刺ではなくて彼女の勤め先が書かれていた。

「出せるだけ給料は出す。
けれど、最初は負担が大きいからカメラを構えて欲しいの。」

え?これは誘われてるのか?

「私は自分が食っていける分の蓄えはあるから、Z世代の力で私を助けて欲しいなあと思って。
待遇は出来るだけ良くするから。
お願いします!」

謎のヘッドハンティング?
スカウト?
それなのに腰が低い。
常連でもなんでもない方にいきなり頼まれても正直怖いが、頼まれている上に不思議な副業が出来る。
俺は彼女の誘いに乗った。

✳︎

「え?」

事務所と呼ぶにはまだ色々と整っていない。
だがここが俺の副業先だ。

「これでも片付いた方でさ。
やる仕事は廃墟、廃村、エトセトラに許可を取って依頼された内容を一件一件解決すること。
これが難しいんだけど。」

そう言っている雇い主を俺も手伝っている。
小さな事務所なのに機材が多いから何をしている人かと思えば大切に保管されている雑誌を見て、もしかしたら新聞記者とかやっていたのかもしれない。

「アルバイトって大変だよね。
よほどしっかりした場所は短期間だし、民間なんて長続きできるほどの賃金なんてない。
正社員は転勤も多いから家庭がある人しか続けようなんて思わない。
私の友達は色々と諦めて就職をやめて隠居したけど仕方なくバイトやっててね。
だから、あなたを採用したの。」

苦労が伺い知れる。
この人が俺に優しいのもそれが理由か。

「表向きは心霊調査なんだけど、私達が
やるのは廃墟から未知の生物の痕跡を分析して停滞する現代を生きる依頼主を裕福にさせる事。
心霊番組もやる予定だけど、あと二名くらい必要ね。」

大変な道のりだ。
もう辞めたい。
揚げ物バイトにこの副業はきつい。

「リモートワークもあるから。」

と心の声が聞こえてフォローされたがそういう問題?

探据 夜奈蛾 さがすえ よりなが
副業先を間違えたかも?

だがスカウト、いやお願いされたのだ。 俺にしか頼めないことがあるのなら、
ここからスタートしたい。

そう俺は感じ取った。

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