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+1度。

最近お嬢は体育で柔道を習っているらしい。

私が中学生の時代には、柔道と剣道、いわゆる武道は男子だけやるものだったけれど、令和の時代には女子もやるものなのね。

柔道の柔の字も知らないようなお嬢が一体どうなることやらと心配していたが、それはどうやら杞憂だったらしい。

先週柔道の授業があった日。
お嬢は学校からおかんむりで帰ってきた。
それはなぜかというと、

「お嬢の受け身って、小動物を殺せそう…」

と友達に言われたらしい。

「小動物殺せそうってどういう意味?」

と聞くと、お嬢曰く、受け身は畳に手を打ち付けた時にバーンと大きな音が出るほど良い受け身らしいのだが、お嬢の受け身はすごい音が出たのだとか。

その音に周りの女子がビビり、「今の音、すごくね?」みたいなざわめきが起こったのだという。

殺意を感じさせる受け身とは?
お嬢よ、どんな受け身をとったのか…

などと思う気持ちはひた隠し、

「まあ、アレだよ。パーフェクトな受け身ってことじゃない?」

と、母は最大限にオブラートに包んでほめておいたが、柔道について知識も経験も全くない私から言われてもお嬢には全然響かなかったのか、

「ふーん…」

といかにも不納得な様子で部屋に消えていった。

そして本日。
帰るなり、

「ねえママ!今日ケサガタメやったよ。私上手いってほめられたんだ~💕」

とご機嫌でご帰宅された。

ケサガタメ?
ああ、袈裟固め?

「そうなんだ~、よかったね。」

と言うと

「私、クラスの女子を悪いヤツから守れるわ~❤️」

と上機嫌だ。
しかしである。

「ねえ、ママにやってみていい?」

などと言うので

「いや、よくない、よくない。やるなら2さんにやってよ。私、明日仕事に行けなくなるわ!」

と拒否すると、ちょうど帰宅した息子2さんを捕まえて

「今からあなたは不審者です。」

と2さんはいきなり宣言された。

「はあ?何それ?」

さもあろう、さもあろう。
帰ってくるなり不審者と言われてもね。

「いいから!そこに仰向けに寝て!」

お嬢に指示される2さん。

「ヤダー!!」

もみあう二人…
中学生女子と高校生男子がわあわあと2人で騒いでいる。

「ねえ、もうごはんできてるけども…」

と騒いでる2人におそるおそる声をかけると、

「2さん、早く!そこに仰向けに寝て、足を伸ばしなさい!」

とお嬢、更に追い討ちをかける。

ヤダー!

と言って部屋中を逃げ回っていた2さんだが、そこは狭い室内。あえなくお嬢に捕まると

「もう、ヤダって言ってるのに…」
「まあまあ、そう言わずに~」

などと言って無理やり仰向けにさせられた。

するとお嬢はきらーんと目を輝かせ、ここぞとばかりに習いたての袈裟固めで2さんをぐいっと押さえこんだ。

「キャー!楽しい~!ママ、見て~!」
「わあ、もうやめろー!」

もうごはんが出来ているというのに、まだ2人はわあわあやっている。
私はそんな2人を横目に

「いただきまーす」

と温かいスープを一口飲む。
急に寒くなったなあ、などと思いながら。

「ねえ、もうごはんが冷めるよ。いい加減食べたら?」

と言うと、すっかり満足したのか、

「はーい!」

と言ってお嬢はパッと技を解き、

「私、いざとなったらみんなを守るからね!」

と心強いお言葉をくださった。
そこに仰向けに寝て!とお願いして、寝てくれる不審者はいないと思うケド…

まあ、ありがたくお言葉だけは頂戴しておこう。

ちょっと寒くなった日の夜。
我が家のリビングはいつもよりプラス1度ぐらい暖かだった。

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