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暗闇の中の対話: ダイアローグ・イン・ザ・ダーク

そこに存在する暗闇は、真の漆黒。照度ゼロの世界。全くの暗闇。世界43カ国で展開されている暗闇の世界の中で、古今東西一番多く発せられる言葉は、

Where are you?あなたは、どこ?

だそうだ。

そして、その声に向かって誰しもが答える。

I am here. わたしは、ここよ、と。

どんな漆黒の中にいようとも、このやりとりがあるだけでホッとする。

わたしはここよ。ここにいるの。見つけて、どうかわたしを。わたしも、あなたを探すから。

そしてお互いを見つけあえたなら、時に、言葉は不要になる。闇の中で、言葉がなくても対話はできる。

例えば、能舞台上で、誰かと背中合わせに座る。板張りの涼やかさと、背中の温みを感じながら、ゆっくりと呼吸をしてみる。そのうちに、呼吸を合わせたくなる。鼻からゆっくりと吸った息が丹田に向かって下がり、それに伴って背中もお腹も膨らんでいく。ああ、息を吸った時って、こんなに背中が動くものなんだ。

はじめは浅かった呼吸が、お互いだんだん深くなる。ヨガみたいにムーーーンと音を出してみる。お互いの身体が、共鳴しあう。その共鳴する振動もまた、対話なのだ。

言葉は大量に溢れているのに話が成立していない、なんて場面が多い昨今、時には、言葉のデトックスも必要なのかも知れない。

少しの間、言葉を離れてみると、子宮の奥から本当に話したい言葉が見えてくる。闇の中に、ポッとまたたく灯火のように。

これまでの暗闇よりも、空間が広く感じられた。能という幽玄を感じたり、水という命の循環を感じたりできる演出ゆえかも知れない。

水も、闇も、生命の源。その流れの中をたゆたう私たちは皆、等しく価値がある存在なのだ。

ダイアローグ・イン・ザ・ダークの新たなスタート、おめでとうございます。


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