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ギャルと赤ちゃん。

田舎の小学校には登校班がある。
校区が広く、国道をさかんにクルマが通るし、一人では危険だから。
保護者には連絡を束ねるお世話係があり、私はもうそれを3回やっている。
2016年からずっと小学校の保護者をやり続けているのだ。

昨年転入してきた新入学の女の子は、コンビニの前を通らないと登校班の待ち合わせ場所に行けない。
でも、コンビニは急にクルマが出入りする。
雑な運転をする者も多いし(田舎は特に)、小学1年生が一人で通るには危険すぎる。
そこで、うちの息子が朝、女の子を迎えに行って遠回りではあるが我が家の前を通るルートを提案した。
入学式の前から登下校の練習をするように学校から言われているので(かなり距離があるため)通学路の確認も私が付き添った。

女の子の母親は、どう見ても私よりひと回り以上年下で、ギャルみたいだった。そういう知り合いがいないのでわからないけど、ヤンキーだったのかもしれない。
何食べてるのかなって思うくらい痩せていた。
浜崎あゆみ好きそうだな、と思っていたらスマホからAYUの曲の着信が聴こえてきて笑った。通話相手と話しているときの言葉遣いがすごい悪かった。


登校班とセットで保護者には旗当番というお役目も順に回ってくる。
ある日、ギャルママが3人目を妊娠して、つわりが酷いので旗当番に行けないと連絡してきたので、私は代わりに行ってやることにした。
この町に友達も知り合いもいないらしい。

それから、私はちょっと心配になり、家事はできてるのかメッセージで聞いてみると、辛くて寝てばかりだと返ってきた。
私は家事代行のような仕事の経験があるので、軽い気持ちで手伝いに行った。掃除用具をぶら下げて。

行くと洗濯物が山になっていて、さほど散らかってはいなかったが掃除はできていないようだった。
洗濯物をざっと片付けて、リビングの絨毯に掃除機をかけて、ベランダではたいて、床をきれいにしてまた絨毯を戻した。
保育園児の妹がいたので掃除機を手伝わせると上手にやってくれた。
小さいこどもが2人いて、つわりが重いとなるとなかなか大変である。

お茶をだしてくれたので、座って話しを聞いていくと、彼女は親に捨てられたようだった。
若くして親になった母は、まともに子育てができない女だったようで、詳しいことは聞かなかったが「どっか行った。」そうだ。
もう会いたくもない、とも言っていた。
父親はとんでもない女好きで、彼女の母親の後にもパートナーをころころと変えて、あちこちに異母兄弟がいるようだったが交流はしておらず、父親のことは「気持ち悪い」と言っていた。
最後に会ったときは、彼女と同じくらい若い妻を連れていたらしい。
それは嫌になるよな、と思った。

彼女はやはり私と母娘くらいの年齢だとわかった。
では、産まれてくる子は私の孫でもおかしくないのだ。


今日、赤ちゃんに会いに行ってきた。
いちごを持って。
春休みに合わせて予定日より早く出産したそうで、とても小さかった。
彼女にそっくりだった。
病院帰りで疲れていたようなので玄関先で抱かせてもらった。
赤ちゃんに会うのはほんとうに久しぶりで私は嬉しかった。
この年齢になると友達の出産などももうないから。
母乳は出ているのか、眠れているか、体調は問題ないか、夫は助けてくれるか、私は民生委員のようにあれこれ聞いた。
今日はじめて気づいたが、腕にタトゥーがあった。

困った時は何でも言って、なんて言葉はあまり使いたくなくて、私はあなたを気にかけていると伝わればそれでいいと思った。

彼女のことはいつも気にかけていた。
親がいないというのもあるし、まあ娘みたいな感覚で。
上手く甘えるのに慣れていない子だから、自分から何も要求しないけれど掃除に行った日は嬉しそうだった。
コンビニで会って声をかけた時も嬉しそうだった。

誰も助けてくれるひとがいないのはどんな気持ちなのかと想像していた。
私がいつでも助けられるわけじゃないし、あまりベタベタするのはたぶん好きじゃないだろうから、程ほどに様子を見ていこうと思う。


覗いてくれたあなた、ありがとう。

不定期更新します。
質問にはお答えしかねます。

また私の12ハウスに遊びにきてくださいね。








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