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63 - 異国の暮らし、ドイツ哲学

「『ここは非常に涼しくて快適だ』」キング氏は書きながら読みあげていった。「『こんなとき暑い機関車の中にいるきみのことを思うと、こちらへ来させてあげたい気持ちになる』」
 列車が止まった。
(『クレイジー二人旅』)

63(*62はこちら

Chantrapas(シャントラパ/以下”C”): エスニックジョークで思い出した。そういえばドイツ人のお世話してたことある。

Johnny Cash(ジョニー・キャッシュ/以下”JC”): ふん。

C: さっきのジョークみたいなステレオタイプ的な人物ではあったね。後ろ向き、プライド高い、欠点思考であれが駄目これが駄目ばっかり言ってた。

JC: ショーペンハウアーみたいな。厭世主義。

C: 良く言えば。ははは。まぁ……間違うのを見られるのが何より嫌いだったね。例えば、翻訳の宿題をお兄さんにやってもらって、それでも不安だからとわたしがチェックを頼まれた。

JC: うん。

C: お兄さんは先に日本に留学していて日本語が上手。わたしも「完璧じゃん」って。そのまま授業に持って行って、帰って来たら激怒してたんだよね。所々バツが付いていて、「俺に恥をかかせたな!」くらいの勢い。「Cさんはパーフェクトと言ったじゃないか!」って。

JC: はぁん。自分なら「先生連れて来い」って言うな。ははは。

C: 先生悪いね。良く出来てた、読めてたからね。

JC: でしょう?

C: 一円玉にもキレてた。「これはお金じゃない!」って。部屋行ったらビンにパンパンにお釣りの一円玉が入ってたり。スマートに会計出来ないのが嫌なんだろうね。「外人遅えな」って。確かに避けたいシーンではあるけど。

JC: ほん。

C: 食堂のメニューで選ぶのもカツカレーだけ。まだカタカナしか読めないから。異国で食事は難しい。だからこれも気持ちは分かる。気を張って……「俺はいつもカツカレーだ」と。恥かかせるといけないから余計なことは言わなかったけど。

JC: その人だけでジャーマン全員にはならないけどね。

C: うん。それなりに親しく付き合ったから……時間的にだよ? 人間的距離は近付いてないけど。とにかく取り付く島もない感じ。ははは。

JC: ハヤシライスくらい頼めと。

C: はははは。カタカナなら、うん。

JC: ドイツは文化的には似てる所あると思うね。

C: 心理的に似てる所も多いにある。わたしも同じようなダサいことしたこといっぱいある。「間違ったら恥ずかしい」が根底にあるとやっちゃう。

JC: 実際自分もドイツの哲学……ね? 最初に触れたのはそうだったし。ただ、映画とか小説はほとんど知らない。表面的なものに対してはあんまり興味ない。凄く複雑な人達だな、と……。

C: JCと同じでドイツ人は散歩好きだよ。

JC: ははははは! そうね。カントも有名。ずっと散歩してたって。

C: ドイツ人の旅行って「移動して散歩する」って言う。

JC: 似てるんだろうね。反面教師的なところもある。「こういうトコ気をつけないと」って。

C: 何度もそれ思った。

JC: ニーチェとか読んでもそうだよ。「こういう所は駄目だな」って、心底100パーセントの心酔は出来ない何かがある。この人変だなと思うトコいっぱいある。はははは。

C: 今日は……懐かしい知り合いをたくさん思い出して楽しいなぁ。

JC: ヨーロッパの伝統を守る、みたいな所もね。早くに閉鎖的になるから守れてるのかな、と。みんながみんなそういう人じゃないから失礼かもしれないけど。出来るだけシンプルにしたくなる、みたいな。

C: ニーチェでもそのくらいの距離感なんだね。

JC: 悪いけど「誰かに心酔する感覚」というのは自分にはまるで分からないからね。大切なのは自分が絵を描くことであったり、ギターを弾くことであったりだから。

C: doubles studioは芸術系とはっきりしたところで、

JC: うん。

C: 次回はJCの音楽講座どうだろう?

JC: 初の音楽特集、やってみますか。民族音楽から始まるから……。

C: 現代はだいぶ先! はははは。

JC: ちょっと違う歴史があるかもね。

C: 楽しみにしてます。

つづく


2022年6月21日 doubles studioにて録音

ダブルス・ストゥディオ
Johnny Cash (thinker/artist) & Chantrapas (designer/curator)

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