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加熱型加湿器の評価(本番)

おさらい

下準備編でソフトウェア的な準備は整いました。テストとしてSHARPの加湿器についても評価し、電気代は安いですがフィルター交換等を考えると月1000円程度のランニングコストと試算しています。

さて、いよいよ象印の加熱型加湿器について評価していきます。
消費電力量と加湿量について、一晩寝室で使った記録をSwitchbotを使ってデータ取得し、グラフ化していきます。


自動モード(標準)

まずは自動モードについての評価です。象印のEE-DC50には自動モードが搭載されていて、部屋の湿度に応じて動作のON/OFFが行われます。
自動モードにも種類が3つあって「ひかえめ」「標準」「しっかり」と選ぶことができます。まずは標準について評価します。

結果

一晩計測した結果が下記のグラフの通りです。

EE-DC50の消費電力・加湿度・温度

前回のSHARPと比べてまずは圧倒的に消費電力が高めです。最初の湯沸かしの時点で900W近くになった後は400W、200Wが繰り返しているのが分かります。完全に湿度と連動していて、湿度が下がってくると長めに電源が入り、65%程度になるとOFFとなります。30分ほどで湿度は55%程度まで落ちるので再び電源が入る、といった具合です。

消費電力

消費電力についてデータから計算してみます。
データは23時付近から6時付近まで入っていますが、実際には少し前から集計は始めていて終了も8時ぐらいまで行っています。(加湿器の電源を入れたのは23時です)
そのため余計なデータが混ざっているのでコマンドを使って必要なデータだけにしましょう。
まず、対象となる時刻のunixtimeは下記のように算出します。

date +%s -d '2023-02-01 23:00:00 JST'

unixtimeは基本的にUTCで入っているので、日本時間の23時を指定するにはJSTを指定します。同様に6時のunixtimeも計算できます。
データを抽出するのに便利なのはawkコマンドです。ちなみにawkコマンドがあればなんでもできます。

awk -v start="$(date +%s -d '2023-02-01 23:00:00 JST')" -v end="$(date +%s -d '2023-02-02 06:00:00 JST')" '{if($1 > start && end > $1) print $0;}' data/experiment_ee-dc50_normal.data

長いですがワンライナーで書くとこんな感じです。-vで変数値を指定し、awkにそれを渡します。最後に対象となるデータファイルを指定すれば、指定した時刻のデータだけを抜き出せます。

合計を出すのもawkで集計させれば良いです。平均を出したいので数を集計します。(NRで割ると元のデータ数で割ってしまうので別に集計する必要があります)
完成したワンライナーはこんな感じです。

awk -v start="$(date +%s -d '2023-02-01 23:00:00 JST')" -v end="$(date +%s -d '2023-02-02 06:00:00 JST')" '{if($1 > start && end > $1) {s += $2; num += 1}} END {print s/num}' data/experiment_ee-dc50_normal.data

さて、実行した結果、消費電力は192.307Wでした。SHARPの7Wと比較すると27倍の消費電力となります。24時間30日ずっと使い続けた場合、約138kWhとなるので電気代だけで月あたり2769円となります。これが高いかどうかについては後ほど考察します。

加湿量

稼働中の湿度ですが55%以上をキープしていて最高湿度は66%、最低で52%、平均で59.37%となりました。SHARPが55%程度で安定していたことを考えるとやはり加湿量は多そうです。窓はしっかり結露してしまっていました。

網戸越しでも結露しているのが分かる

水もしっかり減っていて2分の1程度になっていました。4Lの水が入るので2Lほど使ったことになります。

満水から一晩でここまで減る

自動モード(ひかえめ)

さて、続いては自動モードの「ひかえめ」です。
湿度を抑えてくれるはずです。やり方は全く同じで、モードをひかえめにするだけです。

結果

一晩実験した結果が下記の通りになります。

湿度もほとんど変わらず、消費電力も高い

さて、不思議なことに湿度は標準とほとんど変わっていません。むしろ増えているようにも見えます。平均湿度を計算すると59.55%となりました。最大で67%にもなります。やはり増えています。
よく見ると最初の2時間ぐらいは55%で確かに「ひかえめ」なんですが、その後一気に増えています。例えば急に冷え込んだ、ということも考えられますが気温を見るとそれも無さそうです。
また、明らかに消費電力が高い状態です。標準の場合はONとOFFが分かりやすく切り替わっていたのに対して、「ひかえめ」の場合はOFFになったらすぐONになる、といった感じです。「ひかえめ」とは・・・?
消費電力量を計算すると329.193Wとなりました。約1.7倍です。
標準の場合は3分の1ほどお湯が残っていたのに対して、「ひかえめ」の場合はお湯が空っぽになっていました。また、窓もしっかり結露しています。「ひかえめ」とは・・・???

ちょっと流石に何か他の原因があってこんな結果になったような気がしているので追試を2回実施しました。

追試(1回目)

ほとんど変わらない結果

1回目とほとんど変わりません。
消費電力量は329.33W、平均湿度56.4%、最大で64%となります。

追試(2回目)

3:30ぐらいまでは順調だがそれ以降に増加

2回目は少し変化がありました。3時半頃までは55%前後の湿度で消費電力量もそんなに多くありません。
3:30までの結果だと消費電力は252.9W、平均湿度は52.3%となります。消費電力量は標準より高めですが、最初の湯沸かし時間があるためです。
3:30以降は他の結果と同様に高湿度となるので、結局一晩通した結果は消費電力300W、平均湿度57%、最大で64%となりました。

しっかり結露
お湯もほとんどない

写真は追試(2回目)のものですが、1回目も追試(1回目)も同様に窓はしっかり結露しましたし、お湯もほとんど空の状態になりました。

ということで追試を2回実施しましたが、結果は大きく変わらず、やはり標準より高湿度のようです。逆に標準が抑えめだった可能性もありますが、さすがに64%まで加湿されると窓も結露しますし良いことありません。
追試2回目の前半は良い感じだったので恐らくこれが本来の「ひかえめ」モードの動作であって、何かしらのトリガーで加湿しっぱなし状態に遷移している気がします。湿度センサー等の物理デバイスが原因なら標準モードでも起きそうなので、単にプログラム的なミスじゃないかと推測します。

連続モード(弱)

さすがにこのままでは使い物にならないので、連続モードを試してみます。要するに外部の湿度に影響されず、一定の加湿を保つモードです。

自動の下に連続モードとして弱・中・強がある

自動だと設定の湿度が高すぎるので弱なら良い感じに湿度が調整されるのではないか、という仮説です。

結果

ある程度の湿度をキープ、消費電力も控えめに

グラフを見ると一定の間隔でON/OFFを繰り返して55~60%程度の湿度をキープしているように見えます。ただ、消費電力量は平均で217.167W、平均湿度は58.65%、最大で65%、最小で55%となりました。

湿度は良い感じに調整されているようで(若干右肩下がりなのは気になりますが)お湯もたっぷり残ったままでした。また、窓も結露していません。

4分の3ほどのお湯が残っている
窓も結露していない

平均や最大の湿度は自動モードと大差無いのですが、グラフを見ると一定に保てているので使い方としては問題なさそうです。ただ、外気温や外湿度の影響もあるので別途検証は必要かもしれません。

一方で消費電力量は環境に依らずこの値で一定でしょう。自動モード(標準)の場合はある程度まとまって停止している時間帯があったので、定期的にON/OFFを繰り返す連続モードだと消費電力量が増えてしまうようです。それでも自動モード(ひかえめ)よりはマシですが・・・。

考察

結果について考察していきます。

使用モード

消費電力量だけを見ると自動(標準)が一番消費電力が少なそうです。ただ、加湿量が多すぎることを考えると連続(弱)の方が適切でしょう。
連続(弱)を使用した場合を想定して考察します。

消費電力量

連続(弱)の消費電力量は約217Wでした。ただ、これは最初の湯沸かし状態の時も含まれているので、24時間使うことを考えると変わってきます。
湯沸かしは24時には終わっているので24時〜6時までの消費電力量を計算すると135.8Wとなりました。
また、お湯の量は4分の3は残っていたので、このまま加湿を続けても後3倍の時間はもちそうです。つまり、最初の7時間は217W、続く21時間は135Wになることが想定できます。カタログスペック的には弱動作だと32h動作するらしいですが、ひとまず28時間として計算します。
28時間の合計は4354Whとなり、1時間当たりだと155Wになります。

コスト計算

155Wで24時間30日稼働させたとなると111.6kWhとなります。前回のSHARP加湿器と同様にざっくり1kW20円計算で2232円になります。これだけだとSHARP加湿器の20倍となります。
ただ、SHARPはフィルター交換が必要なので月1000円と見積もりました。加熱型加湿器だとどうなるでしょうか。

加熱型加湿器はどうしても水垢・カルキが溜まるので定期的にクエン酸で洗浄しなければなりません。クエン酸はどこでも売っていますが、ここは純正品を使用することにしましょう。

4袋入って1200円なので1袋で300円になります。(安いときは500円ぐらいで売ってるみたいですが)
説明書によると1〜2ヶ月に1回実施とのことなので1.5ヶ月だと考えると1ヶ月200円になります。
必要な手入れはこれだけなので、トータルすると月2432円となります。SHARP加湿器の2倍となり、結構近い値になりました。

コスト削減

この加湿器を夜だけ使うとなるとどうなるか計算してみます。夜の場合は実験の結果だけを使えば良いでしょう。朝に止めると流石に夜にはお湯も冷めてそうなので再度湯沸かしは必要です。217W×7時間×30日となり、45.57kWhとなります。911円です。メンテナンス費を足すと1111円となり、SHARPの加湿器と大差ありません。また、OFF時間が短いのでSwitchbotを使って電源をON/OFFするなど別の制御を入れれば更に消費電力も抑えられそうです。これは次回以降に実験します。

これに加えて例えば太陽光パネルを積んでいて電力が安かったり、深夜料金を適用させると更に電力が安い、といった人もいると思います。クエン酸は100円ショップにもあるのでそれを使えば更にコストは下がります。
一方で昨今の電気代高騰のように電気代の変動によるリスクもあります。また、SHARPの加湿器は24時間稼働ですし、空気清浄機能も付いています。フィルターも2シーズン使ったりサードパーティー製の安いものを使う手もあります。なので単純なコスト比較は非常に難しいでしょう。

使いどころ

結論として、加熱型加湿器は電気代は高いがメンテナンス費が安い、と言えます。例えば超音波式の加湿器であればメンテナンス費も電気代も安い、という特徴がありますが、その分頻繁に洗わないと雑菌増殖のリスクがあります。これはSHARPの加湿器のような気化式でも同様で、超音波式ほどではないですがフィルター交換や洗浄を怠ると雑菌増殖のリスクがあります。加熱型は構造上雑菌が増殖しないのでメンテナンスをある程度サボっても健康リスクはありません。乳幼児や高齢者など健康リスクの高い人がいる環境で、かつメンテナンスをサボりがちな人にオススメできます。
加熱型加湿器をオススメできるのは下記の人たちです

  • 太陽光パネル設置済み、深夜電力などの理由で電気代が抑えられている人

  • フィルター交換等のメンテナンスが面倒で電気代で解決したい人

  • 健康リスクを抱えていて雑菌増殖を徹底的に抑えたい人

まとめ

加熱型加湿器は消費電力は多いですがメンテナンス費を考えるとそれなりに使い物になりそうでした。
ただし自動モード(特にひかえめ)に関しては制御ができていない可能性があるので使用には要注意が必要です。
部屋の大きさにもよりますが連続モード(弱)で十分な加湿量が得られるので、時間を限定して使うような方法が良いと思います。


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