英語学習はメモリを筋トレで増やす作業

私は学生時代に英語が大の苦手で大変苦労したこともあったので、社会人になってからガッツリと英語学習に取り組みました。
その結果、TOEICとしては500点台→700点台くらいの上昇だったのですが海外ベンダーとの打ち合わせ、海外出張、プライベートでの海外旅行についても不便することがなくなるようになりました。
結論から先に言うと「英語完全上達マップ」をやれば良いだけです。

この英語上達完全マップのトレーニング法とその狙いをしっかりと理解した上で毎日コツコツと取り組めば上達します。
この学習法は人によって捉え方は違うと思いますが、特にLLMを扱うようになって分かってきた自分なりの解釈とコツを載せておきます。
(完全に自説なので何かしらの学問に基づいたものではないことに注意してください)

会話のAttentionとメモリ

英会話に限らず、日常会話のときに私たちはいわゆるAttentionを作成しています。例えば
「おはよう。今日は午後から地域の清掃活動があるから外出するけど、昨日の餃子が残っているから食べてね」
と言われたとすると、

  • 外出する← 清掃活動、午後

  • 餃子←食べる

というような、意味や単語の関係性を表すAttentionを作成し、話の内容を理解しています。このAttentionに従って自分の次の回答や行動を決めていくのです。さて、Attentionを作るときに必要なのがメモリです。メモリはその名の通り何かを覚えておく場所です。このメモリは例えば100単語分を覚えておくとかそういうものではなく、せいぜい5単語ぐらいしか覚えていません。メモリに格納された言葉を逐次的にAttentionに変換しながら会話を聞いて理解していくのです。
先ほどの例だと

  • 「おはよう」← 即座にAttentionに変換

  • 「今日は午後から地域の清掃活動があるから」←午後、清掃活動という情報をAttentionに変換

  • 「外出するけど」←「午後、清掃活動」というAttentionに「外出する」を関連付けする

といった感じで逐次的に処理していきます。
このAttentionに関する部分は言語非依存なものになります。つまり、午後、清掃活動という部分はAfternoon, Clean-up Activityみたいな単語だったとしても頭の中にある「午後、清掃活動」というイメージは変わりません。ちょうど、Tokenizeされた文章のように、意味そのものをあらわしています。このAttentionを正確に作ることができれば英語の文章を聞いて意味が理解できるのです。

初学者が英語を聞いても理解できない時の理由は、メモリ不足Attention変換エラーが大半で、残りが知識不足によるものです。
「Good morning」だけなら理解できます。「I like sushi」も理解できるでしょう。ただ「I’ll be going out for a community clean-up activity in the afternoon today」となると分かりません。これは文章を読めば理解できるのですが、言葉で聞くと理解できなくなります。

メモリ不足

メモリ不足を認識するにはリピーティングが一番です。先ほどの「I’ll be going out for a community clean-up activity in the afternoon today」の英文発話を聞いて、そのままリピーティングできればメモリ量として十分ですが、なかなかいません。TOEICが高得点の人でもこのリピーティングができない人はたくさんいます。逆にTOEICの点数が低くても英会話が得意な人は難なくリピーティングできます。一方で「Good afternoon」「I like sushi」ならリピーティングできるはずです。これがまさにメモリ不足です。英文をそのまま保管しておくメモリ領域が足りないのでリピーティングできないのです。
また、日本語の「今日は午後から地域の清掃活動がある」だけであれば完璧にリピーティングできる人が多いでしょう。しかし英語になると、文法や単語の意味が全部分かっていたとしてもリピーティングできないのです。つまり、日本語と英語のメモリは場所も種類も違うので同じ場所に入れることはできないのです。
この理由は英語の構文が違うだとか、文化が違うだとかいろんな理由がありますし、本によっては「英語脳」だとか「ネイティブ思考」みたいな形で書かれています。私はこれを「Attention変換回路の違い」と捉えています。これは後ほど説明します。

さて、日本語と英語でメモリの場所が違うので、これまで日本語で培ってきたメモリ容量は使えません。なのでまず「メモリ容量を増やす必要がある」のです。

筋トレによるメモリ増量

メモリの増やし方にもリピーティングが一番有効です。もしかしたらもっと良い方法があるのかもしれないし将来的に発見されるかもしれませんが、今のところはリピーティングしかありません。
ただし、いきなり難しい英文のリピーティングは意味がありません。筋トレをするときに30kgのウェイトを持ち上げられないのに200kgからスタートしても意味がありません。まずは20kgから始めます。
英語学習も同様にまずは自身のメモリ容量を把握するところから始めましょう。1単語、2単語、3単語、・・・と増やしていき、自分の限界が何単語レベルなのかを見極めます。そしてちょうど出来たり出来なかったりするレベルの少し下ぐらいからスタートしましょう。あとは反復のみです。筋トレと同じように何度も繰り返すことで破壊と再生が行われ、より強靱になっていきます。1週間で成果は出ないでしょう。1ヶ月経っても出ないかも知れません。ただ、3ヶ月すれば必ず成果は出ます。仮に出てないとしたらやり方を見直しましょう。

メモリを増やしながらやること

いくらトレーニングしても増やせるメモリには上限があります。日本語でも10分のスピーチを一言一句覚えるようなことはできません。500kgのバーベルを上げられる人はいません。英語の場合はせいぜい7〜8語程度で十分です。それよりも「Attention変換エラー」と「知識不足」の解消に臨んだ方が効果は高くなります。

Attention変換エラーの削減

メモリはいくら増えてもキューの状態なので、後から言葉が追加されると先に覚えたものは出て行ってしまいます。なので一定量のメモリをAttentionに変換していくのですが、このときに変換を間違える、つまり意味解釈に失敗するのがAttention変換エラーです。
変換エラーの原因は様々です。Attention変換はメモリにある言葉だけで変換しません。これまでに聞いた会話から作られたAttention、そもそもの前提条件、個人が持つ背景知識などを使って変換します。ですので原因はたくさんありますが、英語が苦手な人の場合は大半が「Attention変換回路の違い」によるところが大きいです。
よく、英文は逆から訳すと日本語にしやすい、というようなテクニックが紹介されるように、英語と日本語は基本的に単語の登場順が逆です。もちろん、日本語にも英語にも倒置のように逆転させる文法があります。しかし、無意識的に行われるAttention変換は基本的な流れで行われます。
逆転して訳せばいい、という理解のままにメモリに格納された英文を逆から辿るようなことをすると、変換に時間がかかってメモリから単語が抜け落ちてしまいます。かといって日本語の解釈を行う「Attention変換回路」に英語を入れると変換エラーが発生します。
TOEICや英検は得意でも英会話が出来ない人の多くはこの「Attention変換回路の反転使用」と「日本語文法Attention回路の拡張」によって英語能力を獲得した場合が多いです。この場合、文章を読んだりリスニングしたりすることは得意ですが自分が発話するのに苦労したり、講演や映画のような長い時間の変換では疲弊する、という特徴があります。
Attention変換エラーをどうやって減らすか、というと、これは「英語専用のAttention変換回路を作成する」のが一番です。先述したようにAttentionに格納されているものは言語非依存です。そのため、英語を聞いてAttentionに変換するときに、英語にあった変換を行う回路を自分の中に作る必要があります。いわゆる「英語で聞いて英語で理解する」というものになりますが、脳内での会話を英語にする必要はありません。Attentionは言語非依存ですので脳内での思考プロセスも言語非依存です。

ではどうやって回路を作成すればいいのでしょうか?そうです、筋トレです。何度も繰り返しAttentionを作ることで回路を作成し、それを強化していきます。これまで英語を学習してきた人は、実はこの英語専用のAttention変換回路は既にできているはずです。とても小さい回路かもしれませんが、既にある回路を大きくしていくのです。このときに大事なのが「シャドーイング」になります。ただのリーディングやリピーティングではどうしても日本語のAttention変換回路を使ってしまいがちです。シャドーイングをすることでメモリの中身を常に流れるような状態にし、日本語のAttention変換回路では解釈できない状態にします。一方でシャドーイングしながらでも英文の意味はイメージしておくことで、それらを結びつける変換回路を自信の中に作っていくのです。
この作業も簡単なものからスタートします。自分がシャドーイングできるレベルの英文を選んでゆっくり強化していきます。繰り返しますがいきなり200kgのバーベルを上げるのではなく、まずは40kgから上げるようにするのです。

知識不足の解消

最後に知識不足を解消していきます。知らない単語、表現などはいくら英文を聞いてもAttentionを作ることはできません。また、日本語にはない考え方、表現、感情などもあるので、既存のAttentionに紐付けるだけではなく新しいAttentionを作成する必要もあるでしょう。
これに加えて、知識不足の解消は「メモリ使用量の節約」にも役立ちます。例えば、「I wish you success」という文章をメモリに格納するときに、一文字ずつ格納すると15文字分のメモリを消費します。単語毎に数値(Token)を割り当て、Tokenizeすれば4つのメモリで済みます。加えて「I wish」という表現やそもそも「I wish you success」という表現単位でTokenを割り当てれば更にメモリを減らすことができるのです。
Tokenizeすることによるメモリ使用量の削減はAttention変換を早めることにもなりますし、間接的に利用できるメモリ容量を増やすことに繋がります。

知識不足の解消に最も有効なのが「瞬間英作文」です。文法や単語の意味というのは聞いただけでは半分も理解できていません。実際に使うことで頭の中にAttentionとAttention変換回路を作成して意味を理解するのです。また、瞬間英作文を繰り返していくとパターンとして暗記できるようになります。いわゆるパターンプラクティスです。つまりはよくある表現に対してTokenを割り当ててAttention変換を効率化できます。Tokenizeされた定型文を増やすことで、リスニングのときのメモリ使用量の削減も同時に行えるのです。瞬間英作文はアウトプットを鍛えるだけではなく、インプットの性能も向上させることができるので必ず取り組みましょう。

リピーティング・シャドーイング・瞬間英作文

ということで、結論としては「リピーティング」「シャドーイング」「瞬間英作文」を繰り返しやりましょう、ということになります。つまり結論は最初に示した通りで、「英語完全上達マップ」をやれば良いです。
ただし、ただ淡々と書いてあることをやるだけだと不安にもなるし実感も湧きにくいと思います。自分の中のメモリ容量を筋トレしている、というイメージをもって英語学習してみることをオススメします。


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