【論説】合気ニュースとは?

文・合気ニュース編集長 スタンレー・プラニン 



(1984年 季刊『合気ニュース』61号より)
  ※所属や肩書きは、季刊『合気ニュース』に掲載当時のものです。


 先日、ある老紳士のインタビューを行なった際、面白い出来事がありました。約3時間にわたる会見を終え(その方は、合気道の歴史や開祖に関する質問に、親切に、辛抱強く答えて下さいました)、私たちが帰り支度を始めた時、その方がふと、「ところで・・・あなた方は一体どなた?」と聞かれたのです!

 私たち「合気ニュース」は一体何者なのか――そう思われる方も少なくありません。ということで、ここで、一度『合気ニュース』の歴史をふり返ってみたいと思います。

 『合気ニュース』の出版に至ったそもそもの始まりは、私が初めて来日した1969年の夏にさかのぼります。それは、大先生(合気道開祖・植芝盛平)が他界された2ヵ月後のことでした。大先生にお会い出来ない悲しみと失望で、私は来日計画を取り止めてしまおうかとさえ思いました。しかし来日を実行し、羽田空港に着くや、さっそく本部道場にタクシーを走らせた、あの時の胸の高鳴りを今でもよく覚えています。

 稽古に精進すること以外に私が目指したことは、私個人の興味もあって、大先生や合気道界の著名な師範に関する、書籍、記事、写真、映画等の資料の収集でした。しかし私は無名でしたし、語学力にも限界があり、日本のしきたりにも疎く、このような資料収集はなかなか困難でした。

 こうして日本での10週間が過ぎ、アメリカへ帰国した私を待っていたものは、陸軍の召集令でした。

 当時アメリカはベトナム戦争に突入しており、私が送られた先はエチオピアでした。エチオピアの北部の通信基地で18ヶ月という歳月を過ごしました。その後、カリフォルニアのモントレーにある語学研究所に勤務し、1年後ようやく市民生活に戻ることができました。

 そして、モントレーに落ち着いた私は、1974年4月、『合気ニュース』(英語版のみ。当時の表題は”AIKI NEWS”)を出版することになったのです。

 話は前に戻りますが、東京のある新聞に、『変わりダネ日本人』と題する記事が掲載されていました(17回連載記事のうち最初の部分はロバート・フレガー氏から、残りは国会図書館で入手)。それを私の弟子であり友人の寺沢勝明氏の協力を得て英訳したのを皮切りに、私たちは次々と記事を翻訳し、ガリ版刷りにして同じ地区にいる合気道修行者に配ったところ、アメリカ人の修行者たちから、もっと大先生や合気道について知りたいという声があがったのです。

 こうした研究的プロジェクトは私自身にとってもたいへん有意義なことであり、その上、かなり広い範囲での反響を呼ぶかもしれないということで、これをもとに情報誌の出版も実現できるのではないかと考えました。こうして『合気ニュース』が生まれたのです。

 初期の『合気ニュース』は、8ページそこそこの、しかもタイプライター打ちの、じつに”謙虚”なものでした。『合気ニュース』は最初の何年かをなんとか切り抜け、すこしずつ地域レベルから国際レベルへと発展していきました。

 1977年の来日直後(この年から日本に長期滞在)、『合気ニュース』を日英二カ国語版としました。その理由のひとつは、出版する原資料の大半が日本語であるということです。私は常に歴史家の目でこの仕事に携わってきました。私たちがいなくなったあとも、『合気ニュース』に記録された資料はいつまでも残ってほしいと思っています。さらにこれを日英対訳版にすれば、正確性を期することができます。英語は情報を他の文化へ伝える手段であり、これによって合気道の国際化の実現が考えられます。

 また、他の理由としては、二ヶ国語版は、日本と外国の読者に互いの存在を気づかせ、合気道界における互いの役割を自覚させるということです。

 最後の理由としては、二カ国語版ということで、厳しい縦社会である武道界で、本来ならば許されぬ尊敬する多くの先生方とお話しをすることを可能にしてくれるということです。

 さて、『合気ニュース』の内容ですが、どのような基準で資料は選ばれるかと言いますと、まず大先生に関すること(写真、伝記、大先生がご自身で書かれたもの)は何でも誌面に登場します。合気会本部道場、養神館、養正館、氣の研究会、万生館などの活動情報や、海外における合気道の動きまで、さまざまな情報が盛り込まれます。

 最後に、合気ニュースの「中立性」についてお話ししたいと思います。
 「中立性」という表現は、私たちの合気道流派に対する態度を述べる時によく使われますが、「独立」という表現のほうがもっと的確かと思います。

 なぜなら、私たち自身も他の人と同様、意見や偏見や好みもあり、また方向性も持っているからです。つまり独立した視点で編集にあたっているということです。また、私たちと異なる意見の方たちと対話することは、刺激的であり有益であり、それはこれまでの経験で明らかなことです。私たちと意見を異にする方たちに同調はしませんが、どのようにしてこの方たちがそのような考えを持つようになったかを理解してきたつもりです。これは非常に大切なことで、相手の意見を正確に言葉に表わしてこそ相手を本当に理解したということです。これが私たちの目指すゴールとなっています。

 このように、さまざまな考え方を解説し提供するという私たちの活動が、読者の合気道への理解を深め、その面白さを味わうための一助となってくれることを願っています。

  ―― 季刊『合気ニュース』 №61(1984年)より ――

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