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森靖「Twister」(PARCEL/馬喰町)2023.5.27-7.11

The Between - Liberty, circa 2022-2023, camphor, found wood, clay, 250 x 75 x 84 cm
Melt & Messy - Balzac, 2023 camphor, 190 x 75 x 90 cm
3MMM - Melt & Messy, 2023 camphor, 273 x 160 x 140 cm
Portrait - Finger Statue, 2023 found wood 2 x 1.5 x 5 cm
3MMM - Rivalry, 2022 camphor, 285 x 100 x 190 cm

この度PARCELでは2度目となります彫刻家、森靖の個展「Twister」を開催いたします。
新作群とともにオーストラリアのNGV(ピクトリア国立美術館) に収蔵が決まっている作品も会期前半のみではありますが、展示いたします。
兼ねてから森の作品のモチーフはアメリカのポップアイコンから中世古典彫刻まで、非常に長い時系列の上に成り立っており、その要素を縦横無尽に行き来しながら我々に「美」 などの根源的な要素や、記号論的な思い込みや意識に対して問いかけます。
本展のメインを構成するのは2体の大型彫刻作品です。 その高さは人類が医学的な記録上現存する最長の記録272cmに迫ります。 森いわく「人間が形を留められる範囲で、美のMAXのスケールを表現している」としていますが、それを可能としているのが作品に使用している、 人間の最高齢の記録である120年に近い樹齢の木でもあります。 大型作品にこだわり続け制作を続けている森は 「指先で容易に画面越しのイメージを拡大縮小できる時代において、スケールを変えるという感覚は生活の中で今は当たり前のように存在している。 あまりにも画面の中での世界で生活をする時間が長くなっている今だからこそ、現実においてのスケールを実感することが必要だと感じている」と言います。 小さな仏像から巨像までを手がけた運慶の没後800年を2024年に迎える中、同じく手のひらに乗るサイズから3M近い彫刻を手がけることに、デジタル技術の恩恵の元生活をしている今だからこそ森は必然性をより強く感じているのです。
また使用する素材の物質性や、 古典彫刻からポップアイコンまでの美の変遷や価値観など、 一つの作品に閉じ込めまた森の作品は様々な事象がツイストした (ねじれた)状態で共存しています。 森の制作プロセスの特徴の一つとして即興性が挙げられます。 当然ある程度造形的な意味での完成形を想定しながら制作は進行していくのですが、その過程で予定調和 (初期の完成像) を一気に転覆/転換させる要素 (パーツ) を追加したり、 あった物を削ぎ落としたり、というツイストを段階的に加えるプロセスを反復しながら最終形へと向かいます。
これら 「完成形態」を決定するところに森独自のaestheticがあります。 美術文脈のみならず、大衆的な「美」に対する意識についても森は持論を展開します。
「50'sのマリリンモンローの映像を見ると確かに美しいのだが、後に俳優や芸人のするマリリンモンローのコスプレやモノマネでは、マリリンモンロー本人よりもマリリンモンローのイメージに合っているように感じることがある。
その様な美しさに関するカリカチュア的な事に、 美の可能性があると思う。」 本物と比べて歪んだ状態にこそが本物以上に本物として見られ、視認されやすい状況(形状)に森は魅了され、 作品にも反映されています。
また人為性についても 「終局間近になった棋士たちが敗北を自覚しつつ美しい投了図を目指して何手かコマを進める。 これは数値化するのが難しい"美の領域”だ。」 (後藤正治著)を引用しつつ森は「自然物の塊を目の前にした時、圧倒的な存在感と質量と形体に打ちのめされてしまう。 それでも僕は彫刻家としてカタチにしていく事で、美の領域を探っていければと思う。 そして、今後もどんなにテクノロジーが進んでいっても、技術を制限すればするほど人間にしかできない美的感覚からくる表現が出来ると思う。」 と語ります。
画一的な美が存在せず、 多様性が求められている時代において、森は彫刻を通して我々に対し「美」とは何で、誰に対し、どのようにして示すものなのかを改めて問い直すのです。

森靖 Osamu Mori
1983 愛知県生まれ
2009 東京藝術大学大学院彫刻科修了
現在 東京都を拠点に活動


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