見出し画像

「鼻うがい」の歴史と効能

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
近年健康法や慢性上咽頭炎対策として注目されている「鼻うがい」。市販グッズも多々ありますが、本当に効果はあるのでしょうか?
と言うご質問を頂きましたので、鼻うがいについてまとめてみました。

※本記事見出し画像はOpenAI社のDALL-Eで生成しました。本文記載には生成AIは利用していません。

【インド医学としての鼻洗浄】

歴史的に一番古いと思われる鼻うがいは、5000年以上の歴史を誇る、インド・スリランカ発祥の古代インド伝統医学、アーユルヴェーダにおける鼻ヨガの手技です。クリヤとも言われ、身体を浄化する手法とされます。

クリヤの鼻洗浄は、ジャラネティ(Jalaneti)として知られており、伝統的には平たいティーポットの様な、専用のネティポットを使って行われてきました。

ジャラネティはサンスクリット語で「鼻洗浄」を意味し、ネティポットを使用して塩水を一方の鼻孔に注ぎ込みもう一方の鼻孔から流し出すことで鼻腔内を浄化する技法で、インドや東南アジアでは歯磨きと同じくらい日常的に行われて来ました。

インドでは鼻洗浄について多くの医学研究がされており、濃いめの高張食塩水を使うことで、鬱血を改善させたり、感染症およびアレルゲンを除去する効果が高まるとされています。体液と同等の濃さの生理食塩水は、毎日の衛生習慣に良いとされています。

【西洋医学としての鼻洗浄】

西欧諸国では約100年ほど前に鼻洗浄が紹介され、処置として使われたりしましたが、1940年代にペニシリンが発見され抗生物質が普及すると、鼻洗浄は使われなくなりました。
その後、抗生物質の乱用が常在菌環境のバランスを崩してしまったり、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の様な厄介な薬剤耐性菌が社会的に問題視される様になり、自然で薬物を使用しない鼻洗浄が、再注目される様になりました。

インドの伝統的なネティポットのほかに、専用のスプレー器具や加圧ボトルを用いた手技が行われており、副鼻腔洗浄や慢性上咽頭炎に対する処置として指導されることも多くなっています。
鼻洗浄を定期的にすると、副鼻腔炎や上咽頭炎が軽減し、投薬への依存度が低くなることが報告されています。

慢性上咽頭炎が改善することで、花粉症の症状が和らいだと言う報告もありますので、花粉症に苦しんでいる方はぜひやってみてください。
既に鼻詰まりがある場合には、水が通りにくいと思いますが、下記の様に3%食塩水を使うことで、より早く通りが良くなります。

【実際の手技や注意点】

0.9%程度の生理食塩水を30-40℃程度にして、右の鼻穴から入れて逆の鼻から出します。水道水をそのまま常温で使うと、ツーンもした痛みや頭痛の様な感覚が起きますが、体温に近い温度の生理食塩水を使うと、違和感はほとんど無くなります。

ネティボットを使う場合は、洗面所などで下を向いて、右側を向いて右鼻穴を左鼻穴より高くして、注ぎ入れますが、ポンプや加圧容器を使う場合は、下向きでやって良いと思います。

右から左に通したら、左から右にも通します。鼻から口に流すやり方を行う人もいますが、難しいですので、無理にやらなくても良いです。
用意した食塩水を通し終わったら、顔を下向きにして左右に顔を傾けたら、上半身を前に思い切り傾け頭を下にする様にして左右に顔を傾けると、副鼻腔内に残った水がタラリと流れ出て来ます。
その後に鼻をかんでおくと良いですね。

アーユルヴェーダでは、鼻洗浄後にキュアリングした白ごま油を少量鼻から吸い込んで鼻粘膜を保湿させる手技も行われます。鼻が乾燥しやすい人は、やられても良いと思います。

最近の知見では、鼻詰まりには3%の高張食塩水の方が早期に改善する、と言うことで、3%食塩水を使った鼻うがいや、3%食塩水を点鼻用容器に入れて適宜噴霧する、と言う様な使い方が行われていますので、予防と言うよりは鼻づまり解消を目的にする場合には、3%食塩水で行ってみるのも良いと思います。ちなみに0.9%でも中長期的な効果は変わりません。3%食塩水の方が少し早く症状が軽くなる傾向にある、と言うだけです。

米国の報告で、品質管理のされていない水道水を使って鼻うがいをした人がアメーバ感染を起こして亡くなったと言う情報から、日本でも水道水での鼻うがいは危険と言う情報もありますが、日本の水道水は品質管理が厳格なので、問題ありません。残留塩素が気になる人は、塩を入れた後に指でかき混ぜれば、皮膚の蛋白質と残留塩素が反応してなくなります。

むしろ井戸水やボトル入りミネラルウォーターの方が、品質管理はかなり緩いです。
非常時やキャンプ時などに、川や湖の水をそのまま鼻うがいや飲料水として使うのはやめましょう。その様な場合には、しっかり煮沸させた上で濾過して冷ましてから使うと良いです。

アーユルヴェーダでは、蓋を開けた鍋ややかんを火にかけて10-15分沸騰させ少し冷ました白湯を、最高の飲み物として推奨し、冷めて時間が経った水は良くないとされます。
個人的には古代インドでは、高度に品質管理された衛生的な水は基本的に無かったので、感染症や中毒のリスクを避けるために、こう言う知恵として残ったのだと考えています。
もちろん冷水より温かい白湯の方が体に優しいと言うのもありますけどね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?