ゆとり教育の功罪!ー天下の愚策がもたらしたもの:学力低下と受験加熱、劣等感。 Part3

 前回の「ゆとり教育」が行われていた頃の授業の様子に、愕然とした方もいらっしゃるかと思います。私の子どもの場合は、この小5で「ゆとり教育」の授業が終わったので、被害は最小限だったかも知れません。

「ゆとり教育」がもたらしたもの、それは、生徒の学力の著しい低下や、公立小・中学校に任せられない、と考える保護者が激増、かえって中学受験が加熱しました。子どもの小学校は3クラスでしたが、世田谷区の富裕層が多く住む地域だったせいか、卒業時95名中57人が、私立か国立中へ進学、半数も地元中学へ行かなかったのです。

 換言すれば、塾や家庭教師に行かせられない家庭では、まるで私が幼稚園の頃のような授業しか受けられない日が、朝から晩まで続いていたのです。

 国際会議で知り合った外国人に「日本は教育が熱心なことで有名だね」と言われ「ゆとり教育」に対応する英語が見つからず、私なりに”Stress-Free Education"と訳したのですが(後にnativeに意味はこれで良いと)「π=3」と教える、不等号も教えない、と伝えると、”Why !? " と驚かれました。

 批判が渦まく中、とうとう文科省もこれを断念。中学生が文科大臣にあるイベントで「ボク達のずっと前の世代と、ボク達より下の世代は、詳しく学べ、ボク達の世代だけ劣ってしまうこと、謝って下さい!」と訴えた場面がTVに映りました。すると、時の大臣は「申し訳ありません」と中学生達に頭を下げたのです。

後に、SNSが発達すると、モノを知らない人間に対し「オマエ、ゆとりだな?」という侮辱が流行りました。実際、冒頭、私の指導した院生達は数学の教職の免許を持っているのに、行列もベクトルも知らない、と。私がベクトルで、解説しようとした時、彼等は項垂れていました。

 教育の改革は必ず副作用が伴うものですが、この愚策は、将来の教職を取る学生達の質まで下げた。その質の低い教諭に、未来の小中学生が教えられる、すなわち現在30歳を過ぎた教諭世代は、自分が習わなかった単元を、教えなければなりません。

 楽をしたのは、学校は週5日制で難しいことを教えないで済んだ、無能な教師達です。当時「教科書ガイド」があったので、授業の予習もしなくて済んだ訳です。

その後、IT技術がAI(人工知能)を産み、人間の創造性を育てるはずだった「ゆとり教育」は、世代間の学力差や知識差をも生み、ある世代の劣等感を植え付けた。まさに、百害あって一利無し、です。

この議論を本格的にすると、キリがないのです。現代こそAIに取って代わられないよう、replacebale(取り替えられる)でない人材、機械にできることは機械に任せ(今やセルフレジの時代)、美容師や芸術家など、百点がない領域で勝負せざるを得ない時代になりました。

「リスキリング」という言葉が流行っていますが、「サラリーマン大量解雇の時代」が来る前に、自分に「学習」という投資をしなければ、世の中から不要とされてしまう、厳しい時代が到来したのです。人的資源しかない、日本だからこそ、余計に、です。

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