ビシエド 本当に衰えたのか?【2023ドラゴンズ個人成績分析 - 20】
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個人成績分析の第20弾は、終身名誉助っ人日本人ことビシエド選手です。
昨シーズンは本当に苦しい1年になりました。間違いなくキャリアワーストの成績で、複数回の2軍調整を経験しました。首脳陣から衰えを指摘する発言もありましたが、昨年の成績は果たして本当に衰えによるものなのか、データをもとに考察していこうと思います。
2023シーズン成績まとめ
ビシエド選手の2023シーズン成績はこちら。
出塁率はリーグ平均を上回っているものの、長打率・OPSがリーグ平均を下回っています。ビシエド選手らしくない数字と言わざるをえません。
一方で、Whiff%(空振り率)やK%(三振率)はリーグ平均よりもはるかに低く、コンタクト能力が依然として高いことを示しています。また、わずかながらBB%(四球率)もリーグ平均を上回っていました。
チャンスに弱かった?
まずはランナーのシチュエーション別の成績を見てみます。
得点圏の方が、ボール球のSwing%が低く、Whiff%も低くなっており、結果としてBB%が向上しています。にもかかわらず、OPSは得点圏の方が低くなっています。
原因はBABIP(フェアゾーンに飛んだ打球のみを母数として算出した打率)です。通常BABIPは3割前後に収束することが知られていますが、ビシエド選手の得点圏BABIPはなんと.212。。。得点圏であまり打てていない印象でしたが、「運が悪かった」という要素も多分に含んでいそうです。みんなで祈りましょう。
対ストレート/対変化球別スタッツ
続いて、対ストレートと対変化球に分けて打撃成績を見てみましょう。
対ストレートに関してはリーグ平均と同程度のOPSになっています。内訳を見てみると、打率がリーグ平均を上回っている分出塁率の数字は高いですが、長打率が芳しくありませんでした。結果として、OPSはリーグ平均をわずかに下回るぐらいの数値になっています。正直物足りないですが、それほど悪い数値ではありません。
一方で、対変化球のOPSは.581と、リーグ平均を大きく下回る値です。Whiff%はリーグ平均よりもはるかに良い数値なので、コンタクトはできているけどそれがヒットになっていないと考えられます。こちらも出塁率はリーグ平均と同程度ですが、長打率がリーグ平均を大きく下回っています。
どうやら、変化球に対する打撃を見直す必要がありそうですね。
明らかに苦手な球種が
次は変化球の球種別で打撃成績をまとめてみました。ボールゾーンのSwing%・Whiff%・OPSについては、カッコ内でリーグ平均と比較しています。
シンカー系については対象打席数が0だったので省いています。
どうやら得意/不得意が二分されているようですね。
スライダー・カーブ・フォークについては、リーグ平均を上回るOPSをマークしています。一方で、カットボール・チェンジアップ・シュートは苦手にしているようです。この違いは長打率の差に表れています。後者の3球種は明らかに長打率が低いですね。
さて、苦手球種の中で、チェンジアップは少し性質の異なるボールですが、カットボールとシュートは似ています。これらはファストボールの一種であり、手元で速く小さく変化する球種です。これは重要な傾向と言えるでしょう。後ほど考察します。
スピードボールは得意・中速帯が苦手
続いて、球速帯別に打撃成績をまとめてみました。
実は150 km/h以上のスピードボールに対しては、8割近いOPSを記録しています。剛速球はかなり得意にしていたようです。
一方で意外なことに、140~150 km/hぐらいの中速帯のボールになるとOPSが一気に低下します。この球速帯には、先ほど挙げたファストボール系の変化球が含まれます。これがこの球速帯の打撃成績を悪化させていた原因と推測されます。
ビシエドは衰えたのか
さて、いよいよ本題です。果たしてビシエド選手は衰えたのでしょうか。
150 km/h以上の速球には十分対応できている
中速帯のボールが苦手
特にファストボール系の変化球が苦手
コンタクトに優れ、速球に強い所を見ると、ビシエド選手が衰えたとは思えません。もちろん全盛期は2018年なのでそこから比べると衰えたのかもしれませんが、2020~2022の3年間は一貫して.780程度のOPSをマークしています。2023年だけが成績を落としているのです。
ビシエド選手は体をボールにぶつけるように前に体重移動しながらスイングする点が特徴的です。これは仮説ですが、ビシエド選手のこのスイングは、ファストボール系の変化球を変化しきる前に捉えるために有効だったのではないかと考えます。
そして昨年、ビシエド選手は現首脳陣から「このスイングでは打てない」と指摘を受け、体重を後ろに残したスイングへと矯正されていました。これによって、ファストボール系の変化球を捉え損ねるようになってしまったのではないかと推測します。
一方で、150 km/h以上の速球に対して強かったのは、上記のスイング矯正が有効に働いた可能性が考えられます。ビシエド選手にとって、速球を捉えることとファストボール系の変化球を捉えることはある種トレードオフの関係にあるのかもしれませんね。とはいえ、昨年のスイング矯正で結果が出ていない以上、以前のスイングに戻すことを考えた方が良いかもしれません。
まとめ
最後まで読んで頂きありがとうございました。
ビシエド選手の2023シーズンをまとめると、
Whiff%やK%は優れた数値
カットボール・シュート・チェンジアップが苦手
150 km/h以上の速球に強いが、それ以下の中速帯のボールに弱い
衰えたのではなくスイング矯正が悪い方向に働いたのでは?
本塁打数の低下が目立ち、それをもとに「衰えた」と指摘されているようですが、OPSの数値はここ数年変わっていません。スイングとメンタルを元に戻せば、今でもやっぱり.780ぐらいのOPSは残してくれるだろうと思っています。
今年はファーストに中田選手を迎えましたが、1年間フルで出続けるのは難しいと思うので、ビシエド選手の復調がカギになってきます。ビシエド選手が中軸にドッカリと座っている打線をもう一度見たいですね。
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