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井上真央さん主演映画『大コメ騒動』の記事のコメ欄に的外れな意見が殺到した件

井上真央さんが主演した映画『大コメ騒動』の公開御礼イベントの記事が『Yahoo!ニュース』で配信された。

この記事のコメントを読んだ時、目が点になり開いた口が塞がらなかった。なぜか「米抜きダイエットの良し悪し」や「米農家への影響」などの的外れなコメントで溢れかえっていたのだ。

タイトルの“米断ち”という言葉に釣られ、脊髄反射的なコメントが殺到したのだろうか。そうだとしたら論外だが、そういう話ではないことぐらい記事を読めばわかるはずと読み直してみた。

井上は役作りのため撮影期間中は“米断ち”をしていたそうで「お米を断ったら、体重がどんどん落ちていきました」と回想。

この文だけではどういう役作りかわからず、痩せるために“米断ち”したと早合点する人もいるかもしれない。では、手前の文を読めば誤解しないだろうか。

公開の縁起を担ぎ、12万2000円の電気釜を購入したという室井は「炊き上がりが素晴らしくて、103年前のおかかたちに食べさせてあげたいなあと思いながら、自分が太ってしまった」と笑って打ち明ける。

共演者の室井滋さんが「高価な電気釜で炊いたお米が素晴らしく(美味しく食べた結果)太ってしまった」とコメントしており、この時点で「室井滋さんはお米を食べて太ってしまい、井上真央さんは“米断ち”して痩せた。どうやらダイエットの話らしい」と早合点した人たちがいたかもしれない。

だが、井上真央さんのコメントには「役作りのため」と書かれているのだから、どういう役なのか、どういう映画なのかを記事から読み取るべきだろう。その記述がないか、記事を遡ってみる。

本作は、日本最大の民衆蜂起と言われる1918年の米騒動を題材にした痛快エンタテインメント。高騰する米の価格に我慢の限界を迎えた富山に住む漁師のおかか(女房)たちが、家族の腹を満たすために立ち上がるさまを描く。

「高騰する米の価格に我慢の限界を迎えた」「家族の腹を満たすため」から“米断ち”の意図がある程度読み取れるだろう。だが、これを読み、理解し、役作りと結びつける必要がある。誰が読んでも誤解や早合点のない文章といえるだろうか。

ここで、他のメディアと比べるため、次世代農業ライフ&ビジネス情報を配信する『アグリジャーナル』の記事を確認してみた。

井上さんが心を寄り添わせるようにして演じたのが、富山県の港町で仲仕として働く女性、いとだ。いとは、家族のために日々懸命に働くも、戦争や米価高騰のあおりを受け、やがて満足に米が買えなくなってしまう。自らはもちろん家族もお腹を空かせており、苦しくてもどかしい。そんな思いを少しでもリアルに感じ取るため、井上さんが選んだのが、“米を断つ”という行動だった。

なぜ“米断ち”したのか、その理由が非常にわかりやすく書かれている。

さらに記事は、こう続いている。

「やってみると、これが想像以上に辛くて。体力も低下し、精神的にも元気が出ないような状態でした。撮影が全て終わり、久しぶりにしっかりとご飯を食べた時、一段とおいしく感じられて。“日本人に生まれてよかった”と思いましたし、お米の大切さを実感しました」

演じる役の思いをリアルに感じ取るために“米断ち”し、それによって「お米の大切さを実感した」というコメントが掲載されている。誤解の余地がない、わかりやすい記事だ。さすが「農村を元気にしていく次世代の農業の担い手たちに向けたwebメディア」だけのことはある。

的外れなコメントが殺到した記事の配信元は『映画ナタリー』である。

芸能ゴシップ記事を配信するメディアではないため炎上目的はなかっただろうが、コメント欄がある『Yahoo!ニュース』で配信されることを踏まえ可能な限り誤解が生じない記事にする余地はあったのではないだろうか。

書き手には、この文章で伝えたいことが正しく伝わるだろうか、誤解を招く余地はないだろうかという「想像力」が、読み手には、何が書かれているのかを正しく読み取る「読解力」が求められる。だが、読み手が10人いたら10通りの解釈があると言ってよく、単語だけで脊髄反射的に反応する読み手もいるのが現実である以上(炎上目的でなければ)わかりやすく丁寧な文章が書き手には求められる。そんなことを考えさせられたコメント騒動だった。

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