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『プリズム』参加者レポート⑨

レポート作成者:伊藤優花 さん

自己紹介をしたあとに、初対面同士で漫才をする、というセクションがありました。
ファシリテーターの長谷川さんが芸人さんでもあるということが利いているワークでした。他のワークショップではあまり体験することのない新鮮さを味わい、むしろ畑違いだからこそ失敗を恐れずにやれました。
ただ、新鮮なだけではなく、「自分の素と今演じている他者の間にいる」ということを意識するには打ってつけの手法で、目から鱗が落ちました。
私は演技において憑依というものは存在しないと思っていて、仮に自分が演技をしているときにそう思ったのならそれは他者からすれば寒々しいものに見えると思っています。すなわち、常に演技をしている自分を監視・コントロールする自分がいる必要があると思っているのですが、そういう考え方の演技を志向している自分にとってとても大切な感覚だなあと思いました。
そして、テキストを使った実践的なワークでは、まず、使ったテキストの秀逸さに脱帽でした。説明的ではないのに、登場人物の関係性が浮き彫りになり、言外の部分で味付けがいかようにもできる、とてもやりがいのあるテキストだと思いました。
ワークの進め方としては、グループに分かれて2回ほど読み合わせをしてみて、その後台本を離す、というスタイルでした。
台詞が完全に入っていない状態で、流れと登場人物の人となりだけを押さえてやってみることで、「脚本がそうなっているからそうする」ではなく、感情の動きを伴って次の言動に出るときの感覚を実感しました。こういった訓練の積み重ねによって、この感覚を技術としてコントロールできるようになりたいと思いました。
ワークショップを通して、普段意識できないことを意識するという機会をいただいたな、と感じています。本当は普通に生きている中でも私たちはいろいろなことを感じながら生きているはずなのに、それを全て意識的にしてしまうと毎回必要以上に傷ついたり、意識的にする必要のない他者とのディスコミュニケーションになったりすると思います。
このように安全に、無意識を意識化したり、やり方を試してみたりできる場をつくってくださったことに感謝しています。今後も素敵なワークショップが継続することを期待しています。界隈の人がみんな健やかに演劇ができますように。

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