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cakesウラ話番外編 「読まれる文章の書き方」〜読者の方の記事を読んでコメント〜

--この記事は「無料記事」です--

こんにちは、外科医の雨月メッツェンバウム次郎です。

ここの連載は毎週金曜日、主に私のcakes連載のウラ話として書いているものですが、今回は番外編でお送りします。

さて、前回記事をご購入くださり、「私の記事を読んでアドバイスをお願いします。noteで公開していただく形で、アドバイスをいただけると嬉しいです。」と言った方がいらっしゃいました。白状すると、前回の記事をご購入いただいた方には、ご希望があれば記事へのコメントやアドバイスなどさせていただくという風にしておったのです。現に数人の方へすでにアドバイスしております。

ですので、その方の記事および私のコメントを公開したいと思います。私がどうやって連載記事などを書いているかについても多く書きました。正直申し上げて私は書くことで飯を食っているわけではないので、こういう指南のようなことを公開でやるのは趣味では有りませんが、勿体ぶるつもりもありませんのでやりましょう。

さて、まずはその奇特な方、Dug0210さんの記事です。実際にはこの方の記事を10本くらい読んで書いていますが、主に扱うのはこちらです。

記事はこちら→ 「顔なじみのお店を作る簡単なコツ」

私はこれを読んで、こんなものを書きましたので転載いたします。

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Dug0210さん

note記事をご購入いただき、ありがとうございました。記事を拝読し、いくつか気になった三つの点を挙げさせていただきます。

①改行だらけをやめましょう

②記事に「お土産」が皆無です

③あなたがどんな人か、見えない

では順にお話致します。

①改行だらけをやめましょう。

Dug0210さんの記事を読んで一番気になるのはこの点。こういう改行ばかりの記事はネット上で散見されますが、正直あまりお勧めできません。改行する心理は「少しでも読みやすくするため」だと思いますが、文の読みやすさは改行より冗長な文を推敲してまとめた方がより効果的だからです。さらに、改行ばかりしていると、推敲しまとめるトレーニングができませんよ。

例えば「顔なじみのお店を作る簡単なコツ」中の一文を引用します。

「なぜなら、

ぜひとも一度訪ねてみたいと

思っているお店リストが

今や長く長く伸びていて、

そういう機会に1つひとつ

消化していくことが

僕の楽しみだからです。」

すみませんが、読みづらい。携帯でもチェックしましたが、やはり読みづらい。試しに改行をなくすとこうなりますね。

「なぜなら、ぜひとも一度訪ねてみたいと思っているお店リストが今や長く長く伸びていて、そういう機会に1つひとつ消化していくことが僕の楽しみだからです。」

それ程長い文ではありませんが、冗長です。少し推敲させていただきますと・・・

「なぜなら、ぜひ行ってみたいお店リストが今や長く長く伸びていて、そんな機会に一つずつ消化していくことが僕の楽しみだから。」

・「ぜひとも一度訪ねてみたいと思っているお店リスト」はちょっと長いので、もっと短縮します。

・「ぜひとも」は「ぜひ」と同じ意味・効果なので「ぜひ」にします。

・文を書く技術ですが、「長く長く」と「1つひとつ」というように繰り返しが一文に2回もあると冗長に感じます。

あまり変わらないように感じるかもしれませんが、記事全体をこのようにblush upしていくと印象がかなり変わり読みやすくなりますよ。

②記事に「お土産」が皆無。

noteの前回記事にも書きましたが、Dug0210さんの記事にはほとんど「お土産」がありません。ちなみに「お土産」とは、読んで「へえー」と思ったり、「これは知らなかった、使えるなあ」と思うようなことです。

それどころか、別記事では冒頭で「手足じゃなくて、頭にならないとツマラナイ。」といきなり言われて、こちらが記事を頑張って理解しなければならないような気にさせられます。まあ多分、組織の歯車ではなく中枢の指示する側になりたいんだろうな、とは思いますがその時点で読む気を無くしてしまう。

こういう書き方は、あなたが有名人だったり学者などのある領域のエキスパートである場合にしか通用しません。ほとんどの読み手は、無名な筆者の記事の場合は「使える」内容を欲しています。私の記事が読まれるのも、人の恋沙汰を読んで自分の恋愛行動に「使う」ため。その意味では「顔なじみのお店を作る簡単なコツ」はとても良いのですが、使える点をもっと明示すると良いと思います。私がよくやる方法としては、記事の一番初めに使えるコツを書いてしまうというもの。

「コツは簡単で、誰にでもすぐに出来ます。お店を訪れるときはどんなときでも、電話で予約をしてから行くこと 」

という風に。

そして付け加えると、申し訳ありませんが記事の内容も薄すぎる。顔なじみのお店を作るためには、電話だけで十分とは私にはあまり思えません。「顔なじみ」がどこまでの程度かはわかりませんが、私がお店を気に入り、スタッフの方と関係を持ちたいと思ったらこんな風にします。

1、名刺を出しきちんと挨拶をし、相手のお名前も伺って覚える。

2、その店にかなりのお金を落とす。

3、海外旅行など行ったらお土産を買ってくる。

レストランのスタッフは、寿司屋の大将は、和食屋の女将さんは、お客さんの奴隷ではありません。一人の人間ですから、一人の人間として接します。もしあなたが「この人は大切な人だ、ちゃんと関係を持ちたい」と思った人と出会ったら、名刺を出して挨拶をしますよね。じゃあお店でも同じようにするのは当然です。

もちろんもっとも大切なのは「2、その店にかなりのお金を落とす」です。お水で良いところをウーロン茶を頼む。そのお店を大切にしてくれそうな(お金を持っている)友人を連れて行って紹介する。これらは当然のことです。人間関係って、はっきり言ってしまえばそういうことです。

③あなたがどんな人か、見えない

あなたのnoteの自己紹介文には「読書、ランニング、ミュージカル観劇、美味しいお店探し、靴磨き、文房具(特にボールペンとノート)、睡眠をこよなく愛していま...」とあります。しかし、同じようなスペックの人は申し訳有りませんが何万人もいます。これでは誰も興味を持ってくれないでしょう。

あなたがどこの生まれで、どんな本が好きで、ランニングは3kmを流すのか20kmを35分で走るのか、ミュージカルはなぜ好きなのか、なぜボールペンとノートが好きなのかがわかりません。文房具フェチなのか、手書きで書く一筆書きの迷路作りの達人なのか、ジャポニカ学習帳の回し者なのかがわかりません。

もちろん匿名で書く以上はある程度マスクをつけっぱなしにすることは仕方の無いことですが、それにしても人となりが全く見えてきません。わざわざツイッターに飛んでプロフィールを見る人はいませんからね。そして、名前も正直良くありません。Dug0210さん、ダグゼロニーイチゼロさんと読むのですか?LINEのIDじゃないんですから、まさか2月10日生まれではないでしょうがやめましょう。

人となりが見えないと、最大の購読意欲である「共感」が生まれないのです。私はまずプロフィール写真で「医師、まあまあ若い男」ということが一瞬でわかるようにしています。

記事の随所でも「アラサー」とか「都内在住」とかを書くようにしています。顔を出すことが最強の共感ツールですが、出さなくてもある程度はどんな人が書いているのかを開示するほうが良いと思いますよ。

ご参考までに、cakesなどあちこちで連載をされているフェルディナント・ヤマグチさんの紹介にはこんなことが書いて有ります。

「コラムニスト。ビジネスマンとしてバリバリ働く傍ら、日経ビジネスオンライン、Tarzan、マガジンX等に連載を抱える。深い教養とキレのある筆致への評判のみならず、本業とコラムニストとしての仕事、さらにはプライベートを両立する超人ぶりへの人気が高い。顔出しはNGで、コラムニストとして登場する際は、常に仮面をかぶっている。著書に『英語だけではダメなのよ』など。」

ビジネスマンやりつつコラムニスト?どんな人だろう、と思ってこれだけで記事を読みたくなりますよね。

以上、思ったことを述べさせていただきました。

最後に、もし書くことでお金を得たいとか、書く仕事につきたいとお思いでしたら、一つ忠告させて下さい。

書くということは、自分の人生にメスを入れて吹いた血を紙に塗りつけるということ。小手先でちょいちょいと思ったことを書いたって誰も喜びません。書き手になるためには、精神のストリッパーになる勇気が必要です。そしていつか個人を特定されて暴かれ大恥をかく覚悟もね。はあちゅうさんもイケハヤさんも凄まじい誹謗中傷の嵐の中生きています。私はcakesの書き手や、他のもの書きを何人か知っておりますが、もともとこころに小さくない傷を持っているか、もだえ苦しみながら書いている人ばかりです。

脅かすようですみません。あえて厳しく書かせていただきました。ご参考になれば幸甚です。

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書きすぎました。記事を買ってくださった感謝の気持ちを込めてアドバイスさせていただきました。

文章の書き方、記事の書き方については、ファンである紫原明子さんのこのschooの講義が素晴らしいので是非。

愛されるWebライティング -インターネットで読まれる表現力の高い文章の書き方

勝手にリンクしてしまったので後でお断りを入れます。しかし、本当に素晴らしい。

では。



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