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お見送りはいつも祈りを込めて『気をつけて行ってらっしゃい』

バリバリ夜勤もこなしつつ朝早くから夜遅くまで仕事をしていた時はあまり気にならなかったのですが、30代でパート勤務の兼業主婦になって家族みんなをお見送りできる立場になって気づいたことがあります。

それは、時間的にちゃんと見送れるのに、玄関を出て姿が見えなくなるまで家族を見送らなかった時はとてもモヤモヤするっていうことです。

もちろん、自分が先に出かけるようなときは仕方がないのですが、家にいるのに見送れないとか、声を掛けられなかったりすると、自分の気持ちが沈むことに気づきました。

縁起でもないといわれるかもしれませんが…。

もし、これが最後だったら…。

あの時最後まで見送ればよかった、気を付けてねってちゃんと言えばよかった…って悔やむ気がして。

別れ際に『気を付けてね』と言われるだけで、人は無意識に注意をするようになり、事故に遭う危険は減らせるそうなんです。

私の母は、2018年の暑い暑い夏に亡くなったのですが、夕方4時まで私と共に、入所していた施設のデイルームに車いすで移動し、そこでおやつを食べながら過ごし、その2時間後の18時に夕食を誤嚥し窒息で亡くなりました。(夏の暑さで脱水傾向&衰弱気味ではあったので、自分で食した食べ物を詰めてしまった…これも老衰ではあります。施設の方の落ち度はほとんどないと信じています)

その母に、午後4時に『明日また来るからね、じゃあね』と声をかけた私に、母は返事をしませんでした。

『なんで~~~。じゃあね、ってば。また明日来るから』何度そういっても両眼を見開いて私を見つめたまま絶対に返事をしませんでした。

母は知っていたんじゃないかと思うのです。
これが別れになることを。

隣に座っていたご婦人が『娘さんと別れたくないのよねぇ』なんて代弁してくれたのをよく覚えています。
結局母は、絶対に私にバイバイはしてくれませんでした。

そのかわり、窒息して一旦心肺停止になって救急搬送されたのに、私たちが一時間の道のりを必死で駆け付けるのを信じていたように、救命措置により何とか心臓を動かして待っててくれました。

そして、私の心の整理がつくまで生きてくれ、私の気持ちを見届けたかのように22時間後に静かに逝きました。
母は、最期に別れを言わなかった私のために頑張って生きてくれたんだと思っているのです。

その人と言葉を交わした最後の時のことって…
何年経ってもこんなにも鮮明なのです。

だからこそ、毎日の【見送るとき】を大切に大切にしたいのです。

喧嘩をしてても、むっとしてても、多少体調が悪くても、眠くても。

見送れるときはきっちり、無事を祈って『気をつけて行ってらっしゃい』とお見送りを。

夫も、息子も、娘も。
私の大切な人たち。

でもいつか、どんな形かはわからないけれど別れの時は必ず来ます。

その時に、悔いが一つでも少なくなるように。

突然の別れなんてできればないように、事故がないように、健康を害さないようにと祈りながら、今日も明日も、私は家族の姿が見えなくなるまで見送ります。


Photo by.Ryu


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