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アラサーたちの午後 by 御美子

とある会計事務所の休憩室。
仲良しアラサー3人組が、食後のお茶を飲みながら、お喋りに花を咲かせていた。
しっかり者の絵理と少し頼りない由香は学生時代からの付き合い。そして同僚の美菜だ。

「絵理、最近お肌の調子がいいみたいね。男でもできた?」
「まあ、そんなとこかな」
「聞き捨てならないわね。どこで知り合ったのよ。私にも紹介して」
「絵理の恋バナ? 聞きたい。聞きたい」
「マッチングアプリで知り合ったのよ。会計士に興味があるんですって、由香と美菜も登録すれば?」
「マッチングアプリって、危なくない?」
「大丈夫よ。あ、彼からメッセージが来た。急いで返信しなきゃ」
「即返信とか、女子高生のノリね。若い男なの?」
「若くてイケメン。IT企業に勤めてて、独立したいって言うから相談に乗ってるの」
「えーっ? 今時そんな男が存在するの?」
「写真見せてよ」
「いいわよ。ほら」
「へえ、なかなかいい男ね」
「でしょ?」
「うーん、なんか既視感が」
「えーっ? 由香、この男知ってるの?」
「どれどれ、ふーん、そう言えば、二人の好みのタイプかも」
「マジで? また、由香と男が被ったってこと?」
「残念ながら、そうみたい」
「由香、まさか、この男に貢いでるんじゃないでしょうね」
「もう別れたけど、貢いだかな。この男ホストだし」
「ホストですって? 今もクラブに通ってるの?」
「ううん。1か月前から店以外で会うようになったんだけど、急に別れようって」
「私がアプリで知り合ったのが1か月前くらいだから、二股してたってことね」
「私にも会計士だから気に入ってるって言ったのよ」
「いろいろ利用できると思ったのね。ところで由香、いくら貢いだの?」
「1000万。私の為にホスト辞めて、まともな仕事したいって言うから」
「そんなの信じたの? イケメンに弱いとこ、学生時代からちっとも変わってないわね」
「だって、顔がいいと心も純粋な気がして」
「なわけないでしょ。いい加減に学習しなさいよ。って、ちょっと美菜、なにニヤニヤしてんの?」
「だって絵理、また、やるんでしょ? あれ」
「どうしよっかなあ。って、由香、あんたまで、なに目キラキラさせてんのよ」
「絵理、お願い。私の1000万、取り返して!」
「ああ、もう分かったわよ。親友が騙されたとあっちゃ、やるしかないわね」
「それでこそ、絵理だわ」
「神様、仏様、絵理様!」
「いつもどおり、由香の損失補填以外は三人で山分けするから、美菜も手伝ってよ」
「勿論そのつもりよ。で、今度は、どうやって潰すの? この男」
「そうね。まずは、経営破綻しかかってるIT会社を買い取らせるわ」
「コロナ補助金で一見安定経営だった会社のオーナー達が、経営不振に陥って相談に来てるのよ」
「こっちの言い値で経営権を売るしかないオーナー達も結構いるしね」
「買い叩いた会社を、この男に高値で売り付けるってわけね」
「この男、女に貢がせたお金以外、資金もなさそうだし、ホストなら銀行からの融資も無理でしょ」
「街金か闇金で、資金を借りさせるのね」
「会社経営なんてできないだろうし、コンサルタント料も巻き上げよっか」
「破産に追い込んだところで、ゲームオーバーにするってことで」
「うんうん。それいい。スカッとしそう。絵理、ありがとう」
「いいわよ。それにしても、学生時代から、由香とは付き合う男が被るね」
「不思議よね。由香って、何度も絵理に二股男を成敗してもらってるんでしょ?」
「絵理ったら散々男の気を惹いといて、こっぴどくフルのよ。マジ爽快なの」
「もう若くないんだから、そんな手は使えなくなるかもね」
「アラフォーになったら、もう無理なんじゃない?」
「アラサーのうちに、もっと恋愛を楽しみたいなあ」
「え? 由香、性懲りもなく、また男と付き合うつもり?」
「今度こそ、いい男を見つけるもん。騙されても、また絵理にやっつけてもらうし」
「勘弁してよ」
「なんだかんだ言って、絵理も楽しんでるんじゃないの?」
「楽しんでるのは、あんたたち二人でしょ。いや……、やっぱ楽しいかも」
「でしょ?」
「ま、とにかく、今回の件を、さっさと片付けちゃおっか」
「成功したら、また三人で海外旅行しようね」
「そうね。コロナも落ち着いたことだし、旅行先はドバイとかにしちゃう?」

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