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球団ヒストリー35.沈黙

意気揚々と長崎へ

2009年5月16日、南九州の3チームによる一次予選を全勝で突破した鹿児島ホワイトウェーブは、意気揚々と、長崎県で開催される第80回都市対抗野球大会九州地区予選に乗り込んだ。

これは、当時の新聞記事だ。

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鹿児島市の社会人野球チーム、鹿児島ホワイトウェーブ(WW)が20日、長崎市で開幕する第80回都市対抗野球九州地区予選(日本野球連盟九州地区黎明、毎日新聞社主催)に初出場する。エース、和田裕太投手(22)がチームの柱だ。初戦の対戦相手は、今季限りで休部する日産自動車九州(福岡県苅田町)。末広昭博監督は「相手は最後で力が入っている。だが、接戦に持ち込み、勝機を見出したい」と意気込む。
 鹿児島WWは05年発足のクラブチーム。選手約40人が在籍し、週3日、日置市などで練習する。会社員、消防隊員、教師など職業はさまざまで、仕事の合間を縫って練習に参加している。
 和田投手も鹿児島市内の船舶会社に勤務しながら、週末、練習に通う。学生時代は、鹿児島城西校や鹿児島国際大で外野手と投手を務め、高校では細山田武史捕手(横浜)とプレーした。梅田学園の入部テストを不合格となった後、高校の先輩の誘いで、就職先が決まる前に鹿児島WWに入部、末広監督の指導で「体の軸がぶれずに、制球力がついた」。短い練習時間にも、向上心を持って取り組んでいる。
 5月、宮崎県であった1次予選は、宮崎梅田学園(宮崎市)と、宮崎福祉医療カレッジ(日南市)が対戦相手。予選突破がかかった梅田学園戦で和田投手は六回途中まで1失点と高等。4-3で勝利に導き、最優秀選手にも選ばれた。
 九州地区予選の日産自動車九州線に向け、末広監督は和田投手の出来を重視する。相手は強豪だが、和田投手も「同じ人間。やってみないとわからない」と善戦を誓う。

九州地区予選初出場に、新聞での扱いもこれまでになく大きい。

力の差

とはいえ初戦の相手は、企業チームである日産自動車九州。
このシーズンで休部が決まっていたという強豪は、有終の美を飾るために気合が入っているだろう。

結果は大敗。
0-12、7回コールドと、力の差を見せつけられた。

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「出だしがすべて」。鹿児島ホワイトウェーブの末廣昭博監督は力を発揮できずに敗れた試合を振り返った。
 初回の攻撃。安打で出塁した先頭上村は、けん制球でタッチアウト。続く久留も死球で出塁。ところが再びけん制球で師とえられた。連続ミスで流れを完全に逃した。以後はノーヒットに終わる。
 同クラブは公務員や自営業者ら約40人が所属。土曜、日曜に日置市に集う画、練習に顔を出せるのは毎回、半数に満たない。それでも5月の一次予選は企業チームを下して、初の九州大会出場を決め、手応えを感じていたという。
 相手は本大会に過去6回出場している強豪。「練習量が違う企業チームに対して、ミスがあっては勝負にならない」。末廣監督は敗者復活戦に向け、気合いを入れなおしていた。

翌日の敗者復活戦も、三菱重工長崎に0-7とコールド負け。

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一次予選では長打だけでも1試合7本だった打線が、2試合合計で3安打。そんなに黙りこくらなくてもいいのに、というくらい打線は静かだったようだ。

企業チームとの力の差は歴然。
こんなチームを倒さない限り、都市対抗野球大会出場は望めないわけだ。

目指すところの壁の高さを垣間見た形にはなったが、それでも九州地区予選に出場したこと、名だたる強豪と対戦したことは、チームとして大きな財産になったに違いない。

とはいえきっと、長崎からの帰りの車中は、連戦の疲れと大敗のショックで打線同様沈黙の時間だったのではないかと思うのです。

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