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球団ヒストリー16.事件

「野球好きの、気のいいおじちゃん」という印象だった鵜狩監督。
選手たちにとってもやはりそうだったようで、グラウンドでは野球の指導を受けるというよりは、和気あいあいと世間話をする、そんな監督だったそうだ。「技術的なことは、斉藤さんに教えてもらったかなぁ」立ち上げメンバーの甲斐さんもそう語っている。


そんな中で、鹿児島ホワイトウェーブ初期の一大事件が。

鵜狩監督と仲のいい、やはりプロ野球OBのYさんが練習を見に来られていたたとき。
指導一切を取り仕切る斉藤コーチにYさんがなにか意見(おそらく、もっと鵜狩監督を尊重しろ的な)したらしく、練習中の3塁側ベンチ前で言いあいになってしまった。
そこにちょうど練習を見に来た國本球団代表が「まぁまぁ」と止めに入る形に。
日曜日の夜の練習。代表は短パンにサンダル履きというリラックスムードだったそうで、ヒートアップしているYさんは「グラウンドに来るのに、なんだその格好は!」と右こぶしをおみまいした!

このいざこざにいち早く気づいたのは、トレーニングしていた宮田キャプテン。そして叫んだ。
「グラウンドでなんてことをしてくれるんだ!」

ほんとうに。
私自身も35年野球に関わっているわけで。女子はベンチにも入れない時代にマネージャーをしていた私にとって、グラウンドは神聖極まりない場所。ちょっと入るのでも、「入ってもいいですか?」と尋ねている。
だからこの話を聞いたときには「あの大切な場所でなんてことをしてくれてるんだ!」と腹立たしかった。
まして、プロ野球OBという超一流の人たちが。

そして代表としては、なんのいざこざか分からないところに止めに入って殴られるなんて、ただただ災難以外のなにものでもない。
みるみる顔が腫れ、かおりマネが病院に連れていったというから、かなりの衝撃だったのだろう。
実は國本代表、「パンチが出てくるのは読めたけど、避けられると思ってた」のにまともに食らってしまったので、めちゃめちゃ悔しかったというのが本音らしい。
とはいえ相手は100キロクラスのヘビー級。何日も顔の腫れが引かず仕事にも影響。またYさんがあまりにさらりとした態度であったため納得がいかず、警察に届けるという話にまで発展することになる。
グラウンドの外で、この”暴行事件”は密かに長引いていた。

実はこの事件、選手たちの中で知っている人は多くはないという。
だって選手たちは、自分の練習で一生懸命だったもの。それは当たり前のことでもあり、不幸中の幸いだったのかもしれない。


いくら監督と仲が良くても、考えてみれば(いや考えなくても)Y氏はチーム運営とはまったく関わりがない。選手たちにとっても「いつから来てたのか、何回来てたのか、誰なのかもよくわからない」という人物。

野球への想いとプライドが行ったり来たりしていた監督と友人のYさん、対してチーム全体のことをしっかり取り仕切っていた斉藤コーチ。

誰の言うことが正しいかは火を見るよりも明らかだったけれど、なんだか野球人としての自負心がモノを言い、『船頭多くして船山に上る』的なことになってしまった結果だったのかな…
お話を聞いていて、私はそう感じた。

あっ、ちなみに國本代表がこの事件で学んだ教訓はこれ。
「グラウンドに短パンサンダルで行くのはやめよう」

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